鹿男あをによし
ストーリー 第二回
鹿になっちゃった

 小川孝信(玉木宏)は、突然、鹿に話しかけられたうえ、“運び番”に選ばれた、日本を救えなどと意味不明のことを言われ、慌てふためいてその場を立ち去る。

 下宿に戻ると、藤原道子(綾瀬はるか)福原重久(佐々木蔵之介)がいるいつもと変わらぬ朝の風景があったが、気分は晴れない。

 その後、普段より早く家を出た小川は、再び奈良公園へ出向き、鹿に話しかけてみるが、鹿は反応しない。安堵した小川は、ここ数日に経験した奇妙な出来事は、自分が寝ぼけていたか、夢だったと結論付け、自身を納得させようとする。

 学校では、自分のクラスの生徒・堀田イト(多部未華子)との問題があり気が重い。そんな小川を慰めるように、教頭・小治田史明(児玉清)が週末にゴルフの打ちっぱなしに行こうと誘う。気乗りはしないが断りきれず、小川は同行する約束をする。

 そんな折、小川は教師たちから奈良女学館と姉妹校である京都女学館、大阪女学館の運動部が対抗で行う“大和杯”と呼ばれる交流戦が近々あることを聞く。特に今年は、奈良女学館が会場になるため、いい成績を残さなければならないのだと、教師たちは意気込んでいる。

 後日、小治田とのゴルフの帰り道、小川が奈良公園でゴルフの素振り練習をしていると、「ここはゴルフ禁止だよ、先生」と、注意される。声のするほうを見ると、そこには二頭のオス鹿を従えたあのメス鹿がいた。驚いて声も出ない小川に鹿は、小川は近いうちに京都に行くことになり、そこである物を渡されると告げる。それを自分に届けるのが“運び番”の小川の役目だと言うのだ。小川に物を渡すのは狐の“使い番”に選ばれた人間の女性で、彼女から渡されるのは、人間が“サンカク”と呼ぶ物だと言う。

 荒唐無稽な鹿の話に、学校にいてもどこか上の空の小川。そんな小川に、またもや藤原が剣道部の顧問になってほしいと唐突な頼みをする。大和杯を前に、剣道経験のない自分が顧問では心許ないというのだ。見学のつもりで小川が剣道部を訪ねると、大和杯の団体戦に出場するというのに部員は3名しかおらず、そのうち2人は経験の浅い一年生だという。そんなところへ、敵状視察だと言って、京都女学館の剣道部顧問・長岡美栄(柴本幸)が現れる。藤原から長岡を紹介された小川は、話の流れから顧問を引き受けることに。

 後日、小治田から奈良、京都、大阪の3つの女学館の教師が集まる大和杯の親睦会が“このは”という料亭で開かれると発表される。料亭のパンフレットを受け取った小川は、それが京都にあること、“このは”を“狐のは”と書くことに愕然とする。そして、剣道部に伝わる大和杯の優勝プレートを、その形状から“サンカク”と呼んでいると聞いたときには、思わず大きな声を出してしまう。さらに、各校にある優勝プレートを開催校の奈良女学館に運ぶため、親睦会の当日、教師たちが持ってくるのだという。つまり、“サンカク”が、“使い番”によって“狐のは”に持ち込まれるのだ。 

藤原と“狐のは”にやってきた小川は、3校の剣道部顧問が集う席に案内される。そこには、長岡のほかに、大阪女学館の南場勇三(宅間孝行)もいる。長岡に好意を持つ南場は、小川に敵対心むき出しでなんとなく気まずい雰囲気に。そんな折、小治田が教師たちに優勝プレートを別室まで持ってくるようにと指示を出す。剣道部のプレートは、過去59回の大会すべてで優勝している京都女学館から回収される。つまり、長岡が持参しているはずだ。彼女からそれを渡されるかもしれないと思った小川は、ふたりになろうと長岡を散歩に誘うが、南場に阻止されてしまう。

仕方なくトイレに立った小川は、小治田がプレートを一時保管する別室の前を通る。そこにあるはずの“サンカク”を見たいと思い部屋に入ると、小治田が現れて、回収したプレートを自分の車まで運んでほしいと言う。結局、“サンカク”は、小川が見る前に小治田が奈良へ持ち帰ってしまった。鹿の話はやはりデタラメだった…と小川が思ったとき、長岡から声を掛けられ風呂敷に包まれた箱のような物を渡される。下宿に帰ってから開けてほしい、とどこか親しげに言う長岡に、小川は、緊張しながらもうれしい気分になる。

 親睦会がお開きとなり、酩酊状態の藤原を連れて下宿に戻った小川は、藤原を部屋に運び階下にやってくると玄関に黒い影を見る。不審に思い見ると、なんと鹿だった。“サンカク”を受け取りに来たという。鹿に急かされて小川が箱を開けると、そこには三角形をした生八つ橋が入っていた。それを見た鹿は、何者かが“サンカク”を奪ったのだと言い、目の前で宝を奪われた小川をのろまと責める。そんな鹿に小川が腹を立てると、勘違いするな、と鹿は小川を一喝。小川が鹿たちのために働いているのではなく、自分たちが小川ら人間のために働いているのだと言い、神無月(10月)中に“サンカク”を取り戻さないと、日本が滅びることになると言い切る。

 鹿は“サンカク”を奪ったのは、鼠だと言う。それを聞いた小川は、力なく苦笑する。鹿、狐、鼠と、昼間に見た剣道の胴に描かれていた3つの動物が、そのまま話に出てくるとは、自分はやはり神経衰弱なのだろうと。

 鹿は、そんな小川の顔に顔を近づけると、小川の鼻に自分の鼻を押し付け、“運び番”として失格だから印を付けたと言う。そして、印を見て気が変わったら会いに来いと言うと、鹿は帰っていく。

 翌朝、洗面をしようと鏡を覗いた小川は唖然とする。なんと、鏡のなかに鹿の顔をしたスエット姿の自分が立っていたのだ――。

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