TK MUSIC CLAMP
CLAMP TALK :サンプラザ中野
- 中野:
- でも、実際にね、それはさておき、大人だなと自覚したのは最近ですよ。
- 中居:
- 自覚?それは、仕事を通して、音楽を通して?
- 中野:
- そうですね。仕事で。
- 中居:
- え?今までの活動のなかではありませんでした?
- 中野:
- 今までね、爆風スランプって、リーダーがドラムのファンキー末吉さんで、わりと彼が運営してたり、プロデューサーみたいな人が運営してたりしたんで、わりと僕はただ、何となくやりたいようにやっていて、あまり全体の運営みたいなものは考えてなかったんですけど。
- 中居:
- ということは、与えられた曲に対して一生懸命歌うだけ、じゃないですけども。
- 中野:
- 曲をもらったら、まあ詞はボクがつけるんで詞はつけて、それで歌うんですけど。「子供みたいに自由で、わがままにやってたのサ」って感じだったんですけど、今はバンドっていうのを、なんかね、「オレが経営しなきゃ」みたいなね。今までは書記長みたいだったのが、委員長なろうと。あれ?ちょっと違う。営業本部長みたいだったのが、ちょっと社長的な感じでバンド全体を見てみて。
- 中居:
- 周りを見て、バンドに対してちょっと責任を取らなきゃいけない、じゃないですけども。責任は持って活動しなくてはいけないという自覚。
- 中野:
- そうそう。それで、仕事。僕の場合、仕事はバンドなんですけど、バンドをやることを通じて、だんだん「あ、これはもっと大人にならなきゃやっていけないし、これがこうなって、こういうふうに転がっていく。こういうふうに転がしてみたい」って思うのが、大人としての喜び。仕事がなんだかオモチャみたいな感じになってきたんですよね。もちろん仕事なんだけど。
- 中居:
- え?やっぱり以前は仕事でグループとしての活動的なことに対して、ちょっと無責任っていったらおかしいですけども。
- 中野:
- ちょっと引いてましたね。
- 中居:
- うーん?確かに、僕も思うんですけど。え?爆風は結成して何年ですか?
- 中野:
- デビューは12年ですけど、結成は14年かな?
- 中居:
- 14年。僕、初期の頃の、このあいだも番組でご一緒したときにちょっとお話しましたけど、その、なんていうのかな、勢いなのかパフォーマンス、パフォーマンス的なところがあったじゃないですか。
- 中野:
- ええ。
- 中居:
- なぜ歌だけにね、聴かせる歌じゃなく、見せる歌っていうのかな?あれは、どういう?
- 中野:
- 花火くわえたりね。
- 中居:
- ありましたよね。
- 中野:
- 頭の上で火を燃やしたり。いろいろやってましたよね。お花畑こわしたりね。アルフィーさんのセットをね。いろいろありましたけど、まあ、それが楽しかったんですよねえ。それで僕らっていうのはロックっていうものに、笑いが必要だと思う。今でも思ってるんですけど、特に強く思い込んでたんですよね。
- 中居:
- 初耳ですね。
- 中野:
- ロックっていうのはね、なんだろうな?ギャグってさ、世の中を批評する目線が必要じゃないですか。批評するなりシビアな目線っていうか。
- 中居:
- 意外性だったりしますよね。
- 中野:
- そう。それをひっくり返して笑いにするわけじゃないですか。で、ロックっていうのもそんなもんなんだろうなって思うんですよね。
- 中居:
- ある時期には、「ロックのコンサートは不良の集まりだから行っちゃいけない!」って学校側から伝えられたっていう時代もなくはなかったですからね。
- 中野:
- うん。そういう時代が終わる頃、僕らは出てきたと思うんですけど。清志郎さんが僕のロックアイドルだったんですけど。高校卒業したぐらいの頃の。
- 中居:
- 先週、出ましたね。
- 中野:
- 例えば、清志郎さんとかも、「ナントカだぜ、ベイべー!」とかいって、「ベイべー、愛してるゼィ!」っていう、あれっていうのは、なんていうか普通のことを無理矢理パターンにはめることによって、形を作っているんだけど。それが、「愛してるゼ、ベイべー!」って清志郎さんがいうと、例えば、真面目な顔した人が、「愛してるゼ、ベイビィ」っていうのとはぜんぜん。その人のことを笑ってるんですよね、清志郎さんは。
- 中居:
- 捉え方も違いますしね。
- 中野:
- そうそう。俺は、清志郎さんは僕のロックアイドルだから、そっちの道を行きたかったんですよね。
- 中居:
- ふーん。いわゆる、ちょっとナメた感じですよね?
