FNSドキュメンタリー大賞
昨年10月に発生し、最大震度7を観測した新潟県中越地震は住民の生活基盤を一瞬にして崩壊させた。
リスクを負ってでも故郷で暮らしたいと願う住民たち。
故郷の持つ意味とは何か…。
復興のため奮闘する被災者の姿を追う。

第14回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『故郷へ還る〜新潟県中越地震からの復興〜』

(新潟総合テレビ)

<2005年11月9日(水)深夜3時18分〜4時13分>

 11月9日(水)深夜3時18分〜4時13分放送の第14回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『故郷へ還る〜新潟県中越地震からの復興〜』(制作:新潟総合テレビ)では、昨年10月に発生し、最大震度7を観測した新潟県中越地震により被災した住民たちがふるさと復興に奮闘する姿を追う。リスクを負ってでも故郷で暮らしたいと願う住民たちの姿に「故郷の持つ意味とは何か」を考える。

<企画概要>

 最大震度7を観測した新潟県中越地震は、住民の生活基盤を一瞬にして崩壊させた。旧山古志村に暮らし畜産業を営んでいた松井治二さんは、長岡市に避難したあとも「生き残った牛は、すべて助け出さなくてはいけない」という信念のもと、牛飼い仲間とともに牛たちを崖下から救出。そして、ふるさと復興のため伝統の“牛の角突き”復活に向け奔走する。
 住民はなぜふるさとに戻りたいと考えるのだろうか。故郷復興に奮闘する被災者の姿を追うことでその意味を考えていく。

<番組内容>

 昨年(平成16年)10月に発生し、最大震度7を観測した新潟県中越地震は、新潟県内で40人以上の死者を出し、1万6千棟を超える家屋を全半壊させるなど、中越地域に住む人たちの生活基盤を一瞬にして崩壊させた。中でも旧山古志村では、すべての集落が孤立。村長の決断で村民・約2,200人がヘリコプターで長岡市などに避難した。
 旧山古志村の木篭集落に暮らしていた松井治二さん(65歳)は、長岡市に避難したあとも毎日のように避難指示が続くふるさとに通い続けた。生き残った牛たちにえさをやるためだ。親子三代、ずっと畜産業を営んできた松井さんは「地震で生き残った牛は、すべて助け出さなくてはいけない」という信念のもと、自らの命の危険を顧みず、牛飼い仲間とともに30メートルはある崖下から牛たちを救出した。その牛も自らの手で飼うことができず、やむなく新発田市などに預けてしまうことになる。
 松井さんの自宅は、ガラス一枚割れなかったものの土砂崩れによってできたダム湖により水没してしまい、一時は3階の屋根まで水に浸かった。「もう自宅に住むことはできない」と話した松井さん。しかし、絶望のふちに立たされながらも「地震には負けたくない、村を絶やしたくはない」という思いから、ふるさと復興のため村民の心をひとつにしようと山古志の象徴である伝統の「牛の角突き」復活にむけ奔走する。
 また旧山古志村の種苧原地区に暮らしていた坂牧六一さん(70歳)は、これまで3町歩(約3ヘクタール)の棚田を所有し、コシヒカリを育てることによって生計を立てていた。しかし地震によって9割の棚田に被害を受けた。中には深さが80センチ以上の亀裂がある棚田もあった。棚田の崩壊に加え自宅は半壊。住もうとしても多額の修復費がかかるため、高齢の坂牧さんには修復は困難だ。仮設住宅で生活する坂牧さんは、例年の10分の1ほどしか米を収穫できない状態だが、地震にめげることなく今年も妻とともに山古志に通い、米作りに励んでいた。
 川口町の峠地区に暮らす星野寅吉さん(64歳)は、地震によって家だけでなく毎日世話を続け、生きがいでもあった闘牛を失った。しかし、星野さんは仮設住宅に入ろうとはしなかった。不便な生活を強いられながらも山に留まることを決意、自宅の納屋で妻とともに生活を続けた。
 住民はなぜ多くのリスクを負ってでも、ふるさとで生活したいと考えるのだろうか。地震が発生して自らの生活がままならない中でも、伝統の“牛の角突き”を残したいと願う男たちの熱意はどこから湧いてくるのか。松井さんや坂牧さんの生活をはじめ、村での日常を取り戻そうと奮闘する被災者を追うことで、ふるさとのもつ意味を考えた。

<佐々木渉ディレクターコメント>

「中越地震が発生した当時、局内にいた私はすぐに取材に駆け出しました。一夜明けてはっきり見えてきた被災地の状況は、脱線した新幹線、ひび割れ陥没した道路、崩れ落ち跡形もなくなった家屋、土砂崩れの数々、逃げ惑う人々…。どれも現実とは思えない光景でした。すべてを奪った大地震に、私はある疑問を持ちました。『元の生活にもどるのは、いつになるだろうか』と。
 被災した人のうち、旧山古志村の人たちは現在もほとんどの人たちが仮設住宅での生活を余儀なくされています。自宅は全半壊し、再建のメドが立っていない人にもかかわらず、今年1月に旧山古志村が行ったアンケートでは93%もの人が『村に帰りたい』と答えました。『なぜ便利な都会ではなく、故郷がいいのだろうか』『なぜ故郷に帰りたいと願うのか』私の頭の中に疑問が浮かびました。
 私も実際、家を失って生活することができなくなることを想像しても、やはり『故郷に戻りたい』と考えると思います。その思いというのはどこから沸きあがってくるものなのだろうか。『村に帰りたい』という思いは、人間そのものの思いなのか、住んだ人にしか分からない感覚なのか、考えるようになりました。
 取材を進める中で、私は山古志伝統の“牛の角突き”をどうしても今年復活させたいと熱望し、取り組む人に出会いました。『なぜ角突きの復活が大切なのか』『まず先にしなければならないこともあるのではないか』と考えた私。
 復興に励む被災者を取材していくことで『故郷に帰りたいという思い』や『被災地復興に取り組む姿』をとらえ、『故郷の大切さ』を視聴者に訴えていきたい。そのように考え続けながら、今回のドキュメンタリー制作に当たりました。」


<番組概要>

◆番組タイトル : 第14回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『故郷へ還る〜新潟県中越地震からの復興〜』(新潟総合テレビ)
◆放送日時 : 11月9日(水)深夜3時18分〜4時13分放送
◆スタッフ 
 協力 : 長岡市・小千谷市・新潟県・中條 均紀・FNN取材団
 撮影 : 竹内清貴
 山田龍太郎
 尾田 博
 村山 浩
 韮沢由紀夫
 構成 : 高橋 修
 編集 : 佐藤誠二
 CG : 藤井 亮
 ナレーター : 石原 良
 MA : 松川智実
 選曲 : 細田謙二
 ディレクター : 佐々木 渉
 プロデューサー : 国上和義
 制作 : 新潟総合テレビ

2005年11月7日発行「パブペパNo.05-386」 フジテレビ広報部