clamp talk :Miki Nakatani
kahala and miki in talking.
talk
華原:
坂本龍一さんが、すごくファンで、大好きでっていう話は有名な話なんですけど、どういうところが魅力なんですか?
中谷:
全部ですね。
華原:
全部?
中谷:
坂本さんの音楽、まず音楽をすごく好きになって。で、なんだろう? ファンになったきっかけは、まず音楽ですごくファンになりまして。まあ、その後、坂本さんが出した本とか、あと、まあ雑誌のインタビューとか見て、なんかすごく。新しいものに常に敏感で、しかも引き出しがたくさんある方だなぁと思ったので、大ファンになりました。
華原:
そうですか。あの、坂本龍一さんの音楽っていうのは、すごくシンセの音を使うじゃないですか。
中谷:
はい。
華原:
なんて言ったらいいのかな? 朋ちゃんなりに言うと、ニューヨークの音をすごく感じるような音だと思うんですよ。ああいうのすごく好きですか? なんか、遠くにいって近づいてくるような。なんかこういう、わかんないですか?
中谷:
うん、そうですね。坂本さんの音すごく不思議なのは、機械の音がたくさん、シンセの音がたくさん入ってるのに、なんか冷たくないというか。逆に、オーケストラの時なんかは、オーケストラで演奏する時なんかは、生の音なのにどこかこう冷たいというか。なんかバランスが、新しいものと古いものとのバランスとか、暖かいものと冷たいもののバランスが好きなんですよね。
華原:
はあ。
中谷:
困ったな。すいません。
華原:
いいえ。あの、キーがすごく高いですよね。音域が広いですよね。あの、中谷美紀さんが出している音域っていうものが、私はCDを聴いてすごく広いなって思ったんです。
中谷:
そうですか? いやぁ。
華原:
こっちが例えばキーが低い音とするじゃないですか、こっちが高い音だとすると、こっちにもいけるし、こっちにもいけるし。
中谷:
それが大変なんですよ。
華原:
ええっ!?
中谷:
高いところは苦手で、本当に大変なんですよ。
華原:
高いところ苦手ですか?
中谷:
苦手です。朋ちゃんは?
華原:
私は……。
中谷:
ばっちりですか?
華原:
そんなことはないんですけど。でも、「華原朋美はキーが高いところがすごく得意だ」っていうのは、それは華原朋美の自信に持っているところだと信じてるんですけれど、すごくそういうところは信じてるんんだけど。中谷美紀さんは、どういうところをすごく主張したりとかしてみたいですか?
中谷:
歌があんまり得意ではないので、どっちかっていうと歌っていうものに、なんでしょうね? どうも苦手意識が最初はすごくあったんですけど。でも、うん、そうですねぇ……。
華原:
あの、資料に「歌はもともとやりたくなかった」っていうふうに書いてあったんですけど、本当ですか?
中谷:
音楽は、聴くほうが好きだったんですよ。
華原:
ああ、聴くほう。
中谷:
音楽を自分でやるより聴くほうが好きだったんですけど。このあいだライブやりまして、それで歌うことが楽しくなりました。
華原:
最近、あの、歌うっていうことがすごく「いいな」っていうふうに思い始めてま すよね?
中谷:
はい。
華原:
それは、なんで私がわかったかっていうと、ライブっていうものをすごくやりたいっていうふうに私は思ってる時期なんですよ、今。
中谷:
ええ。
華原:
だから、そういうふうに「やりたいな」って思った時っていうのは、すごく歌が大切に思えたりとか、自分が伝えることが大切に思えたりとか、そういう時期だと私は思うんですけど。
中谷:
うーん?
華原:
それは、歌手として前向きな考えですよね。
中谷:
そうですね。今までは、「とてもとても、人の前で歌うなんて恥ずかしくて」っ ていうふうに思ってたんですけど。
華原:
普段は、こういうスカートとかはかないですよね。
中谷:
あんまり、そうですね。はく時と、でも、うん、だらしない恰好が多いですね。
華原:
だらしない恰好っていうのは、どんな恰好ですか?
中谷:
普段ですか? 最近はジーパンをよくはいてます。楽チンなので。
華原:
あ、私もそう思ってました。
中谷:
楽なんですよね、やっぱり。朋ちゃんはどんな感じなんですか?
