MUSIC CLAMP
CLAMP TALK :奥居香
- 奥居:
- なんか、近ごろ銀行とかでお金おろしたことあります?
- 中居:
- キャッシュカードでですか?
- 奥居:
- ええ、キャッシングサービスっていうんですか?
- 中居:
- ええ、あります、あります。
- 奥居:
- あります? 自分で行って?
- 中居:
- え? 暗証番号、人になんか。
- 奥居:
- あ、そういうもんですか。男の子はそうなのかな? でも、「キャー!!」とか言われません? 銀行とかで。
- 中居:
- 言われないですよ。
- 奥居:
- あ、本当に?
- 中居:
- ええ。「中居さん、中居正広さん」「はい」って。
- 奥居:
- 本当に? そうですか。
- 中居:
- ドキッとしますけどもね。やっぱり入る時って、気付かれるとカッコ悪いじゃないですか。「SMAP銀行来てるよ、こいつ」って思われるのあれですから。いちおう帽子深めにかぶってちょっと下向いて。そうすると、「もしかして俺、怪しく思われてるのかな?」とか。
- 奥居:
- 銀行だけに。
- 中居:
- 銀行強盗と思われてたら嫌だなと思いながら。
- 奥居:
- そうですよね。
- 中居:
- でも、今までは?
- 奥居:
- 私はだからあの、恥ずかしいんですけど、あんまり。まあ、面倒臭かったっていうのもあるんですけど、ついでにメンバーが何人かマネージャーとかに「お金おろしてきて」とか言ってカード渡したりしてると「ああ、ついでに私も」とか言ってやってたから、久しく行ってなくて。そういうとこで私もなんか「ふむー」とか考えて、全部、説明はじからはじまで読んじゃったりとかしてね。そういうなんか、ごく一般的なことでけっこうね、楽しめたんですよね。「なるほど」みたいな。
- 中居:
- ああ、わかるような気がしますね。
- 奥居:
- 意外とそういうことって、こういう仕事してると多くないですか? なんか。
- 中居:
- そうですね。だからやっぱりツアーとか回ってね、何年てやってきてましたからね、そういういわゆる普通の生活のリズムっていうのはね。
- 奥居:
- そうそう。だから、なんかそういうところで「うわぁ」とか「面白い」とか、ちっちゃな感激みたいのがいっぱいあって。で、そんな時にやっぱり曲とかってフッと出てくるんですよね。
- 中居:
- あ、そうですか?
- 奥居:
- ぜんぜん作ろうと思ってなくても、いちばん心がプルプルっとした時に出てくるんでしょうね。で、なんとなくそういう時に思い付いたことを忘れないように五線紙とかにメモしといて。で、フッと気付いたら「ありゃ!? アルバム1枚出来ちゃうもーん」みたいな感じだったんですよ。
- 中居:
- そんなもんなんですかね、曲作るのって。今までは強制、強制っていっちゃおかしいですけど。
- 奥居:
- まあ、締切があってね。
- 中居:
- 期限があって、時間にも追われてっていう形だったでしょうけども。
- 奥居:
- そうなんですよ。だから、今までも私は比較的、宿題みたいに曲を書いたりするのが嫌だったんで、わりと年がら年中五線紙もって、特に外国行っちゃうなんていったら、もうチャンスとばかりに五線紙もっていって。で、なんかパッと思いつくと書いてたんですけど。でも、やっぱりだんだん締切まであと何日、みたいになってくると、「しまった。ここでは絶対書かなきゃな」みたいになっちゃうでしょ。だけど、今回は、そういう締切もなかったし。
- 中居:
- ぜんぜん変わりますね、本当に生活が。
- 奥居:
- もう、すごいなんか楽しかったですよね。
- 中居:
- 音楽に対する姿勢みたいなものも、やっぱり変わってくるわけですよね。
- 奥居:
- 「べつに今日書かなくったっていいんだもんね」みたいな気分になると、なんか余計書いちゃったりとかして。天の邪鬼なのかな? とか思ったんだけど。
- 中居:
- いや。本当もう解散後のね、解散後のここ一年ていうのが結婚して、また仕事の会社みたいのも変わって。この一年間で全てやっちゃったじゃないですけども。
- 奥居:
- そうですよね。
- 中居:
- 転機な、もう本当、転機じゃないですか。
- 奥居:
- ね。
- 中居:
- やっぱり気持ちはゼロからっていう気持ちが強いですか?
