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Vol.51

CLAMP TALK


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CLAMP TALK :久保田利伸



中居=中居正広
久保田=久保田利伸

中居:
だから僕は、なんか、またなんでゼロからスタートしな きゃいけないの?っ ていうのがあるんですよ。

久保田:
でもあの、日本で自分のスタイルとか自分の音楽がウ マく浸透するかしないか。だから、俺が日本でデビューして、1年とか2年後。だ いたいウマく浸透するっていうのは3年とかそのくらいかかると思うんですが。で も、デビューしてから1年か2年後くらいの時には、すでにもう「早く日本以外の ところでもやりたいな」と思ってたから。

中居:
あ、そういう気持ち、もうあった?

久保田:
あったんですよ。だから、あんまりその、日本がどう いうふうになってるっていうのも、あんまり関係なかったけど、タイミング的に は。もっともっとその前にあった部分だから、そんなに関係なかったですけど ね。

中居:
じゃあ、そのきっかけじゃないですけども、なんで ニューヨーク?

久保田:
なんでニューヨーク?

中居:
なぜニューヨーク?いろいろあるじゃないですか。イギ リスはロンドンがありますし。

久保田:
そうですよね。

中居:
いろんなとこ、なんでニューヨークを久保田さんが?

久保田:
やっぱりね、二つくらい理由はあるんだけど、大きく 言うと。まあ、ニューヨークが多分、うーん?なんかいろんな人種が、いろんな勝 手な奴が、いろいろセンスの違う、で、偉ぇ奴も馬鹿な奴も含めてグシャグシャ になって狭いとに住んでる街だから、そういうとこに行ったら、ちょっとぐらい 強い人間になるかなっていうか。

中居:
それ、人間的にっていうことですか?

久保田:
人間的にも。で、そういうところに行ったらば、自分 にかなり責任持たないと多分、日本にずっといるよりは自分に責任をもっと強く 持たないと潰されちゃうような。とりあえず、強烈に国、強烈な場所のような気 がしたから、そこに行ってみたい、そこに長いこと、出来るだけ長い間、ちょっ とそこに身を投げてみたいとか、そういうまあ、そういう想いと。あと、多分こ れは間違いないと思うんだけど、アメリカのなかでもニューヨークで何かとっか かりを掴むことが世界に一番近い近道。もっともっと、例えばロンドンでなんか 始めたら、ロンドンで止まっちゃう可能性もあるんだけど、アメリカの中の ニューヨークで始めたら、ニューヨークでウマくいったらアメリカ全土はいっ て。で、アメリカっていうのは世界中に広がる可能性を一番、まあ安易だけど、 いちばん強く持ってるところだっていう。なんかいろいろカッコつけたりとか、 偉そうなことは言っちゃあいるけど、基本的にはすごくなんか目立ちたがりのメ ジャー指向だから。ちっちゃいとこでウマくいけばいいやっていうよりも、なん かなるべくメジャー指向な奴だな。

中居:
いろんなに人に、いろんな国の人に自分のやってる音楽 を認めて欲しいっていうことで?

久保田:
その可能性が一番てっとり早くて速い。でも、その代 わりいちばん難しいけどね。

中居:
うん、難しいですよね。

久保田:
いちばん難しいけどね。そう思ってる奴がウジャウ ジャいるわけだから、街に。すごいなんか、変な言葉で言えば競争の街っていう 感じがするけど。

中居:
すごい争いじゃないですけども。だって、僕ね、あの、 いいのかな?

久保田:
ニューヨーク行ったことはあるんですか?

中居:
ええ、あります。で、久保田さんも先ほどいいましたけ ど、純粋な日本人ですよね?

久保田:
そうだよ。でもね、あのね、ニューヨークでも日本人 にいっぱい会うじゃない、街歩いてる奴とか。で、特に今年みたいにシングル ヒットがボンッと「LA・LA・LA LOVE SONG」とかあったりすると、みんな「久保 田さん『LA・LA・LA LOVE SONG』聴きましたよ」とかいって。日本だったら会っ てもあんまり話かけないんだけど、ニューヨークにいる仲間っていう感じがする らしくて。で、特に関西の奴とかは、なんか関西弁でクッと回り込んできて、 「おぉ!?久保田やんけ!」って入ってくんだけど。でも、なに言おうとしてたん だっけな?それで。

中居:
「純粋な日本人ですよね?」って。

久保田:
あ、そうそう、そうそう。で、そういう時に、ついで に聞く奴が。本当に俺に向かって。聞くんじゃなくって、「あの、お父さんでし たっけ?お母さんでしたっけ?フィリピンの人は」とか「お父さんでしたっけ?お母 さんでしたっけ?黒人の人は」みたいな。疑ってないのよ、みんな。それで、いち おう今ニューヨークに住んでいる日本人のコミュニティがあるとすれば、そのコ ミュニティでは、僕はハーフっていうことになってるみたいね。

中居:
あ、そうですか?