華原:
私ですか? 私は最近外に出てないからわからないんですけど。
中谷:
おうちにずっといるんですか?
華原:
うん。ずっといるんだけど、外に出ると、それでなんか違う方向に行っちゃうよ うな気がして、すごく怯えてる時期。
中谷:
ふーん。あ、なるほど。
華原:
だから、外に出るともう怖くて怖くてしょうがない時期。だから、家で。
中谷:
一人で。
華原:
いちゃおうって思っちゃうんですよ。だけどそれもそれで、なんか悪い方向かなって今思い出してる。
中谷:
いや、でも時間がそれを解決してくれるんじゃないんでしょうか。出ない時、私もありますよ。何日も出ない時。
華原:
あります?
中谷:
うん。
華原:
最近ね、最近台風が来たじゃないですか。その時も一歩も外に出てなくて。で、台風が来て、渋谷のセンター街っていう看板が前に倒れてるっていうのも知らなくて。そういう話を聞いて、「あ、台風来たんだ。あ、センター街の看板が取れちゃったんだ」みたいな。周りから聞くことが多くて。前は自分からいろんなことを見たりとかしてたんだけど。そういう時期ってないですか?
中谷:
あります。
華原:
あるんですよね、やっぱり。
中谷:
周期的にやってきますね、そういう時期は。うん。
華原:
そういう時っていうのは絶対いろいろ考えちゃって、前向きに気持ちがいかない時ってあるんですよ。そういう時っていうのは、どうやって自分を前向きにしたらいいのかなって、すごく不思議に思うんですけど、美紀さんだったらどういうふうにしてますか?
中谷:
うーん?
華原:
それでもう考えちゃって、思い込んじゃって、思い込む。「自分はもう絶対に外に出たりとか、一般の人と同じことしちゃいけないんだ」っていうふうになっちゃう時。
中谷:
旅に出る。
華原:
旅に出る?
中谷:
よくね、一人で旅に出かけるんです。
華原:
旅に出るっていうのは、外に?
中谷:
出ることですね。
華原:
ああ、外に出る。
中谷:
でも、誰にも会わない状況で、誰も連れて行かないで、荷物も最小限の荷物を持って旅に出ると、いろんなことがどうでもよく思えるというか。私は、どうも落ち込んだ時とか、そういう時には旅に出ます。
華原:
旅に出るんですか。
中谷:
はい。
華原:
電車に乗ってどっか行くんですか?
中谷:
電車? そうですね。新幹線に乗ったりとか飛行機に乗ったりとか。
華原:
誘って下さい。
中谷:
行きます?
華原:
はい。行きます。
中谷:
でも、忙しいんじゃないんですか?
華原:
いや、そんなことないです。
中谷:
お忙しそうだから。行きます?
華原:
行きます!!
中谷:
いいですか?
華原:
はい。
中谷:
スキューバダイビングできます?
華原:
あ、やったことないですよ。
中谷:
私も去年、初めてやって。
華原:
その顔は、良かったんですか。
中谷:
沖縄の那覇市から、空港から1時間ぐらい車で行ったところの、さらに船で渡った先に、船で15分程渡った先に、コマカ島っていう無人島があるんですよ。そこで体験ダイビングを初めてやったんですけど、嫌なこと忘れますよ。
華原:
嫌なことを忘れる?
中谷:
忘れちゃうんですよ。もう、「ああ、こんな世界があるんだったら、なんかもう、どうでもいいや」と思えちゃう。
華原:
そんなところがあるんですか? 潜るんですよね? あれ。スキューバダイビングって、私よく話を聞くんですけど、でも、自分が溺れて死んじゃったらどうしようって、そっちのほうが怖くて。
中谷:
あ、確かに。私もそれがすごく怖かったんですけど、なんか勢いついてやってみたら、ぜんぜん怖くなかった。
華原:
いろんなもの見えます? あれって、潜って。
中谷:
あのね、グラスキャットでしたっけ? 透明の熱帯魚。
華原:
熱帯魚?
中谷:
熱帯魚で透明。えさ食べても、食べて、体を通って行くのが見えるぐらい透明な透き通ったグラスキャットがいっぱいいたんですよ。あとね、ウツボとか。
華原:
ウツボってなんですか? 壺ですか?