- 奥居:
- そうですね。うん、やっぱりゼロからですね。気分もやっぱり、一回リセットしたから、オフにしたからね、なんか新しいっていうか、ゼロからの気分は大きいですよ。
- 中居:
- いや、でもね、僕も今、解散してね、一人で何かやれって言われても、何やっていいかわかんないですし。
- 奥居:
- そうですよね。
- 中居:
- 1年間、充電するっていっても、充電は僕、1日あれば充分ですし。
- 奥居:
- 若い証拠ですよ。
- 中居:
- いやいや。そんな休みっていっても、2、3日あれば充分。1日寝ればいいかなと思
いますしね。またあの、結婚なさるとまた環境変わると思うんですよね。
- 奥居:
- 変わりますよね。
- 中居:
- 全部変わるじゃないですか。
- 奥居:
- 全部変わっちゃったんですよ。
- 中居:
- かえったら人がいるんですもんね。
- 奥居:
- しかも私、ずっと自宅にいたので、自分のことすら自分でやったことがなかったので、それもけっこう楽しかったです。さっきの銀行の話じゃないですけど、「洗濯ものって?」みたいな、なんかそういうとこもけっこうね、楽しかったですよ。「こういうの、みんな当り前に出来るのに、なんで私はできないのかな?」とか思いながら。
- 中居:
- それでまた、家庭とって言ったらおかしいですけども、まあ両立ってよく言うじゃないですか。曲作る時も今まではね、自分の時間があったから良かったものの、家に帰ったら、もう自分のこと以上にね、やっぱりね、旦那さんもいらっしゃいますし。
- 奥居:
- そうですね。
- 中居:
- いろいろやることも出てきて。
- 奥居:
- でもね、意外とそういうふうでもないですけどね。やっぱり自分の時間は自分の時間ていう考えなので、もちろんその全てを放棄して、例えば「家のことは一切しません」って言って音楽やってるわけじゃないんで。もちろん時間があれば、朝ちょっと洗い物してったりとか、洗濯物ピッて回して寝たりとか、いろんなことはしますけど。ただ、それもなんか気分転換にもなるし。あとは多分、私は今ここで音楽また始めちゃったっていうことは、もう一生やるんだと思うんですよね。なんかの理由があってやめない限り。だから、そう考えると「いや、ちょっと今、音楽やってるから、そういう一般生活みたいなことは出来ないのよね」って言ってられないし。また、そういうことをしながら音楽をやるっていうのも、せっかく女だし。なんかそれなりの、私なりの、女の子なりの音楽が作れるんじゃいかなと思ってるんで。その両立するとかなんとか考えたことはないですけど、出来る時にやって。でも、やっぱり音楽、レコーディングとか始まっちゃうとね、ちょっと音楽のことで頭がいっぱいになっちゃいますけど。
- 中居:
- ずっとやってくでしょうね、じゃあ。結婚ってやめる最高のきっかけだったりするじゃないですか。
- 奥居:
- そうですよね。
- 中居:
- まあ、最高のきっかけって言ったらちょっとね。
- 奥居:
- でも、一般的には根、結婚して引退っていうのはありがちなケースですよね。
- 中居:
- 多いパターンだったり。多分、ずっとやってくんでしょうね。
- 奥居:
- ね。だからもう、80とか70とかになってもやってると思うんですよ、今始めちゃったってことは。だから、いろいろ考え方も変わったし。今できることをやればいいかなって思って。50や60になっても出来ることは、50や60になってからやればいいっていう。だから、逆に頭柔らかくなっちゃったんじゃないかなって思いますけどね。
- 中居:
- なるほど。でも、この1年、転機が多かったんでね。転機というか、今まで経験ないことがどんどん巻き起こってますから。それであの、音楽の接し方っていうのも、5人でやってた、バンドを組んでた時の歌を作ってる時と、一人で作ってる時と、あと、他のアーティストの人にも贈ったりするじゃないですか。その3つって自分の中で、ちゃんと分けて作ってます?
