過ぎ去りし日々。淡い記憶… 過去を振り返ることで、見えてくる今の自分。
現在と過去、自己と他者のつながりを見つめなおす骨太な青春群像劇!!
草野球の試合を控えた前夜。
東高校野球部OBの飯島ナオヤ(今井翼)、米田ヒロコ(佐藤めぐみ)、根岸ツネヒサ(小椋毅)、大河内ヤスオ(西條義将)、遠山マサル(古山憲太郎)が集まり、酒を酌み交わしながら、高校時代の思い出を語りあっていた。
あの頃、甲子園出場に胸を膨らませ、希望を抱いていたメンバーたち。
今はそれぞれの仕事をしながら、月に一度の草野球の試合を生き甲斐に生きていた。
その夜、高校野球部を1人で支えたエース・西湖ススム(海東健)が突然、皆の前に現れる。
西湖は今、野球部OB唯一のプロ野球選手。
驚きと懐かしさ、嬉しさ、嫉妬心が交じり合い、それぞれの記憶と想いが交錯する。
過去の想いが明らかになった時、現在の自分は…。
そして明らかになる真実とは…。
座長は「ストリップ」('04)、「冬のユリゲラー」('05)に続き、今作で3作品目の主演となる今井翼。
ドラマ、舞台などで活躍する若手演技派女優・佐藤めぐみ、映画「海猿」等、圧倒的な存在感を持つ、実力派俳優・海東健 他、若手俳優陣による青春の息吹を甦らせる“熱く”“せつない”青春群像劇!!
■ 第1話 ■ (2006年5月17日 01:08〜01:38)
夕暮れ。飯島ナオヤ(今井翼)の部屋。野球ボールを片手に新聞記事を読む飯島。周りには、部屋の整理をしているのか、いくつもの段ボールが積まれている。『西湖、一軍入り』の記事を目にした飯島は、新聞をゴミ袋へ捨て、段ボールを抱え部屋を出る。
草野球のグラウンド。その脇に古びたトタン小屋が建っている。そこは、飯島たち東高校野球部OBメンバーのたまり場になっていた。缶ビールの空き缶、机には麻雀卓。何もかもが雑然と置かれている部屋の中で遠山マサル(古山憲太郎)が野球のサインを出している。その遠山を真剣な表情で見つめる大河内ヤスオ(西條義将)。テレビにつないだビデオカメラを再生している根岸ツネヒサ(小椋毅)。遠山のサインに悩む大河内。「バント!」その間違った答えに、明日開催される草野球の試合から大河内を外そうと言う根岸。試合というのは、東高校野球部が甲子園出場を掛けた県大会決勝戦で敗北を喫した相手、清水高校のOBチームとの試合。リベンジ戦に燃えている根岸たちである。
そこへ、段ボールを抱えた飯島がやってくる。来週から、祖母と一緒に暮らす事となり、自分の部屋を空けなければならないのだ。酒盛りが始まる。彼らは休日の草野球だけを生きがいに、大河内は酒屋の店員、根岸は女のヒモ生活、遠山はサラリーマン、飯島はガソリンスタンドのアルバイトと日々代わり映えの無い生活を続けている。話は昔、飯島と根岸が入っていたリトルリーグの話題になる。そのリトルリーグには西湖も所属していた。一瞬、空気が重くなる室内。西湖は高校時代のエースで、現在はプロ野球選手。平凡な野球部は彼一人の才能で甲子園出場を期待されるまでに至った。飯島と西湖はリトルリーグ時代からバッテリーを組んでいた仲である。
その時、扉をノックする音が聞こえる。飯島が扉を開けるとそこには1人の女性が立っていた。彼女は米田ヒロコ(佐藤めぐみ)、元東高校野球部マネージャー。明日の清水高校OBチームとの対戦をホームページで見つけ、応援しに来たと力強く答える米田。皆、明日の清水戦に燃えている。西湖が一軍入りした事を話しだす米田。再び、重くなる空気。その話題に、知らないふりをする飯島。
米田「凄い変化球持ってるらしいよ…」
更に話を続けようとする米田に苛つく男たち。男たちは、西湖に対し、あまり良い感情を持っていない。彼らは西湖のせいで甲子園に行けなかったと感じているのだ。米田は西湖に会いに来たのではとはやし立てる根岸たち。その言葉を否定し、ムッとしながらお酒を一気飲みする米田。少し酔った米田が、高校時代、問題になったタバコ事件の事を話し出す。当時、野球部の部室がタバコ臭いと問題になり、結果、塩谷という部員が吸っていたという事で、彼は謹慎処分になった。あやふやな返答をする彼らだったが、もう過去の事と吹っ切れたように、全員タバコを吸っていた事を告白する。その事実を塩谷一人に押し付けたことで、今、塩谷は引きこもり状態だという。「西湖クンも?」という米田の問いに「西湖が吸うわけねぇだろ」と根岸。
遠山「アイツは、悪さしてる俺達の事、見下してたからな」