中谷:
なんかね、なんだろう? タコみたいなの。タコじゃないんだけど、タコみたいな、なんですかね? あれは。ウツボ。
華原:
そういうの、あるんですね。
中谷:
ウツボとか、あと、サンゴもきれい。うん。
華原:
いいですね。仕事とか、ぜんぜん、あれですか? もう、精神的に忙しかったりとかしないんですか?
中谷:
今は、今ちょうどアルバムのレコーディングをしてるんですよ。だからわりと規則正しい生活ですね。
華原:
いちばん初めに出したアルバムが、あれですよね? 「食物連鎖」っていう。なんかすごい題名ですね。私はすごいなって思ったんですけど。ぜんぜん、あれですか? それは?
中谷:
あれは、坂本さんの提案で、私がつけたんじゃないんですけど。なんか、「食って食って食いまくるっていう意味だ」って坂本さんはおっしゃってたんですけど。
華原:
すごいですよね。
中谷:
すごいですよね。私は、なんか食物連鎖のピラミッドのなんだろう? 坂本さんをはじめとするいろんなアーティストの方たちに曲を提供して頂いて、そんなにすごい人達を実はピラミッドのいちばん下に据えて、図々しくも私がいちばんてっぺんに君臨する感じなのかな? っていう印象を受けたんですけど、食物連鎖だから。だけど、坂本さん曰く、「男も女も食って食って食いまくる中谷美紀」っていう。
華原:
あ、カッコいいね。
中谷:
でも、あんまりよく意味がわからなかったんですけど、そういうことらしいです。
華原:
うーん。 普段とか、どんな曲を聴いたりとかしてるんですか?
中谷:
曲ですか? 最近はなに聴いてるんだろう? 「カーマスートラ」ってインドの映画を観たんですよ。それがすごくよくて映画が本当に映像もきれいだったし、ストーリーも本当にきれいで、音楽がよかったんですよ。インドの「カーマスートラ」のサウンドトラックとか。あと、なんかでも、最近はアジアの音楽に惹かれてアジアものをいっぱい聴いてます。
華原:
そうですか。私は最近、自分の曲をもっともっとより一層聴くようになったんですけど、自分の曲って聴いたりします? 家で。
中谷:
最近は私も聴きます。最初はあんまり聴かなかったんですけど。不思議ですよね,でも。自分で自分の曲聴けるんだなと思ったらなんか嬉しかったです。
華原:
うん。
中谷:
仕事と思って聴けなくなっちゃうんじゃないかと思ったんですけど、そういうことないですか? なんか仕事、家に帰っても仕事っていう感じで聴きたくなくなっちゃったりとか。
華原:
私は、自分の歌声を、声を、もっともっと自分で好きになっていかないといけないんだなっていうふうに思っている時期なんで、聴いたりとかするんですけど。それを自分が歌っていることを、家に帰って歌ってることを確認するみたいな。そういう安心感みたいなの、ありますけど。
中谷:
そうなんですか。どっちで聴きますかっていうか、例えば、レコーディングしてもらってきたDATでもらいます? テープでもらいます?
華原:
両方もらいます。
中谷:
そういうものを、レコーディングしたものを聴いたりするのと、あと自分のCD聴くのと。
華原:
ああ、それ、不思議な境目ですよね、なんかね。DATで、テープで頂いて。で、それを聴くのと、あと出来上がったCDで聴くのっていうのは、なんかちょっと不思議な境目ですよね。
中谷:
なんか微妙に違うから、なんか。
華原:
それは、なんとなくありますよね、なんかね。
中谷:
ときどき下手なやつのほうを聴いたりします。
華原:
ああ。
中谷:
下手なやつのほうっていうか。
華原:
私、このあいだ荷物の整理をしてたんですよ。そしたらテープがいっぱい出てきて。で、「I'm proud」のテープが出てきたんですよ。で、いちばん初めに歌った「I'mproud」だったんですよ。曲もぜんぜん違うし、歌っているそのCD、「I'm proud」として出来上がってきたCDとは全く違う、違くて、すごいどきどきしました。それ、ありますよね、なんかね。
中谷:
1年ちょっとぶりですか? もっとですよね?
華原:
そう。
中谷:
聴いたんですよね。
華原:
ありがとうございます。
中谷:
へぇー。そうなんですか。
華原:
いちばん初めに買ったレコードっていうのはどんなCDですか?
