アナルームニュース2001年10月22日号


阿部知代 映画女優。其れは夢幻なりか。

編集長代理【編集長代理】
わがアナウンス室、そしてアナマガ編集部にとって、どういうわけか、切っても切れないご縁があるのが、映画
現に、ウチの編集長はもんっっっのっすごい映画マニアだし。
(もはやこうなってくると、仕事なのか趣味なのか^^;;)
エンタメ系担当アナのみならず、CXアナの映画好きはつとに有名。

ところがCXアナと映画との縁は、実は、「見る」だけではなかった。
なんと、映画俳優デビューを果たしたアナウンサーがいるのだ!!
え?以前掲載された「伊藤アナハリウッドデビュー(笑)」のことだろって?

ちがーう。

このほど、あの!岩井俊二監督の最新作に出演を果たしたアナがいる
最も「アールドヴィーヴル」(無理に直訳すれば「人生芸術」)を実践するアナ。ニュースはもちろん、『テレビ美術館』などでおなじみ、といえば、
そう。阿部知代アナ

い、いつのまに・・・・。不肖、編集長代理、同僚なのに、知らなかった。
なので、届きたての体験手記を、読者諸氏と共に読んでみることにする。


2000年7月7日。
天気予報では夜から雨。
でも、そのせいか夕映えがいつになく美しかったのを覚えている。

実はその晩、お見合いだった。
ちゃっかり早めに会社を抜け出し、車を走らせていたとき。
携帯が鳴った
当時のアナウンス室長。わ、早抜けばれたか、やばい。
(もちろんハンズフリーです、運転中の携帯電話は止めましょう)

あのね、岩井俊二監督が、あなたに映画に出演してほしいと言って来ているのだけど」。
・・・。

ハザードを出し、車を停めて、携帯をしっかり持ちかえた。

さかのぼること、その2年前。
よく当たると評判の、占い師の家にいた。
私の現状をことごとく言い当てた彼女は、最後に言った。

再来年、すごくいいことがありますよ

結婚ですか、と思わず聞き返したのは言うまでもない。しかし。

「そうですね、結婚じゃないかもしれないけど、すごくいいことですよ」。
・・・。

とりあえず、2000年までは、捨てずに生きていこうと決めた。

こうして、一面識もなかった、でも大好きで作品はほとんど観ていた、岩井監督の映画に出演するという、「すごくいいこと」が、私のもとにやってきたのだ。


一番大変だったこと。
それは、演技より何より、「ロット巻き」―― 
美容院でパーマをかけるときの、あの、ロット巻き。

息子の不祥事を教師から聞かされる母(中央が阿部知代アナ)。この後、突然息子を殴り出すのだ・・・

田舎町のパーマ屋のおばちゃん(そういう役でした)たる者、心ここにあらずとも、手元だけは異様に早く馴れ馴れしく動いていなくてはならない。
機械のように。
小中学校、図工と美術が一番苦手だった私が、最も苦手とする、手先の器用さを問われる仕事。いやー、これは困った。

というわけで、特訓しました。
美容師の方々が練習する、マネキンの頭の部分だけみたいなのを借りて。

家に帰ると、リビングのテーブルで、その頭がにかっと待っている。
ホラーの日々。
テレビ観ながら、くるくるくるくる。毎晩毎晩、くるくるくるくる。
なかなか上手くならなくて、マネキン何度も殴ってました

とはいえ、出演はほんの数シーン。あっという間に、撮影は終了。

しかし、岩井監督の、いえ、映画というものに出るなんてもう二度と無い。
カメラを買い替え、自分の出番が終わったあとも、時間があるときは、ずうっと現場にいました。
 (編注:彼女の写真好きはつとに有名。腕前もセンスもプロ級!)

