clamp talk : 工藤静香
kahala and shizuka in talking.
talk
華原:
色は、静香さんは、どういう色が好きですか?
工藤:
私は紫が好き。
華原:
紫ですか。
工藤:
まあ、基本的には紫。だから、小学生の頃に、女の子がよくモヘアのフカフカの手袋してた人?
華原:
…………?
工藤:
みんなね、つながってる手袋をしてたのね。私はでも、それが苦手で、軍手。
華原:
軍手? 静香さんのイメージと軍手っていうのはなんか。
工藤:
でもね、軍手をしてたのね。それでどうしても紫色の軍手が欲しかったの。でも、紫色っていうのがそのつながってる手袋にはなかったのよ。で、探し当てたのが、小学生の時に探し当てたのが軍手だったの。それでね、小学生の時、その軍手を付けて学校に行ったら、「それは不良の色だからやめなさい」って先生に怒られた記憶だけある。
華原:
不良ですか。
工藤:
うん。怒られちゃったの。
華原:
怒られたんですか。紫っていう色は、私は、静香さん色に対しては本当に素晴しい才能の持ち主だと思うんですけれども、紫っていう色は、どんなイメージなんですか?
工藤:
うーん? そうだな、なんかとってもね、でも紫が好きになったきっかけはね、幼 稚園の時に公園の砂場の上に藤棚があったのね。で、藤の花がバッと咲いていたの。
華原:
花ですか。
工藤:
うん、紫色の。あれがね、すごく綺麗で。それが見たくて砂場に行ってたのね、幼稚園の時に。
華原:
あ、そうなんですか。素敵ですね。
工藤:
だから、そこから紫が好きになったんだけど。でも、紫って時にはすごく気品のある色にも感じる時もあるし、とっても淋しく感じる時もあるし。なんか、あんまり自然の中で見れないような気がするのね。だから、例えば青空とかってすぐ見えたりするでしょ。なんか微妙に夕焼けでも雲の色によって、なんか反射によってたまに紫とか見れるけれども、なかなか見れないからかえって惹かれるのかもしれないけど。
華原:
私は色はぜんぜんわからないんですけど、明け方の色ってあるじゃないですか。なんか私は重なって見えるような、オレンジとか水色とか、なんかそういうのがいっぱい重なって見えるんですけれども、それは普通ですか?
工藤:
私もそう思う。
華原:
あの明け方のそらの色っていうのは、すごく好きなんですけども静香さんはどうですか?
工藤:
私も大好き。一番いい時間だよね。いちばん落ち着く時間。
華原:
落ち着く時間?
工藤:
なんか誰も起きてないような気がしちゃって。自分しか起きてなしいような気になるのね。そういう時に黙って窓とか明けて外見てると気持がいいよね。
華原:
私も見てます。
工藤:
見てる? 朝方寝る人?
華原:
そうですね。朝がなんか好き。
工藤:
そうだね。私も。
華原:
朝の色って本当にわかんないんですけど、朝帰ってくることがあって、お仕事で。それでベランダに出て空を見上げるのがすごく好きで。
工藤:
まだなんか、なにも息をしてない感じがするからね。街っていうか全部が。
華原:
なんか静かになってるっていうか。
工藤:
なんかかぶさってるような気もするしね、膜みたいなのが。気持いいよね。
華原:
うん。すごくそれはそう思うんですけれども、私は大丈夫かな?
工藤:
いや、華原さんがおかしかったら私もおかしいと思う。大丈夫。
華原:
大丈夫ですか。でも、本当に素晴しい絵を見ますね。
工藤:
そうかなぁ?
華原:
毎年、毎年、入賞されて。やっぱり絵を描く時っていうのは、どんな気持になった時に絵を描かれるんですか?
工藤:
うーん? あの、筆を持たない日っていうのがあんまりない、逆にいうと。筆を持 つのがもう日課になっているのね。だから、仕事で遅く帰って、次の日が早くて寝なきゃいけなくても、どうしても5分でもいいから筆を持つようにしたのね。そしたら、それが自然とそうでなくちゃならなくなってきたのね、自分で。だから、どういう時に描きたいとかっていうよりは、自然に筆を持ってしまう感じかな。でも、逆にいうと描けない時もあるのね。だから、自然に筆を持っても、絵を描いてて次の色が。あのね、パレットに20種類ぐらい………、もっとだな、30〜40種類ぐらいの色を出しとくのね。それで描いてて次の色を迷った時っていうのは、ぜんぜん描けない時なの。だから、普通に絵を描いてる時っていうのは、もうパッと見ただけで次の色が全部筆にのってくるのよ。なんか自分がつけるんじゃなくて、のってくる感じがするのね。
華原:
のってくるんですね。
工藤:
でもなんか、描けない時っていうのはぜんぜん描けない。
華原:
一つの作品といえばいいんですか?
工藤:
絵でいいよ。
華原:
絵で。絵ができ上がるまでにはどれぐらいの時間とかかかるんですか?