久保田:
そういうふうに疑いのない事実として。

中居:
もう、そういうものだと思って接されるんだ?

久保田:
そう信じられてるみたい。そういうふうにみんな思っ てるみたいね、なんかね。でも、俺は自分でちゃんと調べたけど、社会科研究を ね。自由研究をやったけど。

中居:
小学校の時ですよね?

久保田:
うん。まあ、別に日本人でもアメリカ人でもハーフでもなんで もいいんだけど、結果は。でも、いちおう俺の場合は日本人ですよね。

中居:
そうですよね。日本人ですよね。で、あっちの人、 ニューヨークの人もそうですけども、あっちの血が流れてる人は、もうビート だったり、もう刻み込まれて染み込んでるわけじゃないですか、身体に。で、染 み込んでそういう人たちと久保田さんが、いくら久保田さんが頑張っても外人に はなれない。ニューヨークの人には、あっちの人にはなれないわけですよね。そ ういう時、対等にスタートライン、あっちの人は生まれてからスタートしてっ て、久保田さんは5年6年前からスタートして。どう考えても、まあ、上下で比較 してもアレですけど、やっぱり対抗しきれないんじゃないかなっていうの、僕な んかにもあるんですよね。いくら頑張ってもやっぱり日本人、いくら頑張って も。そういうのがあるんですよね。だから、それでもやっぱりその、争いじゃな いですけども、ウジャウジャいるわけですよね。そういうふうに思って、そうい う時に勝てるのかな?これで通用するのかな?っていう自分の中に自信みたいのは あったのかな?って思うんですよ。

久保田:
あのね、べつに生まれた時からリズムに興味があった り、リズム感がちょいといいとかっていうわけじゃないと思うんだけど、俺の場 合だって。でもなんか、いろんなものを聴いたりとかしてるうちに、リズム感と か、リズムへの身体の反応の仕方とか、それ置いたら向こうでネイティブに育っ てそのまま来ている人とあまり変わらないような気がするんですね。だけど、 やっぱりもっと何世代も前から培った何かもっともっと深めのフィーリングって いうのは違うから、やっぱり出てくる濃さ。あの、ファンキーな濃さ。リズムの 濃さ。粘り強さ。独特のものっていうのは多分、そこまで突き詰めたら日本人で ある俺には絶対ありっこないんだけど。でもね、これも何年も前から思い始めた ことなんだけど、もしかしたらそれが俺の売り、 売りじゃない、向こうに行ったらば、それが俺の売りじゃん。もしかしたら日本 だったらば、リズム感とかは俺の売りかもしんないけど、向こうに行っちゃった らばリズムは俺の売りじゃないと。平均レベル程度だと。したらば、そうじゃな いところに俺のなんか個性っていののがあるっていうふうに、俺がべつに無理し て見つけてるんじゃないけども、向こうの人たちが面白がってくれる。例えばあ の、本当に向こうの人とまったく同じリズム感を持って、肌の色も同じで、歌声 のトーンもまったくだいたい同じで、で、あと似たような曲をやってたらば、ぜ んぜん面白くないし何てことはない。だけど、あの、特にまあファンキー系の人 たちの中に混ざってやる場合でも、その中で例えばあの、
「トシ久保田っていう 奴はなんか、ファンキーな曲を歌うようだけど、なんか声のトーンが俺たちの人 種とは違うな」とか、
「リズムもなんかそういうの好きらしいけども、なんか聴 いたことのない個性を持ってるな」とか、
そういうことで彼らの中でも、彼らの 真似をしてるってよりも、彼らに面白がられる可能性を逆に持ってるような気が して。だから、もしこれがスポーツも勝つか負けるかとか、点を争うものとか、 そういうんだったらば技術的なものとかで勝負になるんだろうけども、もっと もっと人間一人一人の個性で勝負するような感じじゃない。だからね、なんかぜ んぜんいけるんじゃないかっていう。

