MUSIC CLAMP

Vol.67

CLAMP TALK


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CLAMP TALK :仲井戸麗市



中居=中居正広
仲井戸=仲井戸麗市

仲井戸:
うん。それでほら、バンドの時はさ、清志郎も横にいるしさ、なんか4、5人で、みんなでワイワイやってる感じもあるじゃん。今、一人になったしね。あと、昔にね、もっと20年ぐらい前に出させてもらった時、自分がわけわかんなくて悪態ついたことがあんだよ。そういう自分も、もう嫌じゃない。そういうなんか独特の思いが残っちゃって。すごくだから、いろんな人に迷惑かけたの、昔。

中居:
どんなことしちゃったんですか?

仲井戸:
うん、なんか生番組だったのね。この放送局なんだけど。それで愛川欽也さんかなんかが司会のやつで。で、まあ、歌を一曲歌ったんだけど、その歌が自分であんまり歌いたくなかったのね。その歌ばっかその頃は歌わされてて、ちょっと世の中で評判で。で、嫌だったの。

中居:
まあ、あるテレビ局行ってもね、回りのスタッフ、番組がそれを要求しますよ、やっぱりね。

仲井戸:
そう。で、俺、二十歳ちょっと過ぎたぐらいだから、自分でそういうコントロールが出来なくて。「また、あれを歌わされるんだ」とかさ、パニクっちゃって。

中居:
自分が自ら歌うんじゃなくて、周りに歌わされてるっていう。

仲井戸:
うん、なんかね、思いがね。それなら行かなきゃよかったんだけど、まあ、スタッフが呼びに来たし。行って本番で「こんなとこじゃ歌えねぇ!!」とか、それふうなことやっちゃったの。

中居:
へぇー。

仲井戸:
で、周りはもうパァーッてなっちゃってさ、俺はもう半ベソかきながらフジテレビの廊下をさ、走って。「家に帰ろう」と思って帰ったの。そういうの2、3回やってんだよ。

中居:
2、3回あるんですか?

仲井戸:
だから、ちょっと自分でそういうのもう嫌だしさ、とかさ。

中居:
じゃあ、何ででしょうかね?やっぱりあの、テレビ、まあ音楽を作ってくうえで やっぱりCDを出す。昔で言うとレコード出す。レコードを出すと、やっぱりいろんな人に聞いていただきたい。

仲井戸:
そうだね。

中居:
やっぱり、売れればやっぱり嬉しいじゃないですか。

仲井戸:
それは間違いないよね。

中居:
チャートが上になったら、もちろん正直な話、やっぱり嬉しいじゃないですか。

仲井戸:
そうだよね。

中居:
そうするためには、やっぱりいろいろ手段がありますよね。

仲井戸:
そうだよね。

中居:
例えばCMスポット打つなり、雑誌の何かを飾る。その一つでもあるテレビの出演ていうものに対して、やっぱり。

仲井戸:
だからね、今はね、まあいい歳さらして来たし、でも、ものすごい葛藤があるの、でも。

中居:
はい。

仲井戸:
「自分がそこに、そういう場所に自分の場所として選んでいいのかな?」とかさ。「でも行けばいいじゃない」とかさ。「でも、おまえは行く必要ないんじゃないか?自分の場所であれば」とかさ。でも、今、中居君が言ったように、「一人でも多くの人に聴いてもらいたいから、やったほうがいいんじゃないか?」とかさ。それは今、葛藤があるんだけど。でも、今日はいろんな人に「中居君ていい青年だし」とかさ、そういうの聞いてさ、「じゃあ、行ってみようかな」って勇気を持って来るんだけど、当時っていうのはそれさえも思えなくて。

中居:
余裕が無かったんですね。

仲井戸:
もう、わけわかんないから。私生活も自分で一人暮し始めてたりしてさ。つまり、自分がどういう社会に立ってるかとか、わけわかんないわけ。それで、いきなりたくさんの人が前にいてさ、しかも周り大人の人ばっかりじゃない。「はい、君、歌って」とかやられちゃうと、パァーンとかなっちゃってたんじゃないかなと思う。だから、コントロールできなくてね。「これを一曲歌えば、きっと一人でも多くの人が自分の曲を聴いてくれる」なんていうことは、まさかその当時は思えてないから。

