『天切り松』、大正、昭和、平成と盗人稼業に生きてきた男。しかし盗みはしても非道はせず、人間が人間らしく懸命に生きていた時代を走り抜けた一人の男。彼の生き様が現代に生きる人々の胸を打つ。
深夜の警察の雑居房に、ふらりとやってきた『天切り松』と呼ばれる老人、松蔵（中村勘三郎）。警察署の出入りも自由になるほど一目おかれた存在のようだ。松蔵がやってくると、雑居房にいる人間や警官までもが、松蔵の話を聞く為に集まってくる。
松蔵の話は、聞く人々の胸を打つのだ。それは人間が貧しくとも精一杯生きていた時代の思い出である。決して楽しい思い出ばかりではない、辛く悲しいことが多かったあの時代の。
『天切り松』はそんな時代を颯爽と駆け抜けていった夜盗。彼は盗られて困らぬ天下のお宝ばかりを狙い、弱いもの・貧しいものの味方となるという伝説の大泥棒だった。
天切り松の半生が現代の人々の胸に染み渡る。それは人間が人間として忘れてはいけないことだから…。