FNSドキュメンタリー大賞
一人の女子中学生が学舎を卒業する。
彼女はダウン症と心臓疾患を抱えながら、
保育園から普通の子供たちの中で育ってきた。
しかし、高校へ進学し、幼なじみとも離れ離れとなる。
そんな彼女が卒業式でピアノを弾く。
両親や友達に彼女の思いを届ける…。

第13回ドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『たんぽぽ〜家族と見つけた幸せ〜』(制作:テレビ長崎)


6月2日(水)2時58分〜3時53分放送
【6月1日(火)26時58分〜27時53分】



 一人の女子中学生が学舎を卒業する。彼女はダウン症と心臓疾患を抱えている。彼女は保育園から普通の子供たちの中で育ってきた。子供たちの中に障害者という壁はなかった。しかし、幼なじみも高校へ進学し、離れ離れとなる。彼女の母は悩み、養護学校への進学を決めた。それが娘を守ってやれる道だと信じた。彼女は発育が緩やかで一つを覚えるのにとても時間がかかる。そんな彼女が卒業式でピアノを弾く。両親や友達に彼女の思いを届ける…。

 テレビ長崎制作、第13回ドキュメンタリー大賞ノミネート作品『たんぽぽ〜家族と見つけた幸せ〜』では、ダウン症と心臓疾患を抱えながらも、両親をはじめとする家族や周囲の人々に支えられながら、
成長していく女子中学生の姿を描く。高校進学という人生の岐路にたって、本人、両親はどのように悩み、そして、道を進んでいくのか…。


<あらすじ>
 2004年春。一人の女子中学生が学舎を卒業した。彼女の名前は猪口こづえ(いのくちこづえ)。長崎県江迎町に暮らすこづえは、ダウン症と心臓疾患を抱えている。そんな彼女が、卒業式でピアノを弾く。長年一緒に過ごした幼なじみの友達やお世話になった先生、そして両親に「ありがとう」の気持ちを込めて「仰げば尊し」を演奏する。

 彼女は一つのことを覚えるまでに普通の子どもたちの何倍もの時間を要する。それでも彼女は同じことを何度も繰り返し続け、やがて一つのことができるようになる。卒業式で弾く「仰げば尊し」も、何ヶ月も前から練習を続け、ようやく弾けるようになった。ダウン症の子どもは発育がとてもゆっくりだ。家族はそんなゆっくりとした彼女の成長を見守り、ともに歩んできた。

 生後すぐに、こづえがダウン症と判明し、
母・稀有未(まゆみ)は嘆き悲しんだ。障害児として生んだことを、何も知らない我が子に謝るばかりの母だった。しかし、ダウン症の合併症からくる心臓病で、その命すら閉ざされることを知り、稀有未は、絶望から「この子の命を助けなければ」という強い母の意志に変わっていった。生後4ヶ月にして心臓の大手術を行い、こづえは命を取り止めた。彼女の存在で気が付いた命の重みを家族はしっかりと受け止め、彼女のペースで成長していく姿を見守り続けた。両親は幼い頃から人前に娘を出してきた。普通の子と同じように保育園に通わせ、小学校中学校も皆の中に入れてきた。そうすることで刺激を受け、ゆっくりながらも成長していくことを望んだ。中学校まで、こづえには多くの幼なじみがいる。子どもたちの中でも、ごく自然にこづえはいる。

 しかし高校生になると幼なじみも皆離れ離れになってしまう。母、稀有未は娘の進路に悩んだ。普通高校へ進学させた方がいいのか。それとも養護学校へ行かせたほうがいいのか。悩んだ末、養護学校へ進学することを決めた。普通高校で新しい友人の中に入り、今までのような親しい仲に果たしてなれるのか。それよりも、養護学校の中で、見守ってくれる先生たち、同じ境遇の友達の中で育っていく方を選んだ。