中居:
そうですよね。そういう余裕ですよね。だから、物事を冷静に考えたら、「自分は好きな音楽を、ただ歌いたい時に歌いたい」っていう気持ちだけだったんでしょうね。

仲井戸:
もしかしたらね。それできっと成り立ってた自分が、ある時そういう仕組の中にいてね、そこの自分がわかんなかったんだね、わけが。今もあんまりわかんないんだけど。まあ、少しは前よりわかるかもしれないけど。

中居:
でも、それは仲井戸さんの音楽に対するプライドの一つだったかもしれませんよね。

仲井戸:
そうかな。自分のなかでのね。だから、一つは「絶対、大人の言うこと聞くもんか」とかさ、そういう思いもあったし。

中居:
「大人に左右されたくない」って、そういう時期ありますよね。

仲井戸:
あるよね。それとまあ、同じなのかもしれないけど、ある種、極端な世界でもあるじゃない。まあ、同じだと思うんだけど、どの世界も。と、俺は思ってたから。「絶対こいつらに巻かれない」とかさ、自分のガチガチの思いがそういう極限のとこで爆発しちゃったんじゃないかな。と、思うんだけど。行かなきゃ良かったんだけどね、きっと。その打ち合わせの段階で「行かない」って言ってさ。そういうことも出来なかった。

中居:
もう整理がつかなかったんでしょうね。気持ちの整理が。

仲井戸:
だと思うんだけど。

中居:
まあそれから10年ないし20年経った今っていうのは、そのテレビだけに対してのことじゃないですけども、その物事に対する姿勢みたいなものって、やっぱり少しずつ変わってきました?

仲井戸:
うん。なんかね、恥ずかしいけど、こんな歳になって。40過ぎてぐらいからね、

中居:
へぇー。いや、でも、それっていうのは僕あの、仲井戸さんの20年前の云々かんぬんっていうのは、僕、実際に記憶にも、もちろん見てなかったんですけども。でもあの、仲井戸さんのお話を聞いて、今回、アルバムが出ましたよね、チャボバンドとしまして。その音楽がいろんなロックなんですけど、いろんなジャンルの歌が。

仲井戸:
あ、聴いてくれたんだ。

中居:
ええ、聴かせていただきましたけど、いろんなジャンルの歌を作る人なんだな、歌う人なんだなっていう感じがしたんですよ。でも、周りの人から言えば、これはちょっと衝撃的な感じがする。チャボさんをずっと見てきた人は、すごい衝撃的で、今までロックずっとやってきた流れで考えれば、あのアルバムっていうのは、何かしら心境の変化がね、すごいあったんじゃないかって疑問に思ってる方がね、何人かいらっしゃったんですよ。いろんなの入ってますよね。

仲井戸:
そうだね。ボサノバが入ってたりね。

中居:
ええ、レゲエも。

仲井戸:
科白があったり、レゲエもあってね。

中居:
ええ。なんか僕が踊れるような曲もありましたし。今までやってきた音楽と違ったテイストで今回作られたっていうのは?

仲井戸:
うん。あのね、まあ、自分ではそんなに大上段に構えてないんだけど。まあ、俺は基本的にはビートルズから始まって、まあストーンズとかあって、彼らにブルースとかR&B教わって、それが一番好きなんだけど、なんかボサノバみたいのも普通に好きでさ。なんかそういう、今、自然に出た感じがあのアルバムのいろんな曲調だったんだけど。ブルース好きだからね、曲調が全部ブルースで12曲入るとかね、少なくともまだそこまで行けなくて。いずれそういうのかね。で、それを自分なりに今やれたらいいかなっていう発想なんだけども。

中居:
昔からいろんなジャンルの曲っていうのは好きだったんですか?

仲井戸:
うん。なんかね、聴くのはすごく好き。で、自分で出来るのは自分でもわかるわけじゃない。「聴くには聴くけど、これは俺にはできねぇな」とか。「そんなラップみたいのできねぇしな」とかさ。そういう自分なりの、いろんな学んだやつで自分の音楽が作りたいんじゃないかなっていう発想なんだけど。

中居:
今回のって、初めて自分で今まで聴いてきたいろんなのを自分でやるようになったっていうのはね、どういう心境の変化なのかな?と思って。それはやっぱり年齢から?

