あらすじ
<第1回> <第2回> <第3回>

<第1回> 「天使の羽」
 歓声に包まれるボクシング会場。リング上には、史上最速でバンタム級日本王座に挑戦している神田エイジ(滝沢秀明)がいた。不注意から対戦者の一発をくらったエイジの闘争心に火が点く。試合を見つめる観衆の中に、スポーツ紙のライター、飯塚桃子(小雪)がいた。ボクシングにはまるで興味がなかった桃子だが、次第にエイジの動きに目を奪われていく。
 その頃、とある食堂では橘圭一郎(椎名桔平)が、祖母の白井富貴子(八千草薫)、母、橘紘子、叔母の白井栄子にケーキ屋出店の援助を願い出ていた。3人とも賛成するのだが、富貴子は疑問を口にする。圭一郎は、甘いものが好きではなかったのだ。
 さらにその頃、とあるケーキ屋では、経営者(市川勇)がパティシエに辞職を迫っている。経営者はそのパティシエを、うまいケーキを作れるだけでなく客の心が読める天才とほめたたえるのだが、どこかに問題があるらしい。辞職の通告を天才パティシエ、小野裕介(藤木直人)はすんなりと受け入れた。
 ボクシング会場では激しい打ち合いの末、エイジが対戦者をノックダウン。試合後の控え室で、源一からもらった御褒美のケーキを美味しそうに食べていた。桃子は先輩記者を差し置いて、エイジを取材しようとするが、ジムの若い連中に止められてしまう。実はそこには理由があった。ケーキを食べ終えたエイジに、源一はつらい宣告を下していたのだ。激しい戦いで目に障害を負ったエイジは、引退を余儀なくされる。そしてそのショックから、エイジは行方不明に・・・。
 橘圭一郎は、小野に会っていた。自分の店に来ないかと声をかけたのだ。出店計画を説明する橘は、店員をどうするかを小野に持ち掛ける。すると小野は、営業の手腕を持つ橘本人がやればいいと言う。橘は反対しようとするのだが・・・。小野の笑顔に負けて、うなずくことに・・・。
 一方、桃子は神田ボクシングジムでエイジの消息を追っていた。エイジのカムバックを信じる桃子に、源一はその可能性を否定する。
 エイジは・・・。看護婦の内野茜(西野妙子)のアパートに身を寄せていた。何もせずにいるエイジだが、ランニングは続けているらしい。その日も、深夜のランニングに出かけたエイジは、住宅街のど真ん中にポツンと明かりをともす店に目を吸い寄せられた。
 店の名は「アンティーク」。人影のない店内を覗き込むエイジ。アンティークのオーナー、橘とパティシエの小野は、厨房で店員募集を検討していた。橘は女性を募集したいのだが、小野は反対らしい。そして橘は、小野にはなぜか逆らえない。
 店内にエイジが入ると、橘が出迎えた。注文しようとするエイジに、橘はケーキの流れるようになめらかに説明を始める。とりあえず選んだケーキを食べたエイジは、その美味しさに大感激。手当たり次第に、他のケーキも食べ出した。あまりの美味しさに「誰が作ったのか?」と橘に詰め寄るエイジ。橘が示す厨房に、エイジは一目散に駆け込んだ。小野に対面したエイジは、弟子にして欲しいと頼み込む。橘が止めに入るが、エイジはもう勝手に決め込んでいる。小野もまんざらでもなさそう。橘は、エイジを従業員にすることには反対だが・・・。小野の訴えに屈してしまう。こうして、エイジは「アンティーク」で働くことになった。

<第2回> 「愛の井戸」
 野間篤史(小林すすむ)から情報を得た飯塚桃子(小雪)が「アンティーク」にやって来た。神田エイジ(滝沢秀明)の姿を探して店内を覗き込む桃子に、橘圭一郎(椎名桔平)が声をかける。と、そこにエイジが現れた。いきなり出現したエイジに驚く桃子は、客を装って店に入った。とりあえず、お茶とケーキを頼んだ桃子だが、美味しそうなケーキには手もつけず、気になるのはエイジの行動。島崎珠美(眞鍋かをり)を接客するエイジを桃子が眺めている。
 ショーケースを睨み付ける珠美と緊迫の対峙をするエイジと橘。その時、ようやくケーキを口にした桃子が思わず「おいしい!」と声を上げた。すると、ケースから桃子へと目を移した珠美の瞳から、一筋の涙が流れ落ちた。突然の出来事に動揺するエイジと橘、そして桃子。「いいんです。頑張ります、すいませんでした」と店を出ていく珠美と入れ違いに吉永正太(えなりかずき)が入ってくる。珠美の様子を気にする正太の問いは、エイジらに黙殺されてしまう。彼らにも何だかわからないのだ。小野裕介(藤木直人)のケーキをしきりに褒めるエイジに、桃子は「(ケーキを)つくる人になりたいんですか?」と質問。エイジは素直に「はい」と答えた。
 橘は桃子に疑問を持ち始める。そこに、ケーキ屋には似つかわしくない客、鬼塚トオル(長塚圭史)が波子(今井恵理)と店内へ。ケーキ屋を、ケーキを小バカにしたような態度をとるトオルにエイジは憤慨。反感を押さえ切れないまま接客するエイジを見ていたトオルが何かに気づいた。「エイジだろ?」とトオル。エイジとトオルは、かつてボクシングで対戦したことがあったのだ。するとトオルは「よりによってケーキ屋かよ」と、エイジをけなす。つかみかかろうとするエイジを橘が止めた。
 波子はトオルと話を始める。子供が出来たことを告げ、ボクシングを辞めて欲しいと頼む波子に、トオルは「え? 子供? 俺の?」と超うっかり発言。腹を立てた波子は、トオルに水をかけて出て行ってしまった。
 新聞社に帰った桃子は、野間にしばらくエイジを追ってみたいと頼む。その頃、エイジは所属していた神田ボクシングジムにいた。トオルの対戦ポスターを横目に、神田源一(牟田悌三)との思い出に浸るエイジ。ジムの前に、謎の男、小早川千影(阿部寛)がいることなど、エイジは知る良しもなかった。