 こづえの残りわずかな中学生活の中で、周りの友達は受験勉強に慌ただしくなっていった。こづえは自分とまわりの間にすき間を感じ、複雑な心境が芽生える。寂しさともどかしさ。子どもの心と思春期の感情。卒業を前に揺れ動くこづえの気持ち。

 こづえの近くには、いつも音楽があった。小学4年生からピアノを始めて以来ずっと続けている。中学3年生になるとき、一人の中学教師との出会いから、こづえの周辺は大きな変化が出てきた。中学教師の勧めで、一緒に音楽活動を行うようになった。先生がギターを、こづえがキーボードを担当し、ユニット「まめふうせん」を結成。長崎県内のいろんな福祉施設などを巡り、コンサートを行っている。

 まめふうせんのレパートリーは、童謡を中心に親しみやすい音楽ばかり。欲のない素直な演奏をするこづえの音楽は、人々の心の中に響いてくる。月に2、3回のペースでコンサートを行い、たくさんの舞台に上がった。そして多くの人と出会った。ひたむきなこづえの姿は人々に勇気を与えてきた。気がつけば、多くの人々から支えられてきたこづえ。命の尊さを知り、こづえの成長を見守ってきた家族の愛。やがてそれは一つ一つの出会いから、大きな愛に育っていった。見守っていてくれる大きな支えがあることに気がつき始めたこづえ。

 自分ができる精一杯の気持ちを、卒業式で伝える。卒業式の一番最後に、こづえはたった一人でピアノを弾く。伴奏もなく、右手だけの演奏。しかし気持ちで奏でるその音色は、とても大きく響く。幸せのメロディーが鳴り響く…。




<<制作担当者のコメント:KTNソサエティ・制作部 大石久貴>>
 『取材のきっかけは、ローカル新聞に掲載されていた記事からだった。「まめふうせん」という音楽ユニットがデビューしたという内容だった。中学校の教諭田中良彦先生とダウン症と心臓疾患を抱える中学3年生の猪口こづえさんは、ユニット「まめふうせん」を結成し、長崎県内を中心に、福祉施設をまわって音楽活動を続けていた。ギターを田中先生が、キーボードをこづえさんがそれぞれ担当し、童謡を中心に親しみやすい音楽を奏でている。
 こづえさんの音楽をとても聴きたくなった。どんな優しい音楽を奏でるのだろうと関心を持った。その背景には大きな母の愛を感じた。母・稀有未さんは思い悩んでいた。中学3年生となる娘の今後について。そんな時、田中先生と出会い、「何か自信をつけさせたい」と稀有未さんはこづえさんに新しい挑戦をさせることにした。子供を思う母親の姿とその愛に支えられ成長していくこづえさんを取材したいと思った。
 番組では、たんぽぽを一つの象徴においた。まだ、小さかった芽は、たくさんの太陽の光と水を受け、育っていく。小さな芽は、引っぱっても大きくなりはしない。あるべき純粋な光や水がちゃんと与えられれば、やがて花は咲く。
 こづえさんはたんぽぽ。黄色いかわいい花が咲くように、家族や支える人々の純粋な愛が注がれる。そしてたんぽぽは、やがて背丈を高くして、大空へ綿帽子を飛ばす。次の花を咲かせるため、希望を大空へ飛ばす。今のこづえさんがあるのは紛れもなく、周りの人々の支えがあるから。成長に何倍もの時間がかかる子供も、あるべき本当の愛で接すれば、その子のペースでちゃんと育つ。そんなこづえさんの成長を見て欲しい。そして、それは私たちの身のまわり全てに共通するものであることを…。』




<番組タイトル>第13回ドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『たんぽぽ〜家族と見つけた幸せ〜』
<プロデューサー>山本正興
<ディレクター>大石久貴
<構成>大石久貴
<撮影>松尾和彦
<編集>古川英明
<ナレーション>丸尾知子
<制作著作>テレビ長崎

2004年05月20日発行「パブペパNo.04-131」 フジテレビ広報部

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