中居:
ああ、じゃあ、まずあっちの人と土俵が違うんでしょう ね。あの、勝負のしどころじゃないですけども。わかるような気がします、それ は。

久保田:
そう、だから、それでもうアメリカで作られてアメリ カから発信されて世界中に影響を与える音楽ってやっぱり主流じゃない。けっこ うたくさんあるじゃない、ロンドンものもあるけど。だから、そういった意味で はあの、まあ、それと較べて日本ていうのは、ちょっといろいろ参考にさせても らったり真似したりとかっていうことは、まあしょうがない、多いけどね。多い とは思いますけども。

中居:
それは僕なんかSMAPもだから、その傾向はあると思いま すし。でも、僕なんかはまあ、真似するっていったらおかしいですけども、やっ ぱりそれを耳にして「ああ、こんな感じのいいなぁ」。ライヴなんかでも「じゃ あ、こんな感じでやりましょうね」。

久保田:
ぜんぜんいいと思いますよ。

中居:
ニューヨーク、僕らいかないですからね。

久保田:
まあでもね、今の話だけどね、でもアメリカの中で も、誰か流行ってる人がいたら、それをみんなして真似するわけで。誰かカッコ いい人がいたら真似したりとか。日本なんかよりもっともっと流行りものとかに 対する触角はすごい敏感でやってるから。だから、なんかすごいカッコいい例え ばそうだなぁ、誰にもわかりやすいところで言うとマイケル・ジャクソンみたい なのがいて、あれがカッコいいからあの踊りのセンスを真似しようっていう人は アメリカ人にもたくさんいて、日本人にもたくさんいるから、それはべつにぜん ぜんいいことだと思うな。

中居:
僕なんかもぜんぜん。

久保田:
日本人アメリカ人ていうのはぜんぜん抜きにして。で も、時々アメリカで言うと「俺たちのスタイルを真似しやがって」とかっていう 奴、ちっちぇえよな、人間が。ちっちぇえなぁっていう感じしますけどね。多 分、マイケル・ジャクソンも誰かの真似してるんだろうし、もとは。

中居:
誰かの、まあ誰かはわかんないですけどね。

久保田:
なんか、昔読んだのではあの、もっともっと上の世代 のジェームス・ブラウンとかそういうのをよく真似してるとかってあるだろう し。多分、そのジェームス・ブラウンも誰かの真似してたんだろうし。

中居:
でも、あっちの人って僕ね、聴くお客さんですか、ま あ、ライヴなりそうですし、レコード、CDを買ってくれる人っていうのは、久保 田さんの曲を聴いて我々が聴いて飲み込むものと、あっちの人と飲み込み方が違 うと思うんですよね。捉え方が。僕が日本の音楽をやっぱりずっと聴いてて、ま あ、街の洋楽のヒップホップ系の聴いてても、「ああ、久保田さんのアルバム だ」って手にすることもありますし。街の人がだから「あ、久保田」ってとるの と、また意味合いがちょっと違うんですけど、あっちの人はどういうふうに久保 田さんの音を捉えているのかなと。

久保田:
なんか、ムチャクチャいい質問じゃない?それ。そう いうのって。

中居:
そうですか?

久保田:
うん。なんか、よーくこの音楽業界を何十年もくぐっ てきた、スゴ腕の評論家と話してるみたいな感じがするけど。メチャクチャ深い 質問だよな。

中居:
でも、素朴な質問ですよ。だって日本人とアメリカ人違 いますからね。

久保田:
そうそう。で、多分あの、俺の以前の予想だと、ま あ、「トシ久保田」って書いてある。で、見た目の感じで判断するとすれば、 「なんか俺たちとちょっと違う顔してるな」っていうふうな。
で、あと、音楽を その前にラジオかなんかで、向こうのね、聴いて、それでそこに辿り着いた場合 は、まあなんか「英語にしたって俺たちとちょっと違う訛を持ってるようだ な」って。「でも、スタイルは俺たちのに似たファンキー系のR&B系のスタイルだ な」っていうんで、ちょっと珍しいところで聴かれちゃうのかなと。もの珍しさ で聴かれちゃうのかなと思ってたんだけど、まあ、それはいい意味でもあるかも しれないけど。
でもね、実際はね、レコードジャケット見ちゃえば、ちょっと 「あれ?何人だろう?」って思うかもしれないけど、先に音だけでいく場合は、な んかぜんぜんみんなアメリカ人だと思ってるみたい。アメリカで音楽のスタイル から見れば黒人ぽいから、なんか黒人が歌っているまあ、新しいやつ。黒人ノリ のっていうか、彼らの一部みたいな、そういうふうには捉えられてる。その反応 がすごく多い。

中居:
へぇー。それっていうのは久保田さんにとって、マルで すよね?

