あらすじ
<第1回> <第2回> <第3回>

<第1回> 「燃えよチャーハン」
 香港と日本を往復する豪華客船『スターレオ号』が香港の港に巨大な船体を横付けしている。間もなく日本に向けて出港のため乗り込む客に迎え入れる乗務員と船の周辺は大勢の人達でごった返している。そして、そんな人達の中にいろんな事情と目的を抱いて、この『スターレオ号』乗船する者たちがいた。
 「迎えに行ったがいなかったー!?」
 橘詩央(鈴木京香)は、携帯電話を片手に苛立っていた。上司と折り合いが悪く、左遷同然でこの船のスタッフにさせられた。だが幹部候補生でもある詩央としては、何としてもここで大きなイベント企画を成功させ上司を見返したいという気持ちがある。そこで今回企画したのが“食王”と呼ばれる七人のシェフを招いての「奇跡の饗宴・豪華ディナーの宴」だったのだが・・・肝心な食王がまだ乗船してない、それどころか迎えにいった者はその姿さえ確認できてないというではないか・・・。
 「楽しみにしてますよ」と言ってくれた船長の蜷川(山田明郷)には「順調です」と答えておいたが・・・とそこへ「順調ではないでしょう」と詩央の気持ちをグサリと射ぬく声がした。フロア係の岩田厳五郎(伊東四朗)だ。実は岩田はこの企画に最初から不安を抱いていた。船内には中華料理店『平平樓』があって、腕の確かなシェフたちもいるというのに、そこに食王をわざわざ招くというのはプライド高きシェフたちが黙っているはずがない。そして、岩田の心配した通り、鬼沢(並樹史朗)をはじめとする『平平樓』のシェフたちは船を降りてしまった・・・だだ一人、この男を残しては。
 「ひゃあ〜よく寝たー」。迫田誠二(椎名桔平)は、甲板での居眠りからようやく目覚めた。その風貌に緊張感はないが、これでも一応『平平樓』の料理人の一人。だが万年皿洗いの迫田は一度も料理を作ったことがない。よって緊迫した詩央と鬼沢らのやり取りにも加わることはなかったのだ。
 「じゃあ僕は・・・・・・」。名波健太(二宮和也)は『平平樓』のシェフたちがいなくなったことを聞いて愕然となった。見習いとして働くことになっていたのに、しかもシェフがいないのでは憧れの黄金チャーハンも食べられない!?だがこの後、厨房にいった名波は、そこで迫田と遭遇。シェフが戻ってきてくれたと勘違いし、感動にむせぶのだった。
 さて、『平平樓』のチャーハンを目的に乗船してきたのは名波だけではなかった。
 三村奈々子(瀬戸朝香)は香港での結婚生活に破れたばかりだというのに、派手な出で立ちと旺盛な食欲でもって乗船してきた。また、日本で中華料理店を開いていた料理人の小向五郎(高橋克実)は、料理との決別の意味で評判の黄金のチャーハンを食べてみようと思う。
 さらに、自称・大手銀行のディーラーと名乗り、女性の羨望を集めて乗り込んできたが、素性は限りなく不明で怪しい綾小路公彦(石黒賢)にしても、食の目的は『平平樓』にあり。
 そしてギャンブル好きでとにかく腕力に自信がある二等航海士・大山海二郎(東幹久)にしてもケンカの後の腹ごしらえは、もちろん黄金チャーハンなのだ。
 その頃、詩央は食材係の野口拓郎(勝村政信)から、「食王らしき男たちが船に乗せろと言っている」という知らせを受けて小躍りしていた。
 “ようやく食王が乗り込んで来る!”。だが、岩田は野口という男が信用できない奴だということを知っており、またしても不安を抱き、そしてまたまたその不安は的中。  食王が乗船を目前に引き返すという事態が起こってしまったという。結局七人の食王を乗せないまま出航した『スターレオ号』。そして厨房で呆然とたちすくむ詩央・・・の前にはなぜか迫田、名波、奈々子、野口、大山、小向が集合している。
 だが、これを見た詩央はひらめいた!
 「こうなった以上、皆さんに協力してもらうより他ありません!」。
 「え?」一斉に見返す6人に、さらに詩央は続けた。
 「一人じゃ無理でもみんなで協力すれば奇跡は起こせるわ!!」
 果たして、『スターレオ号』波乱の航海の行方は・・・?