大河内が西湖の背中見ていると絶対エラーできないというプレッシャーがあった事を告白。飯島もまた、西湖の球を受ける事の緊張感を吐露する。皆、草野球でのびのびと野球をする楽しさを感じているのだ。片やプロ野球選手。片や草野球が生きがいの代わり映えの無い生活。高校時代からの野球への想いが浮き彫りになった瞬間である。
飯島「どうせ俺はガソリンスタンドでございまーす」
居直った飯島が米田に酒を注ぐ。
そんな時、風が強く吹き、小屋の明かりが点滅する。根岸が入り口の扉が開いている事に気づき、大河内が閉めようと、扉に近づくと…。
入り口には、西湖が立っていた。その悠然とした佇まいに静まり返る一同。
消せない過去。交錯するそれぞれの想い。
県大会決勝戦、マウンドで交わされた西湖と飯島の秘密。
そして、西湖の凄い変化球とは…。
■ 第2話 ■ (2006年5月24日 01:08〜01:38)
夜。路上で吐いている米田。米田を介抱している遠山と大河内がいる。
小屋の中。西湖は懐かしむように小屋の中を眺めている。視線の先の懐かしいものに駆け寄る西湖。それは、高校時代に飯島が作った“バッターボックスに立つ松井”の絵が描かれた等身大のパネルだった。かつて飯島と西湖はこのパネルを立て、投球練習をしていたのだった。今は、ボロボロのそのパネルや小屋を眺め「随分と模様替えしたみてぇだな」とつぶやく西湖。その言葉に「昔のまんまってワケにはいかねぇだろ」と答える飯島。
西湖が古い野球盤を見つける。飯島と西湖は昔、この野球盤でよく遊んだのだ。過去の記憶をたどる2人。野球盤はあの時に壊れたままだった。西湖が飯島に今、何をしているのかと問うと、飯島は野球盤をいじりながら聞こえないフリでごまかした。
そこへ遠山たちが帰って来る。酔った米田が明日の試合の事を話し出す。皆が草野球をしていることを聞き、その事が“意外”という表情の西湖。
西湖「てっきり野球嫌いだと思ってたけどな…違うか、練習嫌いか、試合と勝つ事は大好きだもんな」
その皮肉めいた言葉に何も言えない一同。県大会決勝で敗れた清水高校OBチームと試合をする事を聞いた西湖はその試合に出場すると言い出す。根岸が「今更、あの時のリベンジかよ」と笑いながら西湖に言う。
甲子園出場の切符を逃したのは西湖が敬遠の指示を無視し、サヨナラを打たれた事が原因だった。キャプテンの遠山が言い出した「敬遠」の指示はあの状況下においてはセオリーであり、誰もが納得して出した決断であった。しかし、それを無視して西湖は勝負し、打たれた。おもしろおかしく話す根岸を無視し「あの時の事はどうでもいい」と冷たく突き放す西湖。
米田「私、あの時の事で聞きたい事があるんだけど…三球とも何で変化球だったの…?」
あの時、西湖が勝負した球。速球投手の西湖が突然投げた変化球。その場の全員が言葉を失った。飯島に事実を確認する大河内。飯島は言葉を濁す。
西湖「そうそう三球とも変化球だったよ。何となく試してみたくなったんだよ、俺の変化球が通用するかを。そしたら打たれた」
にやけ顔で平然としている西湖に根岸が噛み付く。あの時、ピッチャーマウンドに内野手を集めて遠山が出した「敬遠」の指示。その判断に賛同するメンバー。それが西湖の気持ちを狂わせた。西湖一人の才能だけで勝ち進んできたチーム。努力を怠り、タバコを吸っていたメンバー達が甲子園出場の切符を目の前にした途端、「歩かせよう」と言い出した事に憤りを感じた西湖の反抗であった。一触即発の西湖と根岸に今まで黙っていた飯島が割って入った。西湖は打たれるつもりで投げた訳じゃないと釈明する飯島。あの時投げた変化球。それは、当時、飯島と西湖が密かに練習していた“アップボール”。見た目はチェンジアップだが、全く違う変化をする前代未聞の勝負球であった。決勝戦の投球時、三球目で爪が剥がれ、投げられた球はただのチェンジアップとなり、サヨナラを打たれたのであった。一同が唖然とする中、アップボールの握り方を皆に披露する飯島。ボールに爪を立てる握り方を見た遠山が、ある事に気づく。
遠山「わざとボールを傷つける投球は…」
大河内「違反投球だろ」
その事実を認める飯島。西湖はもう終わった事だと軽く流し、近くに置いてある段ボールを物色し始める。何かを確信した飯島がおもむろに西湖に問う。
飯島「凄い変化球ってよ…アップボールの事だろ。凄い変化球持ってるって…そうだろ?」
その言葉に驚く一同。西湖がプロ野球の一軍に上がる決め手となった変化球。それは違反投球の“アップボール”なのではないか?
