ブルースはミシシッピデルタで生まれた.
それはアフリカから連れてこられ,綿花畑で働かされた黒人たちの叫びでもあったし,100年前に実在した最高にヒップなパンク野郎たちの音楽でもある.たとえばロバート・ジョンソンのプレイを聴いてみるといい.今でもゾッとするほど豊かな音楽と出会うはずだ.そのデルタ・ブルースがミシシッピ川沿いにHIGHWAY61を通って北上し,セントルイスを経由し,シカゴにたどり着く.そして,大都会シカゴでエレクトリック化され,モダンでパワフルなブルースへと変化していく.
ブルースはロックンロールの親だと言われる.僕はそれだけの存在だとは思わない.今,普通に僕らの生活の中で聞こえてくるあらゆるポップミュージックは,少なからずブルースの影響下にあるはずだ.
ブルースは,嘆き,悲しんだりするだけの音楽ではない.毎日,僕らの毎日に起こる現象を受け止めたり,吹き飛ばすだけのパワーを持った音楽だ.
さらにこんな話もある.何年か前にミシシッピのジューク・ジョイントでブルースのプレクを取材したとき,はじめて知ったことだが,客は皆ブルースで踊っていた.
ブルースはダンス・ミュージックでもあるのだ.
「西へ西へ」「移動し続けること」.
これらの思想はアメリカ文化の根底に現在も深く根付き,たとえば,ニューシネマに多く見られるようなロードムーヴィ等に受け継がれている.」この道の音楽との関わりは,また別の機会に話そう.
アメリカで最もおもしろい,様々な血の混じった音楽だ.
TOM