- 中野:
- うん。「でも、不良なんかじゃないよ」って。社会にっていうか、暴走族の子たちが、夜中にブッ飛ばして、騒音をたてて迷惑をかけるのが楽しいっていう。そういうのはちょっと、小さいじゃないですか、不満が。「でも大人になると辞めちゃうんだろうな」みたいな。大人になるとなぜか解決される不満なわけでしょ。でも清志郎さんて、40歳になってもやってるじゃないですか。そっちの持ってる社会に対する不満みたいなものの方が大きいんでしょうね、きっと。
- 中居:
- そういう不満だったり、反対だったり、そういうものを大人になっても持ち続けていくものなんでしょうね?清志郎さんっていうのも、未だにその反発心みたいなものを持ってるのかもしれませんしね。
- 中野:
- 未だに見てて面白いですよね。笑っちゃう。
- 中居:
- でも、爆風のみなさんは、最初の頃のね、まあ、反発心としましょう。それがありましたけれど、最近はやっぱり異常におとなしいっていうか、落ち着いてきたっていうんでしょうかね。
でも、12年、14年。その長い期間のなかで危機を感じたことってあります?
- 中野:
- 危機はね、よくありますよ。
- 中居:
- それは、さっきの話にもありましたけど「バラバラになっちゃうんじゃないか?」っていう危機かそれとも。
- 中野:
- 「もうやれない。こいつと一緒にいたくない」っていうの。そういうのもありますね。最初の頃、アマチュアの頃、バスでツアーしてたんですよ。マイクロバス。マイクロバスは普通免許じゃ運転できないんですけど、キャンピングカーに改造されたマイクロバスが30万で売ってて。それを買ってそれに楽器積んで、で、そのバスに寝泊まりしてたんで。布団も積んで、みんなで月に一度行ってたんですけど。
- 中居:
- へぇー。いいですね。
- 中野:
- でも、そうやって24時間、四六時中一緒にいたわけですよ。そういう状況続くじゃないですか。グループって。
- 中居:
- ええ。寝る時間以外はずっと一緒だったりしますよね。
- 中野:
- そうすると嫌になりますよね。特にね、うちのファンキー末吉はいびきがデカいんですよ。しかもすぐ寝るんですよ。誰よりも先に寝るんですよ。
- 中居:
- それは別にいいじゃないですか。寝るっていうのは。
- 中野:
- で、いびきがうるさいんですよ。で、同じ部屋で寝たり、同じ楽屋で寝たり、同じバスで寝てたりしてたから、「もうやめてくれ!!」と。「おまえ、殺すぞ!!」と。「そんなに苦しいんだったら殺したろか!?」みたいな。
- 中居:
- もう、些細なことがね。
- 中野:
- よく、夫婦で「箸の上げ下ろしまでが気になる」って言うじゃないですか。そういう状況になっていくんですよ。
- 中居:
- 僕もありますね。吾郎の鏡の見方とかね。「さっき見たでしょ!?」とかね、些細なことがね。日頃はべつに構わないことなんですけどね。なんか、ずーっといるとね、鏡見る回数を数えちゃったりね。
- 中野:
- あぁ、わかるわかる。
- 中居:
- 髪をかきあげる仕草とか。もう本当に些細なことがね。吾郎君だけに限らず、剛君のごはんの食べ方がひと癖あったりね、慎吾君がペチャペチャして喰う。
- 中野:
- あぁ、ペチャペチャ喰う奴いますよね。
- 中居:
- 日頃気にならないものがね、ずーっといると気になりますよね。
- 中野:
- なるなる。
- 中居:
- だから、メンバーとかじゃなくて恋人同士だったり、もちろん奥さんだったり旦那さんだったりっていうのも、ずうっといるとそういうのが見つかっってね。
- 中野:
- 恋人だったら別れりゃいいしね、兄弟だったら注意すりゃいいしね。
- 中居:
- 赤の他人はね、微妙なところですよね。
- 中野:
- 微妙なところだよね。
- 中居:
- でもサンプラザさんは、解散じゃないですけども、ずーっと爆風でやっていくかっていうのも、それも定かじゃないですし。でもやっぱり常に音楽と隣り合わせの人生を送っていきたいっていう気持ちが強いですか?
