FNSドキュメンタリー大賞
未だ解決に至ってない津山主婦行方不明事件は3年経った今も当事者の夫、
高橋幸夫さんの中ではなんら終わりを迎えていない。
行方不明のまま帰らぬ妻、妙子さんへの断ち切れぬ思いは
今も風化することなく高橋さんの心の中で生き続けている。
犯罪被害者である男性に生じた心情の変化や、
妻への思いを整理しながら自分の生きる道を探し続ける男性の姿を取材。

第14回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『事件報道に奪われた妻』

(岡山放送制作)

<11月23日(水)深夜3時18分〜4時13分>

 2002年6月3日、岡山県津山市で医師の妻が行方不明になり、夫の銀行口座から現金が引き出された事件がありました。この事件は3年の月日が経つ今も、妻は見つからぬまま未解決となっています。なぜならマスコミ各社の執拗な犯人探し報道が、逮捕目前の犯人を自殺に追い込んでしまう最悪の事態を招いてしまったからです。加えてマスコミの過剰な取材合戦はモラルを欠いたものとなり、犯罪被害者の心に深い傷跡を残してしまいました。
 11月23日(水)放送の第14回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『事件報道に奪われた妻』(岡山放送制作)<深夜3時18分〜4時13分>では、報道加害者である記者が自戒の念を込め、犯罪被害者である男性に生じた心情の変化や、妻への思いを整理しながら自分の生きる道を探し続ける男性の姿を取材しました。

■制作意図

 未だ解決に至ってない津山主婦行方不明事件は3年経った今も当事者の夫、高橋幸夫さんの中ではなんら終わりを迎えていません。行方不明のまま帰らぬ妻、 妙子さんへの断ち切れぬ思いは今も風化することなく高橋さんの心の中で生き続けています。
 事件当初から担当してきた小林記者は遅々として進まない捜査状況に対し苛立ちを募らせ、高橋さん本人宛ての手紙を2通送りました。内容は捜査方法への批判や情報開示のための記者会見要請などでした。周辺メディアもこぞって事件を取り上げ、高橋さんの自宅は多くのマスコミ関係者によって取り囲まれる日々が続きました。執拗な取材の渦中で高橋さんは精神的に追い詰められていきました。しかし、その後、事件は妻、妙子さんの行方が依然としてつかめないまま、容疑者と思われた男女二人の自殺という思いもしなかった展開となりました。事件は闇に包まれたまま次第に報道されることがなくなりました。
 そして、1年半が過ぎ、高橋さんの胸に残った思いは、メディアスクラム=集団的過熱取材への痛烈な批判と犯罪被害者の一人として事件にどう向き合っていくのかというものでした。小林記者の目を通して語られる高橋さんの姿は、ひとりの犯罪被害者をメディアがどのように扱ったのか、そして、その過程での取材が適正なものであったのか、私たちマスコミがしなければいけないことと、してはならないことのボーダーラインは一体どこにあるのかを考えさせられるに十分です。
 そこで、メディアに携わる一報道記者の目を通して、真の事件報道とはどうあるべきなのかを考える布石としてこの番組を制作しました。本当の意味で事件はまだ終わっていないからです。

■番組内容

 最愛の妻が行方不明になって今年で3年を迎える津山市の高橋幸夫さん。2002年6月、岡山県津山市の医師、高橋幸夫さんの妻が連れ去られ、現金が奪われた事件が起きました。容疑者と思われた男女は二人とも自殺し、事件はいまだ進展を見せていません。この事件の渦中で、高橋さんは最愛の妻を失っただけでなく、事件におけるマスコミの取材と報道の在り方、犯罪被害者の実態、警察の捜査のあり方などについてさまざまな思いを抱くことになりました。
 そして、事件から1年後、高橋さんは自分の体験を無にしたくないとの思いから犯罪被害者支援やメディアと向き合う活動を始めたのです。
 今回番組では、弔いたくとも弔えない行方不明という残酷な状況の中、妻と自分の生きる道を探し求める高橋さんの思いに迫るとともに、メディアという立場での取材活動を通じて一人の記者が何を思い、何を感じ取ったのか…。3年という歳月の中で変化していった『被害者』との関係に迫ります。

■番組の見どころ

 担当記者が身をもって感じた報道が担う使命、責任の重大さ、報道することで負う覚悟を描いています。「牙のないジャーナリズムは無力であるが、優しさを欠いたジャーナリズムはその鋭い牙ゆえ凶器となる」という言葉を思い出します。


■スタッフ

 プロデューサー 三村公人(岡山放送 報道局)
 ディレクター 小林宏典(岡山放送 四国支社 報道部)
 撮影 安東 淳
 編集 小林宏典
安東 淳
 ナレーター 戸谷公次(青二プロダクション)

2005年11月1日発行「パブペパNo.05-372」 フジテレビ広報部