仲井戸:
だから、まあその年齢のことずいぶん言ってるけど、年齢だけじゃなく、やっぱり音楽やってる時ってものすごい無邪気なとこもあるからね。初めて中学生の時ギター買った時の気持ちって残ってるじゃない。そういうとこもきっとあると思うんだけど。「あんな曲やりてえや」とか「あいつのああいう曲いいな。俺もああいう曲作ろう」とかさ。

中居:
ありますよね。

仲井戸:
そういうのあるよね。ダンスのウマい人を見たら「ああいうふうに踊りたいな」とか。

中居:
ありますよね、ジャンルは違ってもそういうの。なるほどね。

仲井戸:
そんな発想だと思うんだけど。

中居:
でも、音楽に目覚めた15、6から、いちばん最初は15、6?

仲井戸:
14か5ぐらいだよね、中2か中3。

中居:
それからもう20年30年あまり年月が経っているわけじゃないですか。それでアマチュアとして、プロとして、バンドを組んで、それからまた違うバンドを組んで、それからソロになって。やっぱりバンドでやっている時の音楽に対する姿勢と、一人の時にやってる音楽の姿勢って、やっぱりちょっと変わるんじゃないかなぁと思うんですけど、いかがですか?

仲井戸:
違うよね。

中居:
ぜんぜん違います?

仲井戸:
違うね。多分、一人の時と、みんなでやってる時、何かの違いきっと感じられてると思うんだけど。簡単に言うと自由っていうのをキーワードだとするとさ、やっぱり4人5人のバンドっていうのは、自由が少なくなるっていうか。4分の1とかさ。その代わり助けてもらうことがあるよね。自分が4分の1だったら、横の清志郎が助けてくれるとかさ。その代わり自由は4分の1。で、一人は圧倒的に自由だっていう実感持ったのね。それを目指したいから、バンド一回止めて一人になりたかっただけど。不安がすごかったんだけど、すごい自由だった、やっぱり。今。

中居:
その自由っていうのは、仲井戸さんにとってやっぱり一番メリットでした?

仲井戸:
ものすごいメリットだった。もう決定的にものすごい探してたものだったから。

中居:
へぇー。

仲井戸:
それはバンドにはいろいろな時期があるよね。すごくいいふうに回ってる時もあれば、不自由さを感じる時もあったりするわけじゃん。で、やっぱりバンドってうのは、俺はすごい死ぬほど好きだけど、一回、一人になんないとダメなのかなって思ったのね。

中居:
それはバンドでいる時っていうのは、やっぱり自分の好きな音楽を。

仲井戸:
それぞれ4人5人、みんなあるわけじゃない。ね。

中居:
趣味も趣向もやっぱり違うでしょうし。

仲井戸:
で、私生活も、プライベートも彼女が出来たりとかさ。だんだんね。そうするとやっぱり自由度が、バンドとしての自由度が薄れて。で、やっぱり極限になった時にちょっと難しいかなと思って、俺は一人になりたくて。あとほら、落合がさ、巨人にいれば成り立つんだけど、彼が巨人から追い出された時に、路頭に迷うんじゃ情けないと思うんだけど、彼は一匹狼でやるわけじゃない。そういう意味合いもあったかもしれないんだけど。

中居:
わかります、わかります。

仲井戸:
バンドっていう看板があれば俺は成り立つんだけど、一人で社会にポンッて出された時に、「どうしたらいいのかな?」ってなっちゃったらダセぇかな、とかさ。そういう思いは。

中居:
でも、ある意味では、先ほども言いましたけど、清志郎さんがいた時は、頼ることが出来ますよね。

仲井戸:
そうだよね。

中居:
で、喜びをみんなで分かち合える。で、悔しさもみんなで分かち合える。でも、一人になりますと、責任が全部、自分にくるわけですよね。

仲井戸:
そうだよね。

中居:
いろんな人からの評判も。

仲井戸:
全部だよね。

中居:
全部、自分にくる。その時のプレッシャーじゃないですが、なんか重荷になるようなことってありませんでした?

仲井戸:
死ぬほどあった。ある。まあ、一人になって全国回らせてもらったんだけど、40本ぐらいかな?やっぱり地獄見た日のが多かったしさ。でも、ステージ出て、ステージのあの瞬間のいい時は知ってるわけじゃない。それをやっぱりたくさん味わいたいから出ていったと思うんだけど。もう、それは毎日、ものすごい葛藤だった。日記つけてたんだ、俺。そのツアーの時。一人で回ってる時。「なんで俺こんなことやってんのかな?」とかさ「ちくしょー!!」とかさ。「なんで今日、あんな奴と会ったんだ」とかね。「なんで俺、ステージで客にあんなおべんちゃら使うんだ」とかさ。いちいちそんなこと書いたりしてさ、もう毎日そういう葛藤あった。

中居:
その時に「ああ、やっぱりバンドのほうが良かったな。一人になったのは間違いだったのか?」って?