中谷:
えっとね、私がいちばん初めに自分で買ったレコードは、光GENJIさんの「スターライト」っていうレコードなんですよ。
華原:
あ、そうなんですか?
中谷:
小学生だったんですけど、その時。
華原:
そうですね、私のほうが年上なんですよね。
中谷:
そうなんですよ。
華原:
ぜんぜんわかんなかった。
中谷:
ええ。
華原:
私、すごい年上かと思ったんですよ。私、今年23で、26とか、7ぐらいかなって思ってたんですけど、私よりもぜんぜん年下で。2個下ですよね? ぜんぜんそうは思わなかったんですけど。
中谷:
いや、でも21歳です。
華原:
21歳ですよね。
中谷:
はい。言ってしまった、なんか。
華原:
そうですよね。
中谷:
ここ、暗いから照れますね、なんか。暗いから照れるのかなんなのか、静かだか ら照れるんですかね?
華原:
朋ちゃんはもう、来る前から照れてますよ。
中谷:
私も照れてます、いちおう。
華原:
料理とかします?
中谷:
あ、気が向けばというか。食べることが好きなんですよ。すごい食いしん坊なんですね。もうね、1日3回しかご飯食べられないじゃないですか。私、朝昼晩と全部食べるんですけど、1日3回しか食べられない御飯の1回でも、なんか間に合わせで食べちゃったりすると、すごく嫌な気分になっちゃうんですよ。
華原:
1日3回。4回、ダメですか?
中谷:
4回食べるときもあります。仕事が夜遅くなって、夜食食べちゃったりとかします。
華原:
やっぱりそういう食べ物とかに気を使ったりします?
中谷:
そうですね。やっぱりお弁当とか多くなりますよね、仕事場で。でもヘタしたらそれを毎日、それを365日食べることになったら、果たして大丈夫なのかなとか。やっぱり不安なんですよね、身体が。だから多少は極力自分で、朝御飯は自分で作るとか。食べるときは、外食するときも野菜中心にしたりとかしてます。
華原:
すごい自覚のある人なんですね。自分を、自分の身体を大切にしようって思ってるとか。私は歌うことしか出来ないって考えちゃうと、自分の身体を大切にしようとか、そういうことを思わなくなっちゃう人なんですよ。だからそういうところでスタッフの人に頼ったりとかしちゃうところが、すごく目に見えてわかっちゃう。だから、そういうふうに食べることは1日3回できちんと決まりで、増えることは絶対べつにいいと思うんですよ。だけど、絶対に1日なんにも食べなかったりとか、そういうことが多いんですよね。
中谷:
もったいない。
華原:
もったいない?
中谷:
もったいない。あ、でも、どうだろう? 女の子だと多少は身体のこと、なんだろう? スタイル気になってダイエットとかそういうのはあれだけど。
華原:
そうね。私は、ダイエットとかしたことないんですけど、そういう思い込みみたいので自分が「あっ!」って気付いたときに鏡を見たら、すごいクマがこんなに出来てたりとか。ちょっとなんか、3日前より痩せてたりとかする時があるんですよ。そういう時は「あれっ?」って思うんだけど、そういうところはすごく自覚のある人なんですね。
中谷:
うん、そうですね。食べることに異常なほどの執着心があるっていうか、「おかしいんじゃないか?」って自分でも思うぐらい食べることに執着してるんですよね。
華原:
歌う時っていうのは食べないと声出ないですよね。
中谷:
そうですね。あんまり食べ過ぎちゃってもあれでしょうけど、でも食べると安定するっていうか。
華原:
口になにかしたりとかすると、体がすごく暖かくなったりとかするのがわかる。
中谷:
体が暖まるといいんですよね。
華原:
絶対に寒かったりとかは、良くないんですよね、歌ったりする時に。だから、テレビを見てる人とかは、絶対に暗い自分みたいのを、絶対見たいとは思わないじゃないですか。楽しもうと思ってテレビを見てるわけだから、そんな時に自分が、自分の思い込みで悩んじゃったりとかしてるところを、もう目に見えてわかっちゃったりするのが私のマイナスなところなんですよ。だけど、ぜんぜんそういうのないですよね。
中谷:
うん。嘘つきなのかも知れない。
華原:
いや、嘘つきじゃないですよ。
中谷:
嘘つきっていうか、なんだろう? そうですかねぇ?
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