FNSドキュメンタリー大賞
佐賀県小城市牛津町に住む平田フクさん、84歳。
およそ50年間、魚行商を生業としてきた名物おばあちゃん。フクさんの人生は波乱万丈。
二度も夫に先立たれながらも、軽トラックで魚を行商しながら4人の子どもを育て上げた。
決して平坦でない84年の人生ですが、苦労など微塵も顔に出さない
平田フクさんの生き方をお届けする!

第14回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『軽トラ行商は命〜84歳魚売りばあちゃん物語〜』

(サガテレビ)

<11月27日(日)深夜2時40分〜3時35分放送>

 佐賀県小城市牛津町に住む平田フクさん、84歳。およそ50年間、魚行商を生業としてきた名物おばあちゃんです。フクさんの人生は波乱万丈。二度も夫に先立たれながらも、軽トラックで魚を行商しながら4人の子どもを育て上げました。人を包み込む温かさとコミュニケーションの詰まったフクさんの軽トラック。生活の心配が無くなった現在、行商は生活のためではなく、フクさんの生きがいなのです。そして、おなじみさんにはなくてはならない存在なのです。
 11月27日(日)放送の第14回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『軽トラ行商は命〜84歳魚売りばあちゃん物語〜』(サガテレビ)<深夜2時40分〜3時35分>では、決して平坦でない84年の人生ですが、苦労など微塵も顔に出さない平田フクさんの生き方をお届けします。

<番組のねらいや取材のきっかけ、みどころなど>

 佐賀県小城市(おぎし)牛津町(うしづちょう)に住む平田フクさん、84歳。フクさんはおよそ50年間、魚行商を生業としてきた名物おばあちゃんです。
 朝は3時すぎに起きて市場に通い、酷暑の中でも雪の日も軽トラックで魚を売り続けてきました。「儲けはなかばってん(ないけど)、行商が一番楽しか」が口癖の、笑顔が魅力のはつらつおばあちゃんです。
 フクさんの人生は波乱万丈。大戦中に結婚した最初の夫は戦死。戦後の動乱期に二度目の夫と結婚しますが、その幸せな生活も長くは続きませんでした。フクさんはそんな不幸にもめげず、軽トラックで魚を行商しながら、細腕一本で4人の子どもを育て上げました。そんな一心不乱に働く母の姿は、4人の姉弟に大きな影響を与えました。なかでも三男(敏彦)は板前として大成。15年前、「牛津に魚平あり」と評判になる割烹店を開き、店は大繁盛します。フクさんの魚売りの夢が叶った絶頂期でした。
 しかし5年前、二男と三男が相次いで他界。フクさんはショックで二カ月間寝込みます。そんな抜け殻のようになっていたフクさんを立ち直らせたのは、行商を待ち焦がれるなじみ客の温かい励ましと、当時中学校を卒業する孫息子(晃士)が「父の後を継いで板前になる」と宣言したことでした。
 5年間の修行を積んだ孫息子は現在、二十歳。一人前の職人とまではいえないまでも、父の作ったお店を継いで少なくなっていたお客を呼び戻しつつあります。そんな孫息子の成長を祈念して、フクさんは今年の成人式の日に真新しい包丁2本をプレゼントします。包丁は職人の魂。親子三代、フクさんの魚売りの思いは孫息子に引き継がれています。
 84年間、元気を売り物に行商で家族を育ててきたフクさん。そんなフクさんは今年の5月、風邪をこじらせて肺炎で緊急入院します。一時は退院さえ不可能と思われるほどの重い症状でした。家族やおなじみさんの心配な日々が続きました。
 一カ月後。フクさんは驚異的な体力回復で退院し、行商を再開させます。そして、いつもの場所で、聞きなれたクラクションを響かせました。その音はまるで待ち焦がれたおなじみさんの、笑い声のように聞こえたのです。
 人を包み込む温かさとコミュニケーションの詰まったフクさんの軽トラック。人生の苦労など全く感じさせない、フクさんの笑顔。家族の絆とおなじみさんの励ましに支えられながら今でも続けるフクさんの行商は、生活のためでもなく、お金のためでもない、フクさんの生きがいなのです。そしてフクさんの軽トラックは、地域の高齢者にとってはなくてはならない存在です。なにより84歳になる平田フクさんの元気な姿は、同世代の方々の励みなのです。

<制作担当者のコメント:ディレクター・田中正照>

 84歳という高齢のおばあちゃんが、市場で男衆をかき分け、競りに加わる。そして颯爽と軽トラックを操り、現役で行商を続ける姿は、地域の高齢者にとってなくてはならない存在だけでなく、生きる励みともなっています。
 「生きがいとは」「地域の支えあいとは」を強く感じるとともに、急速に変化する現在の日本社会の中にも、まだまだ人間関係を大切にするネットワークが脈々と息づいていることを肌で感じた取材でした。
 そんなフクさんが退院し、クラクションを鳴り響かせた時、行商にかけたフクさんの心意気を感じるとともに、番組を担当させてもらった者として心の中で「ありがとうございました」と手をあわせました。
 決して平坦でない84年の人生。そんな苦労など微塵も顔に出さない平田フクさんの人間的魅力をぜひ感じてください。


<ナレーター> 室井 滋
<ディレクター> 田中正照
<構成> 松石 泉
<撮影> 花森 勇
宗廣和茂
<音声> 松永政道
石隈昌彦
木場淳之
<編集> 富石浩通
<録音> 大川淳市
<テーマ音楽> 中西隆二
<音響効果> 萩尾迎紀
<タイトル> 田中ちづる
<プロデューサー> 横尾正之
<制作著作> サガテレビ

2005年11月4日発行「パブペパNo.05-382」 フジテレビ広報部