その映像から、繊細で、ナイ−ヴなアーティストだと思っていた岩井監督。
でも、近くにいると、大声で笑うし、自分のことを「俺」って言うし、(「僕」って、言いそうでしょ?)語弊を恐れずに言うと、「普通のお兄ちゃん」でした。ごめんなさい、監督。
もちろん、現場でのこだわりは、くらくらするくらい凄かったですけどね。


撮影から1年以上。
随分先だと思っていた公開日も、2001年10月6日、無事に終わりました。
(ちゃんと、舞台挨拶の司会もしたし。何せ、こちらが本業ですから)

そう。
終わっちゃった。
その寂しさ、そして感謝が、今の本音です。

私の人生の、「すごくいいこと」。
あれは、夢だったのかな。
そのくらい、不思議で素敵な、またと無い日々でした。

映画「リリイ・シュシュのすべて」
美しく、痛い痛い痛い14歳の物語です。
よかったら、ぜひ観てくださいね。

おまけ。
稲森いずみさんが出ているお家のシーン。
やはり出番も無いのに遊びに行っていて、そのお宅の奥様とお話しているうち、何とその方が、私の母のいとこであることが判明。これは、その方はもちろん、スタッフも誰一人知らなかったことで、監督もびっくり。
縁、だったのでしょうか。



編集長代理 【編集長代理のひとりごと】
あらま。思わず一気に読んじゃって、すっかりツッコミを忘れてしまった。
ま、でも、この手記は、ほぼ原文通りで味わっていただく方がいいかも。

それにしても、あのあべちよアナがひそかに、自宅でせっせと役作りとは。
それも、ロット巻きの特訓!(笑)
マネキンの生首相手に格闘するさまは、確かにシュールだぁ。
せっかくだから、そんなシーンも、愛用のカメラにおさめておいてほしかった。
そうすれば、アナマガの大スクープだったのに!(^^)

ね、編集長? ・・・・あれっ?またどっかに消えた。
・・・・『試写』。 とほほ。



編集長 【編集長のひとりごと】
 ん? 呼んだ? まあ“映画マニア”と編集長代理に言われては、黙っているワケにはいきませんな。ちょいと長くなりますんでヨロシクね。
 実は、阿部知代さんが「リリイ…」に出ていることを最初に発見したのはこの私なのです(自慢)。阿部さんはああいう人なので(ってちょっと意味深?)、自分の身に起こった事をやたら大騒ぎしません。よって、今回の出演も会社に許可を取った後は誰にも話さずに撮影に臨んでいたのです(これもまたかっこいいね。私にはできないなあ)。
 そして今年の初夏。なにも知らない私は、岩井俊二監督の新作を誰よりも早く見たい一心で、完成披露試写へ足を運んだのです。
 そのシーンはいきなり出てきました。美容院で手際よくロットを巻きながら(!)話をする主人公の母。「あーこの女優、あべちよさんに似てるなあ」…「ほんとそっくりだあ」…「えっ、まさか」…「マジだよ、こりゃ本人じゃん、なんで?」。まあ驚いたのなんの! とにかく信じられないくらい自然な演技と、そこらの女優を吹きとばすがごとくの存在感。ただものじゃないと思いました(いままでもそう思ってたけどさ)。阿部さんは独身です。しかし、主役の母であり、妊婦であり、夫以外に男がいるという複雑な役を見事に演じきってるんですもの。人生経験が豊富なんでしょうか\(^^ゞ。実は、見ながらやっぱり信じられず、エンドクレジットでもう一度、 出演者として阿部さんの名前が出てくるか確認したほどでした。
 そして「リリイ…」は本当に衝撃的な作品です。十四歳の少年少女は、何を思い生きているのか? 岩井監督は独自の感性で鋭く“今”をすくい取り、強烈な物語を作り上げました。いじめ、援助交際、暴行、自殺…彼らを取り巻く様々な“負の環境”のなかで、インターネットの(匿名)世界の中でのみ素直でいられる子供たちの姿を、 監督は現世界とネット界を交差させることで劇的に描いています。そして、劇中に登場する架空の歌姫、リリイの歌声にのみ癒しを求める子供たち。その心模様は孤独そのもの…。
 この作品は、多くの人間が参加したインターネット掲示板の書き込みで作られた 「ネット小説」を基にして、監督が脚本を書いただけあって、大人達が見ていていられないほどの痛々しい現実が描かれているのです。
 しかも、見ている我々までもがネット界に参加しているかのようなハイセンスな編集。いま、ネットでこのアナウンスマガジンを読んでいるあなたなら、きっと何かを感じるはずです。ただ、劇場で見るときは、後ろの方に座る事をお勧めします。そういう風に見る作品なのです。見ればわかる (*^-^*)ゞ 必見。




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