<第3回> 「シトラスの誕生日」
 「アンティーク」に、橘圭一郎(椎名桔平)の祖母、白井富貴子(八千草薫)が小早川千影(阿部寛)を連れてやってきた。「おばあさま」と富貴子に呼びかけ、千影とは「若・・・」「影・・・」と妙な名前で呼び合う橘に、神田エイジ(滝沢秀明)と小野裕介(藤木直人)はア然。エイジの「ボンボン?」という質問にうなづく橘。富貴子によれば、千影と橘は幼い頃から従兄弟のように育ったらしい。さらに富貴子は、店に来たら千影が見張っていたので連れてきたと言う。千影は、橘の父親の依頼で彼を見張っていたのだ。
 ケーキを食べた富貴子は「とっても優しいケーキ」とほめる。エイジ、小野、橘もまんざらでもない。また来る、と言って店を出る富貴子たちを見送った橘は、見張りを辞めて欲しいと言うが、千影は「あんなことがあったんだから」と譲らない。逆に「なんでケーキ屋なんて?」と千影に質問されるが、橘は答えられない。その頃、車に乗って「アンティーク」を去りつつあった富貴子は、店にやってきた宗像克雄(辻萬長)とすれ違い、何かを思い出そうとしていた。「アンティーク」を巡る人々に新たな疑問が浮上。
 店内に戻った橘は、富貴子と話しても小野が平気だったことを思い出した。祖母を女として認めないのか? と問う橘に「そんなこと・・・」と小野。するとエイジは「何で女が苦手なんですか?」と、小野に超ストレートな質問を。小野が謎の微笑で答えていると、宗像が入ってきた。いつものように新作ケーキを注文する宗像。すると橘は、なぜかエイジに接客を任せ、オーナールームに去ってしまう。そんな橘を気にかける小野。
 ビビリながらなんとか無事、宗像の接客を終えたエイジの元に、橘が戻ってきた。橘の態度に疑問を感じていたエイジは、ストレートにその疑問をぶつける。だが、橘は答えない。そんな橘にエイジは、宗像の目が昔補導された時の警官の目に似ていて緊張する、と言う・・・すると、橘の表情が一瞬変わった。
 エイジの記事を書こうとする飯塚桃子(小雪)は今日も原稿をまとめようとしていたが、一向に文章が浮かばない。「アンティーク」へ取材に行きたいのだが、他の取材が入って出られないでいた。
 その「アンティーク」には困った常連、島崎珠美(眞鍋かをり)が来ていた。そして、吉永正太(えなりかずき)も・・・。いつもはケーキを食い入るように見つめるだけの珠美がエイジに「これを下さい」と口を開いた。「食べるの?」と言うエイジにうなずく珠美。厨房では小野が気にしている。エイジが運んだケーキを嬉しそうに食べようとする珠美、だが・・・。突然、悲しそうな表情になり「すみません」と席を立った。居合わせた面々の疑問を振り払うように店を出ようとする珠美。しかし、出口の寸前で倒れてしまう。目を覚ました珠美が去ると、橘は「モデルの卵だな」とエイジに話す。仕事のために絶食していたに違いないという。さらに橘は、勝手に珠美の経歴をもっともらしく予想する。
 その翌日、着飾った珠美が「アンティーク」に再訪。エイジや橘に「お願いがある」と言う。珠美は、高校生の時に太っているからという理由で振られ、以来ダイエットをして相手を見返そうと思ったいきさつを語り出す。橘の予想、見事にハズレ。「全然、太ってないじゃん」と励まそうとするエイジだが、珠美はわかってはいるけど、リバウンドが恐くてものが食べられなくなったと言うのだ。そして、珠美のお願いは、自分をフッた男にエイジと歩いているところを見せつけて、見返してやりたいというものだった。疑問を抱きながらも、珠美の願いを聞いてあげようと、エイジは嘘のデートに出かけるが・・・。


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