- 中野:
- そうですね。僕そんなにね、元々ミュージシャン、ミュージシャンっぽい方向から音楽にかかわってないんですよね。
- 中居:
- え?と言いますと?
- 中野:
- 楽器もそこそこ。ギターも、♪ジャンジャン〜っていうくらいはできるんですけど、人前で演奏するほどできないし。子供の頃から洋楽のロック聴いて育ってるとかじゃなくって、小学校・中学校はずーっとテレビ。僕はテレビっ子だったんで、テレビから流れてくる音楽ばっかり聴いてたし。要するに、ミュージシャンの人が語るロックの系譜、みたいなのがあるじゃないですか。「1960年代はなんなんだ、かんなんだ」みたいな。ああいうの、よくわかんないんですよ。
- 中居:
- へぇー。正直ですね。
- 中野:
- だからね、そういう、うちのメンバーたちが他の人と喋ってることがよく理解できない。いや理解できないっていうか。
- 中居:
- 知識がないってことですね?
- 中野:
- 「あー、なんかこの人の名前は前聞いたことあるな」とか、未だにそんな感じなんで。自分でそんなに「俺は、今ミュージシャンだゼ」って感じじゃなくて、それでもやり続けたいって思っているのは、なんか「ミュージシャンに近づきたいな」って思ってる状況だと思うんですよ。
- 中居:
- 「近づきたい」っていうのは?中野さんのイメージしてるミュージシャンの絵が見えないんですけども。
- 中野:
- そうですよね。俺もよく見えてないんですけどね。
- 中居:
- 何が理想なんですか?
- 中野:
- なんでしょうねぇ?
- 中居:
- 知識的なことは、勉強することでもないような気がしますし。
- 中野:
- あ、そうか。「この人を目指してる」みたいなのだと、目標がはっきりしてますよね。
- 中居:
- ええ。「この人みたいになりたい」「この人のような存在になりたい」っていうのが、誰しもあったりしますよね。
- 中野:
- それを目指しちゃうと、もし達成された時に終わっちゃいますよね。それはマズいと思いますね。
- 中居:
- そうなると人間、やっぱり満足しちゃうんでしょうしね。
- 中野:
- 満足しちゃうと、止まっちゃうんですよね。だから、誰みたいになりたいとか、あんまりわからないなあ。
- 中居:
- 昔からそうでした?
- 中野:
- いやいや、昔はね、俺が好きだったロックの人は、Queenのヴォーカルのフレディー・マーキュリーと、最初のほうで喋ってた忌野清志郎さんだったんですけどね。その人になりたいんじゃなくて、その人の精神状態になりたいんですよね。
- 中居:
- はあはあ。じゃ人間的なところですね?音楽性とか、こういう曲とか、こういう歌とかじゃないんですね?
- 中野:
- ないんですね。
- 中居:
- その人の持ってる音楽に対しての感性みたいなものが、同じラインで活動したいっていうことですかね?あぁ、なんかわかるような気がしますね、それ。はいはい。それがQueenだったり清志郎さんだったりするんですね。今、それでも、自分がそういう風な目標にしてるものだったりも。今の段階では。
- 中野:
- でもね、それを目指しているだけじゃダメだと思うんで、最近は自分のなかに何かを求めようとしてるんで。それがね、「何になりたいんだ?」「何があるんだ?」っていうのがね、ぜんぜんないんですよね。
- 中居:
- 僕もないですよ。
- 中野:
- ないですか?
- 中居:
- 僕もないですよ。
- 中野:
- いや、俺ね、夢がないんですよね。
- 中居:
- 目標も?
- 中野:
- 目標もないんですよね。なくなっちゃったんですよね、いつからか。
- 中居:
- 「なくなっちゃった」って?昔はやっぱり何らかの形で?