西湖は「別に…」とだけ言い、再び段ボールを物色している。
何も言えず立ち尽くす一同。重い空気が漂い、時間だけが過ぎてゆく。
取り戻せない過去。そこから逃れられない現実。
米田がほのかに抱いていた西湖への想い…。
飯島と西湖の“溝”、疑惑の変化球が浮き彫りにする飯島の秘めた想いとは…。
■ 第3話 ■ (2006年5月31日 01:08〜01:38)
小屋の中。静まり返る室内。今も違反投球をしていると思われる西湖へ、米田は泣きながら止めるように訴える。が、そんな米田を見つめ西湖が真顔で質問する。
西湖「ワリイ、ひとつ確認したいんだけど…こいつ、マネージャー?」
西湖は今の今まで米田の事を誰なのか認識していなかったようだ。この状況に、さっきまでの重たい空気は一転、笑いが起こる室内。一人ふてくされている米田を見かねた大河内は昔の話は止め、西湖の帰省を祝おうと皆に乾杯をあおる。
飲んでバカ騒ぎの一同。しかし、ふとした瞬間に、どうしても甲子園に行けなかった事が話題に上ってしまう。ああしておけば良かったと過去を振り返るたび、何かしら不穏な空気が流れるのを、再び乾杯で忘れようとする一同。県大会決勝戦の思い出は今でも忘れがたい青春の傷跡として、彼らの胸に残っているのだ。
ついには飯島も、苛立ちから皆に八つ当たりをし始める。始終泣いている米田に対して「帰れ!」と冷たくあたる飯島。高校時代に皆が煙草を吸っていた事、そして西湖が違反投球していた事。米田は過去の記憶が汚されていくのを、ただ泣き崩れ受け止めるしかなかったのだ。
西湖は再び飯島に今、何をやっているのかと訊ねる。バイトだと適当に答える飯島だが、西湖は飯島の母から飯島がバイトを辞めた事を聞いていた。飯島は自嘲気味に、来週から来る祖母の世話をするため、ガソリンスタンドのバイトを辞めた事を告白する。高校時代のバッテリー。そのあまりにも差のついた現実に、飯島は皮肉めいた言葉しか浮かばない。
飯島「お前とは全く違う生活を皆してます。月に一度の草野球を生きがいに生きてます。後は何もしていません。以上」
二人の言い争いを見ていた米田が、悲しげに帰り支度を始める。飯島の怒りは収まらない。
飯島「ホントにお前は何しに帰って来たんだよ。一軍に入って、ふと気が付いてアイツどうしてんのかって感じ?」
何も言わずただ飯島を見つめている西湖。そんな2人を止めようと割って入る米田を飯島は「うるせぇんだよ!!」と拒絶する。静まり返る室内。外へ出て行く西湖。米田が西湖の後を追う。
河原。西湖を気遣い、米田が話し掛ける。過去にこだわる飯島たちを子供だと言う米田。しかし、米田も過去の真実を知った衝撃を隠す事ができない。部員の喫煙事件の時、キャプテン遠山の指示で塩谷が退部させられたため、塩谷が今でも引きこもっている事を口走る米田。
小屋の中。飯島がリトルリーグ時代、自分がピッチャーで西湖がキャッチャーだった事を自慢げに話している。一緒のリトルリーグにいた根岸に同意を求めるが、根岸はその事を全く覚えていない。バッテリーが入れ替わったきっかけは、飯島が風邪をひいて休んだ試合で、代わりに投げた西湖を見た当時の監督がピッチャーに転向させた事だった。飯島はあくまでヘボ監督の気まぐれが発端で、自分と西湖の間に才能の差は無かったと主張する。と、その時帰ってくる西湖と米田。西湖はその時の試合で完全試合を達成した事を告白する。西湖の才能を再確認し、納得する大河内たち。しかし飯島は納得できず意固地になっている。アップボールを最初に投げていたのは自分だったと語る飯島に対し、投げたのは自分だと否定する西湖。過去の記憶が食い違う2人。どっちでもいいと呆れる遠山。酒をあおり、飯島が不敵に言う。
飯島「…お前、その球でプロになったんだろ。でも俺達がそれバラしたら終わりだからね…」
西湖を見つめる飯島。黙ったままの西湖。沈黙が室内を包む。
甦る記憶。忘れたい、そして忘れられない過去。
すべてを吐き出した飯島に知らされた西湖の想い…
そして西湖が現れたその訳とは…
■ 第4話 ■ (2006年6月7日 01:08〜01:38)
