あらすじ
<第1回> <第2回> <第3回>

<第1回> 「わが愛刀よ」
 阿地川盤嶽(役所広司)は親子三代の浪人である。幼い頃に両親を失って天涯孤独の身。友とするのは剣術の師から貰った名刀・日置光平<へきみつひら>だけだ。そんな盤嶽が、かっての浪人仲間で、今は代官所に仕官する三輪嘉五郎(石倉三郎)から手紙を貰い、三輪を訪ねた。
 代官の武富多平太(立川三貴)は、領民のことよりも自分のことを考える男だった。美術工芸品の収集に熱中し、庭園づくりにも凝っている。ついには領内を流れる川の本流をせき止めて水を支流に送り、そこから自分の屋敷の庭に水を引いて風流三昧をしている。おかげで本流は涸れ、農民は困窮していた。
 三輪は盤に、武富への仕官の話を持ちかける。仕事は水門の警護。だが、旅の途中で水門の存在に疑問を感じた盤嶽は即答せずに、宿へ帰った。武富には違う狙いがあった。三輪から盤嶽が名刀を持っているのを聞き、日置光平が欲しくなった武富は、仕官の話を口実に盤嶽を呼び出したのだ。
 盤嶽が宿に帰ると、ゆき江(鈴木京香)という美しい武家の娘が待っていた。ゆき江は盤嶽を鎮守の森に近い農家に連れて行く。吾平(永妻晃)という農民とその女房お倉(和泉敬子)がいた。ゆき江が言うには、横暴な代官に対する村人の我慢は限界を超え、団結して水門を壊すことになった。ついては力を貸して欲しいとのことで、吾平が農民の頭になっている。
 ゆき江が農民を助けようとするのは、人間として放置出来ないからだという。水門を壊せば二千人が助かるとも言った。関屋猷之介(うじきつよし)という、ゆき江の兄を名乗る浪人もいた。盤嶽はここでも即答を避けた。
 翌日、盤嶽は三輪に、「二千人の農民のために水を本流に流してくれ」と言う。ところが三輪は、「困っている農民は二百人で嘆願書も出ている」と話す。そして、「手紙で呼んだ目的は仕官ではない。腰の刀を五百両で売らないか」と持ちかけた。
 盤嶽が一番嫌いなのは嘘をつかれることだ。ゆき江にも、三輪にも嘘をつかれたと盤嶽は怒った。
 盤嶽はこの土地を去ることにした。その前にゆき江に会い、「二千人は嘘だ」と抗議する。だが関屋は、「正義のためには、多少の嘘も許される」と取り合わない。盤嶽はゆき江に、「世の中に、嘘をつかん人間が一人ぐらいあってもいいと思いませんか」と言って立ち去った。
 武富は、刀を手に入れるためなら盤嶽を斬ってでもと、五、六人の侍を追手に差し向けた。峠道で盤嶽は追手と斬り合う。中には短銃を撃つ者もいて、盤嶽は銃弾を避けたものの断崖から落ちた。それを助けたのはゆき江だった。
 盤嶽は参加しなかったが、吾平たち農民が立ち上がり、深夜に水門を爆破することになった。だが肝心な時に、助っ人であるはずの関屋は口実を設け、軍資金を持って逃げてしまった。水門は見事に爆破された。
 関屋が逃げたことを知ったゆき江は、「心当たりがある」と道を急ぐ。盤嶽も吾平も付いて行った。関屋は宿場の居酒屋にいた。怒ったゆき江は関屋を思い切り突き飛ばした。驚いたことに関屋は、ゆき江は妹ではないと言った。ゆき江の正体は、街道を股にかけてスリや枕探しをする女だった。そして浪人の関屋と組んで、代官と戦うと言って村人をだまし、なけなしの金を集めさせたのだ。
 気がつくと、関屋が持ち逃げした金はゆき江にスリ取られていた。逃げるゆき江を盤嶽が追い詰めた。ゆき江は、自分の名は雀の宮のおゆきだと名乗る。そこに、三輪に率いられた武富の追手が来た。短銃が盤嶽を狙う。その時、おゆきが盤嶽の前に立ちはだかる。銃声がして、おゆきが胸を押さえて倒れた。
