名門に生まれるということ…~市川海老蔵・宿命と苦悩の物語~
2007年10月14日(日)放送終了

放送内容詳細

日本の伝統芸能、歌舞伎の世界で今最も将来を期待されている男・市川海老蔵(29)。この男に対する世間のイメージは様々だ。「歌舞伎界一のモテ男」「やんちゃ」「わがまま」「生意気」…そして、マスコミを賑わすスキャンダルの数々。しかし、彼の人生は葛藤の連続だった。生まれながらにして歌舞伎界の伝統ある名を継ぐことを宿命づけられていた海老蔵は、幼い時からその運命に反発し続け、歌舞伎の世界から逃げだそうともしていたのだ。
そんな海老蔵が今、歌舞伎に目覚め、大いなる闘いに挑んでいる。「歌舞伎を世界に通用するアートにしたい!」そして、今カメラの前で初めて、その胸の内を語った。この番組だけに明かされた海老蔵の意外な素顔、本音、芸への思い、苦悩…。そして、パリ・オペラ座公演の舞台裏。話題の男、市川海老蔵とは一体何者なのか。長期取材で見えてきたそのすべてに迫る。

【内容】
■市川海老蔵、歌舞伎界の名門市川家。父、母、妹…その家族の風景
東京・目黒区にある瀟洒な邸宅。海老蔵は今も生まれ育ったこの家で家族と暮らしている。家族が揃ったある1日。海老蔵のこの日の昼食は、焼き魚と納豆。そして、オクラととろろを混ぜた海老蔵考案の「俺そば」。公演のある時は、和食中心の規則正しい食生活。食事の支度をする母・希実子さんの横で父・團十郎さんはそそくさと出かける準備をしている。自宅の1階には稽古場も。カメラは一家のくつろぎの場であり、仕事場でもある名門市川家の自宅を見続けた。

■「こだわり」? 「わがまま」? 感性の男・海老蔵のふるまい
大阪の舞台の合間に寄ったなじみの寿司屋。極上のエビをたいらげる海老蔵。長いつきあいの寿司屋の大将は、かつて醤油の種類を変え、その味の微妙な違いを見抜いた海老蔵の舌の敏感さに度肝を抜いた。そんな海老蔵とつきあう人々は、「市川海老蔵は感性の男」と口を揃えて言う。例えば、パリ・オペラ座公演のため、新たに作り直す扇子。「色合いが気に食わない」と親子以上に歳が違う職人に何度も「ダメ」を出し、手直しを納得させる。さらに、完成直前の歌舞伎の舞台セット。大勢の美術スタッフの前、海老蔵は「全面直し」を主張する。それは歌舞伎役者・海老蔵のプロとしての厳しさを表すと同時に、納得しないものは受け入れない歌舞伎界のプリンスのこだわりを示している。

■父・市川團十郎との「対立」、「衝突」
学究肌の父・團十郎。そして感性の男・海老蔵。この親子はパリ・オペラ座公演で共演する。自宅で行われた2人の稽古。その中で2人の間に厳しい口論や意見の対立が起きた。伝統を受け継ぎながら芸を洗練させようとする團十郎。しがらみにとらわれず、もっと歌舞伎を知らないパリの観客にもアピールしたい海老蔵。伝統やしきたりにとらわれないアイデアを提案、自らのやり方を曲げない海老蔵に、ついに父の怒りが爆発した! 「俺は、そのやり方を認めない!」最大の師匠でもあり、言わばライバルともいえる父との衝突。

■秘蔵V・再現ドラマ・インタビューで綴る…海老蔵の苦悩と重圧
(1)少年時代
幼くして父に問われ、歌舞伎役者になることを決意した海老蔵。稽古の連続と家柄や伝統は重くのしかかり、歌舞伎は「やらされている」ものに。学校でも鬱屈した日々が続いていた。
(2)青年時代
亡き祖父の姿に触発され、歌舞伎への意欲に目覚めるも、思うような演技ができない日々が延々と続く。「勧進帳」弁慶役を初めて演ずるとの前日。周囲の期待と重圧に押しつぶされ、裸で家を飛び出て街をさまよう。その後も連日、今日が最後と死ぬ気で役を演じていた。海老蔵は言い知れぬ苦悩と重圧から自らを解き放つため、奈良の霊峰で修行僧同然の荒行に挑んだ。
(3)父が白血病に
海老蔵襲名の直後、父・團十郎は白血病に倒れる。一度は復帰したものの再発。海老蔵は父の死を覚悟する。闘病中の父の病室をあえて訪ねず、海老蔵は襲名披露を完璧にこなし、その姿が病室に届くことを祈った。

■「言いたいことは言わせておく!」スキャンダルの裏で見えた素顔
稽古に励むさなか、世間の注目を集める芸能ニュースの主役はいつも海老蔵だった。「10代の時から勝手なことを書かれていた。でも、いちいちつべこべ言うのは男として小さい」追いかけるカメラを煙に巻きながら、そう語る海老蔵。しかし、パリ公演で口上をフランス語で述べるため、海老蔵を教える美人のフランス人教師。彼女を前にするだけでその目尻も自然と下がる。挙げ句の果てには、この美人教師にフランス語の口説き文句を教わる始末。ワイドショーや女性週刊誌の取材記者が海老蔵の周囲を取り囲むなか、偶然居合わせた番組の取材カメラが見た海老蔵の真の姿とは。

■パリで…。奇抜なファッションはまさに現代の「かぶき者」
パリの街を歩くのは作務衣と下駄。一流ホテルのスイートルームで羽織るのは真っ赤なガウン。この男は、パリで演ずるため江戸時代の「かぶき者」(=奇抜な身なりで街を練り歩く)になりきっていた。さらに高級ベッドは部屋から取り払われ、床に布団を敷く。すべてを海老蔵流に。そして闘いの地、パリ・オペラ座の下見へ。その屋上と神聖な稽古場、舞台に立つ。「日本の政治も経済も立ち行かなくなった時、残るのは歌舞伎だ!」そう語る海老蔵がパリに挑む。

■パリの青空の下、初めて語った海老蔵の胸の内
その日、上機嫌の海老蔵は青空が広がるバルコニーでシャンパンを片手に軽やかに語った。「市川家に生まれた俺はダメ!幸せすぎるから悩む。本当はもっととんがって生きたい。でもそれを皆に止められる。『とんがって生きるな』って。本当はずっと自分はだめな役者だと思ってきた。でも今は、何もかもひっくり返せる力を持っている。そう思いたい。無理かもしれないけど」。海老蔵の表情は、すべてをさらけ出し何かを伝えたいように見えた。海老蔵が語った迷いや苦悩、本音。

■プレッシャーのなか、海老蔵、女形に挑む!
バレエやオペラ以外で初めてパリ・オペラ座の舞台に上がる歌舞伎。しかし、海老蔵はその重圧とパリの乾燥した気候に体調を崩していた。40度に迫る高熱。注射で熱を下げる。最悪の健康状態。そんななか、この舞台で欧米で受けると言われる女形を演じる海老蔵。その見せ場は、姫が鬼と化す10分間の早変わり。娘役から鬼へ。自らが化粧をしながら舞台の袖で変わっていくその姿。果たして舞台は無事終えられたのか。カメラはその舞台裏を追う。
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出演者

市川海老蔵 ほか

スタッフ

■構成
 川上伸一

■チーフプロデューサー
 岡田宏記(フジテレビ)

■プロデューサー
 川尻健一

■チーフディレクター
 佐野岳士

■ディレクター
 佐々木伸之
 松村聖治

■制作協力
 東京ビデオセンター

■制作著作
 フジテレビ