- 中野:
- 昔はね、「紅白に出たい」とか。今も出たいですよ、ええ。例えばね、「どこどこでコンサートしたい」とかね、明確に思ってた子供の自分があったんですけどね。今は、なんだかなぁ、自分のことで精一杯って感じなのかな。
- 中居:
- 僕もそうですよ、「なんでこんなにいろいろやってるの?」って言われるんですよ。「歌やって、バラエティやって、芝居やって、何々やって。そんなにやらなくてもいいんじゃないの?」「で、何を目指してるの?」「うーん?何を目指してるのかなぁ?究極の司会者を目指してるって訳でもないしなぁ。究極のアーティスト?うーん?役者さん?ダンサー?なんだろうなぁ?」っていって結局、見当たらなかったりするんですよ。でも、何かに向かっているのは確かですよ。絶対にこれは何かに向かっているんですよね。
- 中野:
- やっぱりね、自分ていうか「流れていなきゃダメだな」っていうのが今、一番の実感なんですけどね。
- 中居:
- 「流れていなければならない」?
- 中野:
- うん。
- 中居:
- 何かですね。何かがですよね。でも、その何かがわからなかったりするんですよね。
- 中野:
- わからないんですよねえ。
- 中居:
- 常に欲を持ってないといけないっていうのがあるかも知れないですよね。
- 中野:
- 欲、そうでしょうね。うん。
- 中居:
- 音楽にしろ、常にその、順位とかじゃないんですよね。
- 中野:
- うん。だからその、「夢がないゼ!」って言うんじゃなくて、「この世は最低だよ」って言うんじゃなくって、「この世は、みなさん、そんなに期待しないで下さい」と。「世の中そんなに良くもないし、悪いところ探せば悪いところはいくらでもあるけど、みなさんはこの世の中でどうしますか?」っていう、冷静なもの言いの人をする人がなかなかいないですよね。なんか大人になって、急に挫折感をおぼえちゃったりするのって。子供にね、「この世はね、そんなにいいこともないけど、悪いところもあるけど、最低でもないよ」と。で、「君はどうする?君が望んだように、君はなれると思うよ。努力すれば。でも、いきなり億万長者にはなれないよ」。そういうことを、そういう前提をみんなが持った上で、努力とか夢が見れるようになればいいなと思うんですよ、子供が。なんか夢を与えすぎてるような。
- 中居:
- もっと現実を見なきゃいけないところが。
- 中野:
- 夢を与え過ぎてるから、ショックを受ける人が多い。ちょっと太ってるっていうだけで、すごくガッカリしちゃう人っているじゃないですか。そういう人がいっぱいいるじゃないですか。そういうのって、可哀想。
- 中居:
- 可哀想ですね。
- 中野:
- 「ちょっと太っててもいいんだよ」っていう。
- 中居:
- 人間の持っているプライドみたいなものが。そんなことじゃないと思うんですよね。そういうところで薄っぺらいプライドを持ってても、仕方がないって思うことたくさんあるんですよ。ま、コンプレックスなんでしょうけど。「わたし、背がちっちゃい」とか、「ちょっと肥えてる」とか、男性だったら「俺、何々だ」とか。
- 中野:
- 「オレはハゲだあぁぁぁっ!!」とか。
- 中居:
- 「問題はそこではないんだよ」っていうのをね、訴えたいっていうのがありますね。「じゃあ、それを征服したことによっておまえ、よくなれるのか?」と。「それなら完璧になれるのか?」っていうわけでもないですし。ある意味では、もっと考えなければならないことっていうのが一歩引いて冷静になって、ちょっと自分を大人として考えた上で、うん、思考回路を。
- 中野:
- うん。そうそう。黄金の国・ジパングはないんですよ。
- 中居:
- なるほどね、うん。
- 中野:
- 普通の国です。かな。
- 中居:
- 夢って難しいですね。
- 中野:
- うん。だから、あんまり大きな夢は、大きな夢っていうか、そんな夢は。
- 中居:
- 叶ってしまうような夢は、持ったらそれを成し遂げたときには、つかんじゃった時には終わっちゃいますしね。難しいですよね、本当に。
- 中野:
- まあね、足下をみてやらないとね。バンドもね、明日は何があるかわからないって感じですね。
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