小屋の中。過去の事にこだわる飯島がリトルリーグ時代の映像を皆に見せようと、段ボールの中からHi8のテープを取り出しカメラにセットする。おもしろ半分でカメラのファインダーを覗き込む根岸。しかし、そこに映っていたのは試合の映像ではなかった。その時、突然風が吹き、電灯が消える。しばらく後、電灯がついた時、根岸の近くに置いてあったはずのカメラがなくなっていた。カメラの行方を探す一同。カメラからもれていた音をたどると飯島のそばでカメラが見つかった。必死に映像を見られまいとする飯島。根岸は「ガキが二人いてグローブを川に捨ててた…」とだけ言うと黙ってしまった。その様子を見ていた西湖が、そのグローブは俺のだろとつぶやく。初めてピッチャーを任され、新品のグローブを購入したものの、何者かにグローブを盗まれた西湖。西湖は川に捨てていたのは根岸、塩谷、そして飯島の3人だと断定する。言葉が出ない一同。過去の事は気にしていないと言う西湖。その言葉に、飯島がずっと心に秘めていた想いを西湖へとぶつける。
飯島「お前嫌いだったんだろ…俺の事。中学も、高校も俺の事見下しながらバッテリー組んでたんだろ…」
飯島を見つめながら、西湖は気にしてないと繰返す。納得がいかず、しつこく西湖に本意を確かめようとする飯島。
飯島「いいじゃねぇかよホントの事言ったって! お前はプロで俺はババアの世話だよ! …言えっつってんだろ!」
小屋に置いてある松井パネルを引っ張り出し、西湖の目の前で破壊する飯島。一同は誰も止める事が出来ず只立ち尽くすしかなかった。床へ倒れ込んだ飯島は酔いが回ったのか吐きそうになる。そんな飯島をなだめつつ外へと連れ出す根岸と大河内。
小屋の中に残った、遠山、米田、西湖。塩谷一人に責任を押し付けたタバコ事件は、西湖の指示によって遠山が行ったことだった。グローブを捨てられた仕返しかと西湖に問う遠山。別に誰でもよかった、タバコを吸っている奴に足を引っ張られたくなかっただけと言う西湖。遠山はあの時、敬遠の指示を出したのは本気で西湖を甲子園へ行かせてやりたかったからだと本音を告げる。その言葉を聞き過去のすれ違いを今になって気付かされる西湖。その時、先程とは様子が変わった飯島が根岸と大河内に抱えられて戻って来た。吐いて、全てが吹っ切れた飯島が陽気に校歌を唄おうと皆をあおり始める。何故校歌なのかと遠山が聞くと、「甲子園甲子園!」と嬉しそうに答える飯島。飯島が校歌を唄い出すと、つられて根岸、大河内、遠山も唄い出す。西湖はただ黙って見つめている。ただ一人、米田は泣きながら小屋を去っていく。その姿に気づき、唄を止める一同。静まり返る室内。
小屋の中、早朝。酔いつぶれて寝ている飯島、大河内、根岸、遠山。帰り支度をしている西湖。そんな西湖に気づき目を覚ます飯島。二人の間に、昨日の険悪な空気はない。西湖は帰り際、アップボールがフリーバッティングですぐ打たれ、プロでは通用しない事を告げる。そして、一軍に上がるきっかけとなった凄い変化球とは、カーブであることも。驚き、何も言えないでいる飯島。飯島を見つめていた西湖は、ここへ帰って来た理由を話し始めた。
西湖「お前、高校卒業する時に俺に言ったろ…プロになったら、一度球を受けさせろって」
飯島「マジで…」
西湖「…俺の球を一番受けたのはお前だからな…」
西湖はその約束を果たす為、飯島に会いに帰って来たのだった。その事実に驚き唖然とする飯島。去ろうとする西湖に「ガキの頃から、お前さえいなけりゃと思って球受けてたよ」と本音をもらす飯島。そんな飯島の気持ちを当時から知っていたと伝える西湖。そして…
西湖「ミット持って表でろ…お前がダラダラと生きている間、俺がどんな球投げてきたか見せてやる…で、後悔しろ」
優しい笑みを浮かべ、小屋を出て行く西湖。飯島もミットを持ち、表へ出て行く。
朝の光が小屋の中へ差し込み、大河内、根岸、遠山の3人が目を覚ます。外から聞こえるキャッチボールの音に気付き、窓を開ける遠山。外では西湖と飯島がキャッチボールをしている。小屋の中からその様子をただ見つめている3人。球を受ける飯島は、その西湖の球の凄さに、自然と笑みがこぼれてくる。