工藤:
あのね、絵の大きさにもよるんだけけども、毎年その二科展っていう賞に出してるやつは、だいたいが100号を1点と50号を2点出してるのるね。100号っていうのはね、私の手を広げて横にちょうど持てるぐらい。で、高さが私のあごぐらいの大きさなの。
華原:
大きいですね。
工藤:
けっこう大きい。それで、それと50号っていうのを2点描き上げるのは、えぇと、 だいたい8ヶ月とかかかってしまうかな。
華原:
あの、お仕事もすごく忙しくて、そのなかでああいう。私が見た絵っていうのは、女の人の絵で。すごいなんて言うんですか? 色彩溢れてるっていえばいいんですかね? 私、色まったくわかんないんですよ、そういうの。聞きたくて聞きたくてしょうがないんですけど。
工藤:
そんなことない。
華原:
その絵を見て、こういう絵はどれぐらいかかっって、どういう気持ち、精神とかもいろいろあるじゃないですか。
工藤:
うん。でも、あるみたい。なんか自分では気が付かないんだけど、その時によって使う色がだいたい暗めだったり明るめだったりするみたい。なんかえぇと、ロスにいる時にも、ロスにちょっと行ったり来たりしてた時があったんだけども。
華原:
あ、そうなんですか。
工藤:
その時はロスでも絵を描いてたのね。でも、その時はほとんどローアンバーっていうちょっと暗めの色があるの。
華原:
ローアンバー?
工藤:
うん。ローアンバーっていうね、あの、茶色と藍色を混ぜたような。
華原:
藍色。
工藤:
うん、混ぜたような色があるのね。そういう暗めな絵ばっかり描いてたり。時には黄色ってあんまり好きじゃなかったんだけど、最近すごくなんか黄色が好きになってきたのね。
華原:
黄色ですか。
工藤:
そう思ったらやっぱり、自分が描く女性に黄色の洋服を着せてみたり。やっぱりなんかあるみたい。出ちゃうみたいだね。
華原:
静さんにとって絵は、自分を表現するものの一つでもありますか?
工藤:
うん、あると思います。
華原:
なんかすごく伝わってくるものは、私はなんかあるんですけれども。
工藤:
良かった。なんかでもね、二科展っていうのは、いつも毎年プレッシャーで。今年出して、もし受かれば8年連続っていうことになるんだけど。
華原:
7年連続ずっとですよね。今年も必ず。
工藤:
そうしたいんですけど。
華原:
頑張って下さい。
工藤:
でも、なんか常にね、描くたびに全てそうなんだけど、私って物事を始める時とか、何か判断する時っていうのは「こうなるだろうな」って考えるでしょ。例えば「きっと絵を描いて、二科展に入選して、8年連続になるだろう」って考えるよりは、私はいちばん最悪のことから始めるのね、いつも考え始めるの。だから、次に何か新しい仕事を始める時も、いちばん最悪のことから考え始める人なのね。だから、なんかいつも危機感でいっぱいになっちゃう。二科展に出す時とか。
華原:
ドキドキするんですか?
工藤:
うん、ドキドキする。
華原:
ドキドキしながら絵を描くんですか?
工藤:
うーん? 絵を描く時は何も。
華原:
何も?
工藤:
うん。絵のことだけ考えてる。絵もコロコロ変わっていくからね。だから、出品する時だよね。
華原:
それがすごく緊張感。
工藤:
うん。でもまあ、落ちたら落ちたで、また同じような絵でまた来年挑戦しようって思うけど。
華原:
でも、7年連続で素晴しいですよね。それで歌も歌えて。何でもこなせてる女性っ ていうイメージ。私はそう思うんですけれども。
華原:
いえいえ、そんな「ありがとうございます」なんて。私がありがとうございます。
あと、静香さんて美しいっていうイメージもあるんですよ、私にとって。
工藤:
どうかなぁ?
華原:
声のビブラートのかけ方とかすごく私は美しいなぁと思います。ああいうビブラートのかけ方っていうのは、自然に生まれてくるものですか?
