FNSドキュメンタリー大賞
「平成の大合併」に揺れる山形県内の市町村。
財源不足に悩む地方自治体は国の合併支援策に踊らされ、
明確なビジョンもないまま協議に時間と金を費やした。
しかし、合併特例法の期限を前に多くの市町村が合併協議から離脱した…
「地方分権」と「市町村の自立」を建前にした国のアメとムチ政策の矛盾を検証する!

第14回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『不条理の合併―地方自治体は生き残れるか―』

(さくらんぼテレビ制作)

<2005年12月7日(水)深夜3時18分〜4時13分放送>

 「平成の大合併」に揺れる山形県内の市町村。財源不足に悩む地方自治体は国の合併支援策に踊らされ、明確なビジョンもないまま協議に時間と金を費やした。しかし、合併特例法の期限を前に多くの市町村が合併協議から離脱した。21世紀の至上命題である地方行政の効率化と財政改善。市町村合併はその「手段」だったはずである。しかし、国主導で推し進められようとしている「合併」という特効薬には、副作用をもたらす危険性が秘められていたのだ。
 12月7日(水)放送第14回ドキュメンタリー大賞ノミネート作品『不条理の合併―地方自治体は生き残れるか―』<深夜3時18分〜4時13分>(さくらんぼテレビ制作)では、「地方分権」と「市町村の自立」を建前にした国のアメとムチ政策の矛盾を検証する。

(内容)

 地方自治体は今、大きなうねりの中にある。その一つ「平成の大合併」では、山形県でもさまざまな枠組みの「縁談」が進められ、44市町村のうち3グループ12市町村が「結婚」に合意。21世紀の町作りのため自治体再編の道を選択した。
 地方分権の受け皿、少子高齢時代への対応…国が掲げる合併の必要性はこんなところだが、現実に市町村を合併へと突き動かしている最大の要因は何といっても深刻な財政難だ。番組のアンケート調査でも「財政は厳しい状況で今後も心配だ」とした市町村は回答の75%を超えた。
 こうした財政状況への危機感の中で、山形県三川町では住民が合併推進へと動き出した。町は鶴岡市など庄内南部地区7市町村の合併協議を進めていたが、途中で町議会が対案なき合併反対の姿勢を打ち出し、そのまま合併協議から離脱した。これに反発した住民が議会をリコールし、出直し選挙によって合併賛成派が多数を占める議会を再構成した。
 合併協議が山場に入った昨年から今年にかけて、合併を巡る動きを追ってきた記者は、「合併協議の熱気」「住民の盛り上がり」が自分の生活の内部に入り込んでくる感覚は皆無だったことに気付いた。市町村の利害対立によって難航する協議、合併の是非を問う住民運動…「平成の大合併」は確かに半世紀に一度の町の将来を決める大問題である。
 しかし、“取材”という仕事を離れた途端に「熱気」や「盛り上がり」が感じられなかったのだ。これは、行政の情報提供の仕方に問題があるのか、マスコミの怠慢なのか。そもそも合併は市民の生活に影響しないからなのだろうか。
 そこで取材班は、「合併とは何か」を探るため、先進地である兵庫県篠山市に赴いた。篠山市は、平成11年(1999年)4月に「平成の大合併」第一号として四町合併により誕生した。合併から6年経過した今も合併特例債による箱モノ建設がラッシュを迎え、何かと注目を浴びている。現地取材の中で、合併により「消防問題」が浮かび上がっている事実をつかんだ。その問題とは、火災時の全焼割合が増加していることである。合併前は旧町の役場職員が特設消防団として周辺で火災が起きた際の初期消火に一役かっていたが、合併後の合理化により、その機能が失われたということが背景にある。しかし、着目すべきは消防当局が合併時に機能強化を求めていたが、各町が持ち寄った箱モノの建設を前に後回しされたところにある。
 これを新・鶴岡市に置き換えるとどうなのか。合併後予定されている事業は各市町村の持ち寄りである。ここでも合併後に想定される課題はまだ検討されていない。
 他方、合併の目的であった「地方自治体の行財革」はどうか。箱モノ建設に起債される合併特例債が乱発されれば、現在700兆円とも1,000兆円ともいわれる国と地方の借金はさらに膨らむと想定される。もはや問題の先送りですまないからこその「小泉改革」のはずである。しかし、その解決策も地方内部にしっかりとあるようだ。長野県栄村や山形県尾花沢市が今後の市町村の生き残りのヒントを与えてくれている。
 それは、極めて単純で「頭を使う」「考えて節約する」ということであり、「我慢する」ことではなかった。市町村が知恵を出し、工夫し、住民が行政に参加し、その上で必要最低限の施策を実施していく。これが国からの仕送りがなくなる今後の地方自治体の処世術ではないのか。そうとすれば、合併の道を選択した市町村が歩む道はいかなるものなのか。


<スタッフ>

 ナレーター 菅谷 勇
 撮影 大友信之
 編集 長南亜希子
 CG 佐藤哲哉
 タイトル 富宇加 歩
 MA 市原貴広
 音響 谷川正幸
 構成 高橋 修
 ディレクター 佐藤武司
 プロデューサー 村田喜浩
 制作著作 さくらんぼテレビジョン

2005年11月15日発行「パブペパNo.05-393」 フジテレビ広報部