仲井戸:
うん、揺れた。「ああ、横にメンバーいればな」とかね。最初のね、初めて一人のツアーの名古屋のステージだったんだけど、本番でさ、リハまでは良かったんだけど、本番で一人だけでポーンて音出した時さ、金縛りになっちゃってさ。もう半分なかではさ、泣きベソかいてんの。

中居:
え?なんでです?

仲井戸:
いや、「やんなきゃよかった」と思って。「失敗したぁ!!こんなことするんじゃなかった!!」って思って。その何秒間のあいだの葛藤なんだけどさ、もう客はいるわけじゃない。「やめりゃあよかった!!」って。

中居:
時間はどんどん過ぎていきますよね。

仲井戸:
そういうふうに、なんか葛藤あって。

中居:
リハーサルはでもちゃんと?

仲井戸:
うん、リハはね。「よし!今日から全国回るぞ!」みたいなさ、思ったんだけど、本番出てってさ、ポーンてやったら「うわぁぁ!!」ってなっちゃって。でも、つぶれるわけにいかないわけじゃない。そういう葛藤が日々あった。だんだん慣れたけどね、怖かった。

中居:
それはでもね、その時、自分がね、葛藤がある。まあ、簡単に言えば悩みに陥る時、バンドがいれば「俺こうなんだけれどもさ」って言えますけども。一人だったら自分で乗り越えて行かないと。

仲井戸:
そうだよね。酒飲んでもしょうがないしさ。まあ、少しは飲むけど、そういうことで解決できることでもないしね。カラオケを歌いに行くわけじゃないしさ。

中居:
そうですよね。そういうのは気持ちの発散とはまた違いますからね。

仲井戸:
違うよね、なんかね。

中居:
それじゃ逃げれないですもんね。

仲井戸:
逃げれないよね。自分と向き合うしかないみたいな。

中居:
それでもやっぱり、まあ場数じゃないですけども、ずっとやってくうちにやっぱり自分で。

仲井戸:
そうだね。

中居:
ギター一本でいろんな得ることが。でも、いちばん最初にギター持ったのは?

仲井戸:
14ぐらいかな?

中居:
いちばん最初の時の感触みたいのって覚えてます?

仲井戸:
覚えてるよ、すごく。

中居:
自分でお買いになったんですか?

仲井戸:
うん。あのね、銀座の某デパートでね、雑貨物バーゲンでさ、フライパンの横にかかってた。1480円かな?

中居:
当時の1480円ていうのは?

仲井戸:
でも安いよね。

中居:
安いほうですか。

仲井戸:
まあ、今のよりはずいぶんあれだけど。自分のお小遣いで買ってさ。もう抱えてさ。ボール紙のケースで街を走ってたの覚えてる。もう最高だった。

中居:
以前からずっと弾きたいと?

仲井戸:
うん。もうビートルズ出てからね。俺、長嶋さんになりたかったんだけどさ、野球選手に。

中居:
長嶋監督?

仲井戸:
そうそう、当時の背番号3番に憧れて。俺なんかの世代は、たくさん長嶋さんに 憧れる人が多くてね。で、ビートルズが64年ぐらいに出てきてさ、もう「あ、グローブよりギターだ!」みたいになって、ギターもずっと。俺、新宿の街をチョロチョロしてるような子だったから。毎日デパートに見張りに行ってさ「これを買うんだ!!」って。もう、買った時は最高だった。

中居:
嬉しかった。

仲井戸:
うん。もう抱えてバス亭まで走って。「おまえらと違うぞ!俺は」みたいな。
「ギター持ってんだ!!」て。

中居:
家帰って、やっぱりもうすぐ?

仲井戸:
もう。勉強ももちろんしないしさ。もう一生懸命。

中居:
でも、わかんないですよね?最初どういうふうに弾けばいいのか。

仲井戸:
うん。ビートルズ弾きたいんだけど、「ロックンロール」やりたいんだけど、教則本買ったら「サクラサクラ」って。「なんか違うな」なんて。でも嬉しかった。

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