久保田:
マルだよ。

中居:
メチャクチャマルですよね。

久保田:
マルだよ、今のところね。今のところそれはマルだけ ど。

中居:
あの、ぜんぜん関係ないんですけど、あのビールのCM、 超カッコいいっスよ。

久保田:
マジ?

中居:
唐突ですいませんけど。

久保田:
いやいや、そう言ってくれて嬉しいんだけど。まあ、 でもあれってね、もう 1バージョンあってね。音の問題でね、あのね♪ オゥ、オゥ〜ってやってる裏にDJが♪キュキュキュン、キュン、キュン、キュ ン、キュ、キュンキュン〜てずっとDJだけで。

中居:
あ、それ知らないっスよ。

久保田:
知らないで当然で、あの、それは作ったまでで、そっ から先はオンエアされてなくて。ただやっぱりあの、まずはシンプルてインパク トを持って、まあ強いものって言うんで、声だけっていうふうにはなってるけ ど。でも、俺としてはね、DJがちょっと混ざってるやつのが。

中居:
あ、そっちのが好きなんですか?

久保田:
俺としてはなんかね、好きっていうか、それにこだ わってて。もしかして、それ聴いたらそれも好きっていうかもしれない。

中居:
ああ、そっち見たいなぁ、それ。

久保田:
それもいいかもしんない。

中居:
それ、見たいですね。

久保田:
だからね、あの、代理店の人にね、「そういうのを今 度、次あるとしたらやらせて下さい」とか。

中居:
あ、ビール屋さん、一つちょっとお願いします。

久保田:
ええ、サントリーさんなんですけどね。

中居:
ちょっと、もう1バージョンのほうを、ぜひともかけて 見せて欲しいですね。

久保田:
すいませんね、そこまで言っていただいて。

中居:
あれだから、新しいんですよ、僕なんかから見て。新し いCMなんですよ。それが、久保田さんにとっては、もう自分のやりたいスタイ ルだったり、自分のやってたスタイルをそのままポンとCMなり、まあ、歌もそう ですけど出してるつもりですけども、我々周りでいろんな音楽を聴いてても久保 田さんのは新しく感じちゃったりするんですよね。

久保田:
あ、そうなんだ。

中居:
耳に入らないんですもん、そういう音楽は。

久保田:
あ、そうなんだ。

中居:
でも、そのかたくななって言っちゃあおかしいですけど もね、その自分のスタイルっていうのはでも、今後ともやっぱり変えて欲しくな いなっていうのは。

久保田:
多分そんな変えられないと思うけど。デビューした頃 は変わるんじゃないかなって思ったんだけど、ここまで変わらないから変わらな いと思うな。

中居:
売れるための曲と、自分の好きな曲をね、出して。音楽 をやって売れるとまた違うと思いますしね。

久保田:
まあ、いろいろそのへんはあるけどね。でもね、俺、 今のところ俺は自分の好きな曲しか作ってない感じがして。これが「ちょっと嫌 だな、この曲」っていう曲を作るようになると寂しいけどね。

中居:
寂しいですよね。

久保田:
今のとこそうなってないからいいけど。

中居:
それはやっぱりちょっと一貫して欲しいなっていうのは ありますね。

久保田:
それはそうします。

中居:
まあ、ぜひともSMAP、今度なんかあったら聴いて下さい よ。

久保田:
あ、知ってるよ。だってあの、うちのマネージャーは カラオケ行くと必ずSMAPだもん。それしか歌えないの、いつも。

中居:
あ、そうなんですか。

久保田:
ぜんぜん歌えないけどね。だってさ、あの、俺がトシ ちゃんとかに書いてた頃っていうのは、本当にリズムは簡単に♪タ、タ、タ、 タ、タタ、タ、タ、タ〜って書いて下さいって言われてたのに、ぜんぜん難しい じゃん。

中居:
難しいんですかね?

久保田:
いや、1、2、3、♪ン、HEY HEY HEY 〜でしょ。

中居:
裏でとってたりしますけどね。

久保田:
そう。だから、そういうのはうちのマネージャーみた いな奴だと歌えなくなっちゃうんだけど。全部、♪ン、HEY HEY HEY 〜っていう のが、♪HEY HEY HEY 〜ってなっちゃうんだけど。しょうがないんだけど。で、 俺の曲なんか絶対歌えないから。まあ、出す例が悪かったんだけどね、今は。だ けど、僕はよく知ってますよ。

中居:
何らかの形でそうですね、見て欲しいですし、聴いて欲 しいなぁと思うんですけどね。また日本に帰ってきたら、この番組に遊びに来て 下さい。

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