 「許せん」と盤嶽は獅子奮迅の活躍をして追手を次々と倒す。一人残った三輪だけは、「また浪人になれ」と言って許した。死んだと思っていたおゆきは生きていた。胸に入れていた大金の入った財布が弾丸を止めたのだ。「これを潮に堅気になります」と言って盤嶽と別れるおゆき。だがその袂には盤嶽の財布が入っていた。嘘が大嫌いな盤嶽なのに、よくだまされる。

<第2回> 「絵図面の謎」
 浪人・阿地川盤嶽(役所広司)は、壷振り賭博に手を出してイカサマにひっかかり、一文無しになる。しょんぼりして賭場を後にする盤嶽の後から付いてくる職人風の男がいた。紋次(ベンガル)といい、宿場で傘や提灯を商っている。
 盤嶽が慣れない博打に手を出したのは、名刀日置光平を研ぎに出す金を稼ごうとしたためだ。それを聞いた紋次は、「研ぎ師を紹介する。費用は傘貼りを手伝ってくれれば」と言う。盤嶽は紋次についてゆく。途中で色っぽい女が一人盤嶽に激しく突き当たった。
 研ぎ師は銀造(上條恒彦)という職人気質の男。「こんな名刀ならぜひ研ぎたい」と刀を預かる。代わりに銀造が渡したのは竹光だった。
 銀造の家に、盤嶽に突き当たった女が訪ねて来た。おさらばお小夜(浅野ゆう子)と名乗り、懐に預けた物を返せと言った。盤嶽が懐を探っていると、表で悲鳴が聞こえ、盤嶽はそちらへ走る。こうして盤嶽は、盗賊日本左衛門の埋蔵金騒動に巻き込まれた。
 悲鳴をあげたのは、居酒屋に勤める千恵(安達祐実)という娘。千恵は、思いを寄せている若い浪人・乾新之助(高橋和也)のために秘密の絵図面を渡したのだが、それを巾着切の女に取られてしまった。そして、千恵と新之助が橋の上に一緒にいるところへ、海産物問屋の月見屋満兵衛(曾我廼家文童)が用心棒を連れてやってきた。月見屋も絵図面を探していて、千恵を連れ去ろうとする。
 新之助は用心棒に立ち向かったが斬られて川に落ち、流される。そこへ盤嶽が駆けつけて、事情はわからぬながら、用心棒を相手に竹光での戦い。それでも強いのが不思議だ。千恵はその隙をついて、川へ飛び込んだ。
 盤嶽は河原に急ぎ、千恵を助けて紋次の家へ運び、紋次の女房お初(根岸季衣)が介抱した。やっと落ち着いたところで盤嶽が懐を探ると、油紙に包まれた絵図面が出て来た。何だか分からないままに、盤嶽は絵図面を壁の穴ふさぎのために貼った。
 そのころ新之助はある寺にいた。助けて傷の手当てをしたのは絵図面を奪ったお小夜。その絵図面とは、七十年ほど前に、東海道を股にかけて暴れた盗賊・日本左衛門が盗んだ金を、手下の鬼火の弥平太が離れ小島に隠した時の図面と言われている。日本左衛門も弥平太も捕らえられて磔になったが、隠し金は三十五万両にもなるという。
 その夜、お小夜が紋次の家に忍び込むが、盤嶽に見つかった。一方、元気になった千恵は居酒屋に戻り新之助と会うが、月見屋の追っ手が心配で一緒に盤嶽のところへ帰ってくる。千恵はそこで初めて絵図面の説明を盤嶽にして、「自分は弥平太のひ孫。惚れた新之助が仕官するための主家への手土産にと渡したのに、こんな騒ぎになって」と嘆いた。
 絵図面が紋次の家の壁に貼ってあるのを見て、新之助は目の色を変え、絵図面をはぎ取って走り出した。だが、家の前には月見屋の用心棒たちが待ち伏せしていて新之助を連れ去った。盤嶽は紋次の家の番傘をつかんで走った。