<第2回> 「蟹と共に去りぬ」
 「ねぇ飲みましょうよー」。
 万年皿洗いの迫田(椎名桔平)に離婚したての奈々子(瀬戸朝香)、ケンカっ早い二等航海士の大山(東幹久)、中華料理店をたたんできた小向(高橋克実)・・・。
 『平平樓』の厨房に期せずして集まった連中たちは、黄金炒飯を食べるという目的も果たせず宴会を始めてしまった。唯一名波(二宮和也)だけは料理に対する情熱を失うことなく、残った迫田に弟子入りさせて欲しいと懇願しつづけていた。
 その頃、『平平樓』VIPルームには船長(山田明郷)が招いた客が到着。食王たちの料理を楽しみに、まずは談笑にふけりはじめた。「ええ、娘が私の誕生日にって香港の店に行ったらニセモノの時計をつかまされましてね」「香港はニセモノ天国だから」「でも今日は楽しみですね」「本場の技が見られるわけですか」「きっとご満足いただけると・・・」。“ニセモノシェフ”で溢れる厨房の事情を
知る客室係の岩田(伊東四朗)はそれでもにこやかに客を迎えいれたのだった。
 一方、詩央(鈴木京香)は厨房の惨状を見て呆れ返った。
 すっかり酔っぱらっている迫田に、食べ尽くされた高級食材の蟹・・・。
 そこにはこれから協力して料理を作ってこの危機を乗り越えようという可能性が全く見当たらないのだ。そこへ、岩田がやって来て「オーダーを取りたいのでお勧めを聞きたい」と言う。とっさのことに慌てた詩央はわずかに残っていた蟹を見つけると蒸すぐらいならできそうだと直感し、本日のおすすめは“蟹”だと告げた。題して「食王蟹尽くしお任せディナー」!
 言った以上は作らねばならない。詩央はあの手この手で皆をその気にさせるとコック服を着せ厨房に立たせるまでに形勢を整えた。
 だが!ここでまたしても大問題が発生した。詩央は岩田から、迫田の手の指にあったタコが、実は卓球のラケットでできたものだと聞かされたのだ。包丁ダコではなかったのか・・・・・・。呆然とする詩央。
 そして「味方にまわしたらこれほど怖い奴はいない・・・そして駄目だと思ったらすぐに逃げ出す、そういう男です」という岩田の言葉どおり、名波によってタコの秘密を暴かれた迫田は、案の定厨房から逃亡、さらにさらに頼みの食材蟹までもがコソゴソと厨房から逃げだしてしまったのだ。
 万事休す!誰もがそう思ったその時だった、詩央の「代わりのもので」という一言にヒントを得た食材係の野口があるものを取りだし、これで蟹料理を作ることがてぎるといい出したのだ。
 「ばかばかしい」とせせら笑う岩田。だが、詩央は「いいわ。やってみましょう!」と野口の手にあるモノを見て力強く言った。

<第3回> 「愛と喝采の海老」
 何とか最初の客のオーダーに応えることに成功して、危機を乗り越えることができた詩央(鈴木京香)は喜々としてその結果を社に報告した。
 もちろん次なる注文にも応じる構えで、「リーダーが必要だ」と言う岩田(伊東四朗)にも迫田(椎名桔平)を料理長に指名することを宣言。本人にもそれを伝え、早速人心掌握にあたって欲しいと促した。
 その頃、『平平樓』厨房では、綾小路(石黒賢)が仕入れてきた迫田の情報が話題になっていた。それによると、迫田は実に13年も皿洗いをやってきており、厨房にはそれに座ることは縁起が悪いとされているらしい“迫田椅子”なるものがあるという。その椅子を見て真っ先に恐怖感に捕らわれる名波(二宮和也)。
 とそこへ迫田がやってきて、詩央に言われたよう、全員をまとめるための雑談を始めたのだ。しかし、間の悪い質問の数々は逆に大山(東幹久)、奈々子(瀬戸朝香)らの心証をすっかり悪くし、迫田はリーダーとしての自信を完全に失ってしまう。さらに、それ見てとった岩田が擦れ違いざまに、「あの料理・・・今日あたり、オーダー入るかもなぁ」と意味深なことをつぶやいたことで、迫田は益々追い込まれてしまう。
 その直後、厨房に新たなオーダーがもたらされた。まずは、冷菜8種盛り合わせ。これは切る盛る並べるなど迫田の指示程度でもなんとかなった。だが、続けて出されたメニューに小向(高橋克実)は首を捻り、迫田はまたしても厨房から逃亡してしまった。実はその『椒塩爆龍蝦』なるメニュー、かつて迫田が料理長に無断で手を出して客にクレームをつけられ、それが原因で皿洗いをする羽目になったという、迫田にとってはトラウマの一品だったのだ・・・。
 詩央は、迫田の説得に走った。しかし、「俺にはできない・・・俺にはもともと料理人なんてどうでもよかったし」と迫田は言う。だが、それを聞いた詩央は、数冊の大学ノートを突き付けさらに迫田に迫った。『明日のために』と書かれたそのノートは、迫田が数年間『平平樓』で見て学んだことが記されていた。
 しばらくして迫田は歩き出した。後に続く詩央。向かう先は皆の待つ厨房!!


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