- 奥居:
- あの、分けてっていうよりは、最終的には責任持ってやるので、奥居香の携わった仕事だってことで「よし! マル!!」っていうとこまではやりますけど、最初とっかかる時は、やっぱりちょっと違いますよね。バンドの時は5人で演奏してる様が浮かぶような感じとかもあって曲作ったりもしてましたけども、今はまったくそうじゃないし。あと、他の人に書く時は、その子のイメージとか、「この人がこういうこと歌ったらいいだろうな」とか「この子がこんなの歌ったら似合うだろうな」とか、そういうふうに考えるから、ぜんぜん違って面白いですよね。
- 中居:
- やっぱり変わります?
- 奥居:
- うん。でも、どっか音楽やってる奥居香っていうのは、一つ一本同じ線が通ってて、その中でいろいろなんだと思いますけどね。
- 中居:
- だって、他の人でも疎かにしちゃいけない、それはもちろんそうでしょうし。
- 奥居:
- だから、毎回ね、他のアーティストに曲書くと、「ああ、もったいなかった。自分で歌えばよかったよぉ!」って。
- 中居:
- やっぱりあります?
- 奥居:
- 毎回思うんですけど。でも、思わないといけないと思うんですよ。
- 中居:
- ああ、逆にね。
- 奥居:
- だってね、「あ、いいや、これ上げちゃっても」って失礼じゃないですか。だから、毎回「ああ、自分で歌えばよかった。もったいなかった」って思うと、「あ、良かった。私はちゃんと仕事をキチッとやったな」って自分で思うバロメーターなんですけど。
- 中居:
- なるほど。わかります、わかります。そうですよね。「ああ、これはべつにいいや」って思っちゃったら、相手方にも失礼ですし。
- 奥居:
- そうそう。だから、必ず毎回「ああ、もったいなっかたな」って思うような仕事が出来ればいいかなって。
- 中居:
- 奥居さんにとって。それぞれね、違うんですよ。音楽の好きになり方も違いますし。「私はこういうところ」「僕はこういうところ」ってあると思うんですけど。絶対なんか人となんかちょっと違う気もしなくもないんですけどね。逆にすごいオーソドックスなことなのかなとも思いますけども。
- 奥居:
- 私なんか、いちばん「私は音楽好きなんだな」って思う瞬間って、例えばスタジオとかでね、レコーディングのスタジオとかですごくある曲がみんなでやってて、自分のなかで考えてて「あ、予定よりもなんかカッコ良くなってきた、カッコ良くなってきた。そうそう、そう。カッコ良くなってきたよ」って、こういう時ってもう嬉しくて、もう倒れそうになっちゃうんですよ。もう焦っちゃって、なんかものとかこぼしちゃったりとか。もう、本当に耐えられないぐらい嬉しくなっちゃうんですよね。そういう気持ちが30にしてあったりとかね。あとはやっぱり歌ってる時に、いい歌を歌えたときに、たまんなく嬉しくなっちゃうんですよね。レコーディングとかでもライヴとかでも。「いやぁ、生きてて良かった」みたいなぐらい嬉しくなっちゃったりとか。あとやっぱり、なんかグダグダとかしてても、「なんかやろっか」とか言って、イントロ鳴るとやっぱりね、自然に身体がバッて音楽の身体になるし。
- 中居:
- その音楽、曲、作品を作っていく過程、行きさつがやっぱりいいんでしょうね。一個ずつ出来てゆくその過程に。
- 奥居:
- そうなんですよ。なんか雪ダルマ、雪が降って小さい丸いの作って、転がしていくうちに大きくなるじゃないですか。で、一個でかいの出来て、もう一個アタマのっけて、もうなんかわかんないけどバケツかぶす時には、「もう気絶しそう!!」みたいな「嬉しい!!」みたいなのはね、ありますね。
- 中居:
- なるほどね。そうですよね、いいものが出来た時の喜びっていうのは、もう忘れられないって言いますもんね、作る人っていうのは。
- 奥居:
- もうね、あれ一回味わっちゃうと、やっぱりやめられないですよ。
- 中居:
- また次にいいもの、いいものを。
- 奥居:
- そう。で、もっと嬉しい気持ちを味わいたいから。で、同じようなことやればいいのかっていうと、今度は同じことやっても自分が驚かないから。もうあれ以上嬉しい気持ちにはなれないんですよね。だから、この先どうやってその嬉しい気持ちとか、「もう楽しくて気絶しそう!」みたいな気持ちをキープするかと言ったら、やっぱり自分がいちばん驚くようなことをしなくちゃいけないと思うんですね。自分の曲とか自分の歌で、自分が驚いちゃうようなことを探してやっていかなきゃいけないなとは思っているんですけどね。
- 中居:
- 女の人で良かったですか。
- 奥居:
- 私はね、そう思いますけど。
- 中居:
- 僕は男で良かったなと思いますけどね。
- 奥居:
- それは良かったですね。逆じゃなくてね。だって、「女が良かったな」とか思いながら男で生きてるのはしんどいですからね。
- 中居:
- ええ、もう違う世界に行っちゃうでしょうね、そしたら。やっぱり女性と男性は違うんでしょうね。
- 奥居:
- きっとそうでしょうね。
- 中居:
- 子供生まれちゃったらどうします? これまた変わってきますよね。
- 奥居:
- そこがね、人生のじつは一番大きなポイントになるのではないかと私は想像しますけど。結婚してもね、まあいろいろ環境変わりますけど、さすがに子供できたらちょっと話が別だろうなと思うんで。
- 中居:
- 多分、作る詞とかも丸くなるかもしれないですね。
- 奥居:
- 変わっちゃうでしょうね。なんか、子供が、私、子供すごい好きなんですけど、他の友達とかで同じぐらいの子で子供いる子、いっぱいいるんですけど。たまに遊びに来て子供みてると、こういう存在が自分の子供だっていうふうにいたら、音楽はどうなるんだろう? ってやっぱり思いますよね。「この子を放っといて詞を書くだろうか? この子を放っといて曲を書くだろうか?」とか思っちゃうし。
- 中居:
- どっちをとれって言っても。
- 奥居:
- ね。
- 中居:
- ね。そういう選択ってすごい残酷な選択。
- 奥居:
- うん、すごい難しいでしょうね。でも、きっとね、私の勘だと、何となくウマいことやって音楽もやっていくんじゃないかなって思うし。子供が出来たりした時に、どんな歌を歌ってるかっていうのが、すごく自分でも楽しみだし。それって女の子にしかないですよね。
- 中居:
- その時に感じた、その時に思った、その時の奥居さんが描くんでしょうね。
- 奥居:
- そうなんですよ。なんかお腹が大きくなっちゃって。それも想像できないじゃないですか。でも、そこにもしも子供がいるとしたら、やっぱりそこに向かって歌を歌うだろうと思うんですよね。その時に何を歌うかっていうのがね。
- 中居:
- 自分でもやっぱり楽しみ?
- 奥居:
- うん。だから、その時歌ったのは、全部だから何かしら何でもいいから録音しといて、絶対にその後、作品として出したいと思うし。
- 中居:
- それでまた自分が驚いて「ああ、こんなのが出来た」って。
- 奥居:
- 「こんなの歌っちゃったよ」みたいなね。そういうのがきっと一生ワーッとか思いながら音楽やってくのが楽しいんだと思いますけどね。
- 中居:
- そうでしょうね。ずっとやってくんでしょうね。
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