 月見屋に乗り込んだ盤嶽は、今度は番傘と竹光で立ち回り。さすがに苦戦のところへ、紋次が研ぎあがった日置光平を持って駆けつけ、盤嶽は用心棒を斬りまくる。絵図面を取り返した盤嶽に新之助は、「千恵と付き合ったのは絵図面が欲しかっただけで、一緒になる気はない」と言う。それを千恵が聞いていた。
 盤嶽は、「男と女の絆がこんな紙切れとは」と怒って絵図面を破り捨てて川に流す。新之助はぼうぜんとするが、千恵は冷静だ。絵図面は、新之助があまり「仕官、仕官」と言うので、千恵が書いたものだった。もちろん弥平太のひ孫というのも嘘だ。
 紋次と別れ街道を行く盤嶽の前にお小夜。お小夜は、自分は公儀の隠密で、埋蔵金話を調べていると話した。盤嶽は、「埋蔵金など、人間の欲が作り上げた妄想だ」と言った。また盤嶽はだまされた。

<第3回> 「津軽の男」
 阿地川盤嶽(役所広司)は、旅の途中で田中平四郎(宇崎竜童)という浪人を助ける。峠道で病に倒れて動けないところを、雨の中を背負って宿場の宿「たな屋」まで運んでやったのだ。
 気の毒な男だった。故郷は津軽。江戸で食い詰め、「どうせ死ぬなら故郷で」と妻子を連れて津軽に帰る途中に子供が病になり、その看病をする妻も病に倒れた。宿場の地主・佐兵衛(津村鷹志)の好意で土蔵に住まわせてもらっていたが、平四郎は金を稼ぐために普請場に働きに出て、風邪をこじらせたのだ。
 数日後、平四郎は回復したが、盤嶽は風邪をうつされ、動けなくなって「たな屋」にい続けた。おふみ(渡辺典子)という宿の嫁が面倒を見てくれた。医者の龍伯(岡本信人)の治療で風邪はよくなったが、盤嶽も貧乏で治療代が払えない。すると、龍伯は患者たちが滞納している薬代の取り立てをすれば、金は取らないと言った。
 およそ盤嶽には向かない仕事だが、やむなく宿場の家々を回って借金を取り立てた。その中に、平四郎一家が住む土蔵もあった。今度は子供が熱を出していた。盤嶽は渋る龍伯を半ば脅して南蛮渡来の薬を出させた。もちろん金は払えない。
 盤嶽と平四郎の二人が取立てをするこになった。そこで盤嶽は大失敗をする。借金取りが詰めかけているボロ屋に住む老婆と娘が首を吊ろうとするのを見かねて、借金取りを追い払う。その隙に老婆と娘は夜逃げをしてしまった。聞けば、いつも首吊り騒ぎを起こす札付きの親子だった。
 盤嶽は、この親子の借金をかぶることになった。八両もある。名刀日置光平を売らなければ払えない。その時佐兵衛が、飼っているニワトリの番をすれば借金を免除すると言った。九十九羽いた。ただし、一羽でも盗まれたら日置光平を渡すという条件だ。
 ところがこれがとんでもない罠だったのだ。盤嶽が番をするトリ小屋に泥棒が入る。トリ一羽をつかんで逃げる泥棒を追いかけ、つかまえる。ところが帰ってくると、残りのトリがすべていなくなっていた。日置光平を自分のものにするために佐兵衛が仕組んだことだった。
 しかし、そのからくりを知ったおふみが真相を盤嶽に話す。怒った盤嶽は、佐兵衛や土地のやくざを張り倒して、刀を取り返して宿場を去った。だが佐兵衛は、「盤嶽が約束を破って逃げ出した」と平四郎に言う。佐兵衛に世話になっている平四郎が後を追い、宿場のはずれで対決した。
 ところがその斬りあいも、佐兵衛や土地のやくざ、そして「たな屋」で博打にふけっていた地元の金持ちたちは賭けの対象にする。それを知った盤嶽の怒りが爆発した。


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