工藤:
うーん? 遠回りは、私はすごく遠回りをしたと思う。あの、何回もヴォーカルトレーニングとか最初から通えばいいんだけども、行かなかったのね、ぜんぜん。なんか自分で何か考えて進めることは好きなんだけど、ジグソーパズルとかそういうのが大嫌いなのね。
華原:
ああ、パズル。
工藤:
最初から出来るって決まるじゃない、ジグソーパズルって。だから、それに向かって何かやるのが大嫌いなの。創造できないものを仕上げることが大嫌いなのね。最初にね、おニャン子クラブの時かな? 何かに先生に言われた言葉がきっと嫌でヴォーカルトレーニングをやらなかったんだと思うんだけど。「今これをやると、こういう声になる」っていうことをバンッて言われたのね。だから、まだその時はまだ10代だからぜんぜん柔軟性とか何もなくて、キッチリ固まってるでしょ。自分のことだけで精一杯だったから。だからそれでね、ヴォーカルトレーニングをやめちゃったと思うんだけど。なんかね、遠回りをし過ぎちゃったっていうか。だから、コンサートの時とかも喉を壊して壊して。だんだん声質も変わってきたし。だから、どうすれば高い音が出るのか、なんか自分で自然に痛めにがらやってきた感じがする。とても乱暴だったと思う。だから、自分の力以上に声を出してしまうから、結局、毛細血管が切れて血が出てしまうし。けっこういっぱいそういうことをしてしまったからね。普通に出す声は、やっぱり前に比べると喋る声は低くなったかな。歌のほうは両方、上も下も広がったけれども。でも、やってる? ヴォーカルトレーニングとか。
華原:
私はデビューをした当時は2回だけ行きました。2回だけヴォーカルトレーニングに行ったんですけど。2回か3回かわからないんですけど。その先生の、先生がいるわけじゃないですか。その先生の声になっちゃうと思って、すごく恐かったんですよ、そこに行くのが。だから私は逃げました。
工藤:
なんかでもわかる、恐いっていうのは。
華原:
なんか自分は自分のスタイルが持ちたくて。だから教えてもらうんじゃなくて、自分で声は探し出すものなのかなっていうふうに思っちゃったんですよ。
工藤:
でもなんか、えぇと、いつぐらいかな? あのね、パッと変わった時があったと思ったの、私。テレビとかで見せていただいてた時に、「すごい高音が伸びるようになった」と思った時があったのね。
華原:
あの、番組で私のことを「彼女はすごく努力をしてる」っていうふうに褒めていただいて。
工藤:
見たの?
華原:
ありがとうございました。
工藤:
いえいえ。本当にそう思ったの。なんかなんて言うのかな? パンッて抜ける瞬間 っていうのが、自分でも「あ、声が出るようになった」って感じられる時と感じられない時があると思うけど、「きっと彼女は、華原さんは感じてるんだろうな、今」って私は思ったのね。それほどなんか声がね、パンって抜けるように聞こえたのね。だから、すごい自分で努力してるんだろうなって思った。
華原:
ありがとうございます。
工藤:
すごい。
華原:
努力は努力のみで頑張ってやっているんですけれども。
工藤:
そうだよね。
華原:
でも、あの、やっぱり精神的な問題とかそういうところで。高い声を出す時に限って何かを考えちゃうと、それが出なかったりする時があって。そういう時は静香さんはありますか?
工藤:
うーん?
華原:
声を出している時に、他のことがフッと邪魔をする時ってないですか?
工藤:
あるね。あと、「出なかったらどしよう?」とか、そういう自分に負けちゃう時は 出ない。
華原:
そうですよね。
工藤:
同じ。
華原:
同じですか。良かったぁ。
工藤:
常にね、やっぱり私はどっちかっていうとそう見えないほうだから。ぜんぜん緊張してないっていうふうにずっと言われてきてたから。でも、それはそれで私はすごく好きなのね。
華原:
すごく堂々と。
工藤:
そういうふうに見せたいなって、もうずっと10代の時からそう思ってきたから。でも、なんかあのね、どうしてもやっぱり本番前とかは、足がちょっと震えるし。緊張したら緊張した分だけ声帯が締まってしまうし、声は出なくなるし。やっぱり緊張すると喉っていうのは締まるまのですか?
工藤:
詰まる。ぜんぜん詰まっちゃう。ダメだね。震えちゃうし。
華原:
そうですよね。私は、そこを今さまよってます。先輩だからいろいろそういう話しを聞きたくて。
工藤:
でもなんかね、緊張よりも……。私もでもね、今でもね、「自分がこの歌をすごく好きで歌ってる」って思うでしょ。本当に実際そうなわけだし。で、「この歌を一人でも多くの人に聴いて欲しいな」って思って。やっぱりすごい自分の歌って可愛いじゃない。
華原:
はい。
工藤:
で、なんか、この歌が持ってる魅力よりも、自分の声がのった時にもっとよく聴いてもらいたいなっていう気持ちよりも、緊張したのが勝っちゃう時ってやっぱりあるから。だから、私は「この歌が一人でも多くの人の耳に届けばいいな」って思って、「こんなにいい歌なんだから」って思って歌ってる。そういうことをね、一生懸命考えると、あんまり緊張したりするほうに頭が、意識がいかないで済むから少しはね。少しは。でも、緊張することは緊張する。でも「緊張しちゃうな」って思うとガッて緊張するから。「大丈夫だよ」って言い聞かせたりすると、緊張は少しだけほぐれるかもしれない。
華原:
すごいですね。コンサートとかも何回もやりこなせてきていらっしゃるじゃないですか。コンサートっていうのは、静香さんにとってどういうものですか?
工藤:
うーん? 私は、だけれども、えぇと、歌手として必要なものだと思う。
華原:
必要ですか。
工藤:
うん、絶対に。やっぱり普段ね、自分のCDを買って聴いてる人たちに、やっぱりCDっていうのはもちろん聴いてもらってるわけだけれども、生の声っていうのはやっぱり聴いてもらいたいし。ずっと生で、向こうは大勢で自分は一人。だけれどもその中での空間で、キャッチボールってけっこうあると思うのね。だから、それはすごい、一番って言っていいほど大切にしてるかな。
華原:
すごいですね。
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