From TOM Vol.25 (4/24)


アメリカ大陸において
音楽を語る上で,絶対に欠かせない「道」が3本ある.

1本はHIGHWAY61だ
ミシシッピからシカゴまで,アメリカ大陸を南北に走る道だ.ボブ・ディランの歌でも有名なこの道はブルース・ロードとも呼ばれる.

ブルースはミシシッピデルタで生まれた.

それはアフリカから連れてこられ,綿花畑で働かされた黒人たちの叫びでもあったし,100年前に実在した最高にヒップなパンク野郎たちの音楽でもある.たとえばロバート・ジョンソンのプレイを聴いてみるといい.今でもゾッとするほど豊かな音楽と出会うはずだ.

そのデルタ・ブルースがミシシッピ川沿いにHIGHWAY61を通って北上し,セントルイスを経由し,シカゴにたどり着く.そして,大都会シカゴでエレクトリック化され,モダンでパワフルなブルースへと変化していく.

ブルースはロックンロールの親だと言われる.僕はそれだけの存在だとは思わない.今,普通に僕らの生活の中で聞こえてくるあらゆるポップミュージックは,少なからずブルースの影響下にあるはずだ.

ブルースは,嘆き,悲しんだりするだけの音楽ではない.毎日,僕らの毎日に起こる現象を受け止めたり,吹き飛ばすだけのパワーを持った音楽だ.
さらにこんな話もある.何年か前にミシシッピのジューク・ジョイントでブルースのプレクを取材したとき,はじめて知ったことだが,客は皆ブルースで踊っていた.
ブルースはダンス・ミュージックでもあるのだ.

2本目は,シカゴ〜L.A.を結ぶローカルロード,ROUTE66だ.
この道はあらゆる意味で,アメリカの「移動」の思想を反映している.

「西へ西へ」「移動し続けること」.

これらの思想はアメリカ文化の根底に現在も深く根付き,たとえば,ニューシネマに多く見られるようなロードムーヴィ等に受け継がれている.」この道の音楽との関わりは,また別の機会に話そう.

3本目はI-10(アイテン)だ.
インターステイトハイウェイ10.おそらくL.A.〜テキサス〜ルイジアナを通り,東はマイアミまで突き抜ける,ぶっ太いハイウェイだ.
この道をたどっていくと,ロックン・ロールから,テックス・メックス,ケイジャン,ザディゴ,ジャズ,ゴスペル,ブラスバンド,R&Bなどのニューオリンズ・ミュージック,さらにサルサも含んで,アメリカとメキシコ,キューバなど中南米とのミクスチャー・ミュージックに出会う.

アメリカで最もおもしろい,様々な血の混じった音楽だ.

ぼっくは最近この3本の「道」が気になって仕方ない.
アメリカンミュージックと聞くとき,いつもこの3本の道の風景が目に浮かぶ.
この3本のハイウェイをしばらく追いかけてみようと思う.

TOM


[CONTENTS] | [CLAMP] | [FACTORY] | [INFO] | [PRODUCTS] | [CLIPBOARD]

(C) FujiTelevision Network,Inc. All rights reserved.