CLAMP TALK SPECIAL : 小林武史


TK in Talking with TAKESHI.



小林:
いや、だから、本当に、まあ今日ははずみで 出てきちゃいましたけどね。

tk:
じゃあ、本来だったら、こういう表には出たく ないのかな。

小林:
やっぱり裏のといいますか、スタ ッフ・ワークに近いところでのプロデュースが、僕のポ ジションだと思っていますから。それで も、小室君とはやってる部分がかなり共通してるとは思いますけれども。

tk:
そうだね。多分ね。小林 君もキーボードだもんね、もともとは。

小林:
そうですね。

tk:
だからレコーディングや打ち込みもスタ ッフと一緒にやったり、曲作りとかも一緒にやったりとかするわけだよね?

小林:
ええ。やっぱりコンピュータ ー出て、サンプラー出て、作りたい音のシュミレーションが出来るようになった のが、僕らキーボード出身者には大きかったんじゃないかな、とは思いますけど 。

tk:
一番重宝がられたもんね、僕たちみたいなのが。例えばギタ ーを持って歌を作るミュージシャンの人がいて完成形をシュミレーションしたい 時に、俺たちみたいのがそばにいると、すごく役に立ちますよね。例えば桑田さ んたちとの関係の中でも、そういう協力っていうのあったのかな?

小林:
そうですね。昔はね、レコード会社にスタ ジオがあって、そこにミュージシャンを呼んで 作るしかなかったんだけど、今は、ある意味ではどこでもその音楽の輪 郭を見ることができるでしょ?

tk:
そうですね。

小林:
いつでも好きなだけやられてるんでしたっけ?

tk:
僕はね。2年ぐらい前に小さい自分のスタ ジオを作ったから。それから今だんだん機械も充実してきて、やりやすいように していってる状態ですから。もうほとんどそこ以外で はやってないのね。だから、そこで フェーダーを立ち上げれば、どのシンセの音も出るようになってるし、ミックス まで出来るようになってるから、環境的にはすごくいいんですよ。こ れが楽器を運んで、セットしてっていうことになると、ちょっとね。それだけで すごく無駄な時間や経費を使うわけだし。だから、今はもうずっと自分のスタ ジオでやってますけど。
ところで 、曲作らないっていうか、作詞作曲と、プロデュースが別だと、苦労しませんか ?僕なんかは自分で作ってるから、見えちゃうとこあるんで すよ。いわゆるアーティストが作るものを「おまえはこ れをやりたいの?」「どういうのをやりたいの?」ってこ とをわかるのって、すごく大変だと思うんだけど。自分で 曲を作ってる場合は、自分で自分に指示をすればいいわけだから、けっこ う早かったりするんですよ。自分の頭の中で もう作っちゃえるから。ただアーティストを尊重するっていうのが、本来のプロ デュースの大事な役だったりすると思うんだけど。小林 君とかはずっとそうやってますよね。まあ、もちろん自分で も曲を作るとは思いますけど。

小林:
やっぱり、似てる部分もあるんで すけどね。ただ僕の場合はその人が持ってるなにかがスタート地点です。最 初の時点では、他の人が「これはすごくいい」とは言わないアーティストで も、僕の中で 何か感じるものがあって、そういうのを、引き伸ばしたり、生かしたり、いろい ろしてるうちによくなっていくっていうこ とが何回もありましたね。そういうのに感動する場面が何回もあって。
「ミス・ チル」で も、『クロス・ロード』なんていうのは、桜井君が曲を持ってきた段階で 、ある程度できちゃったんだけど。で も、まだ『イノセント・ワールド』あたりでは、当初からあそこまでの完成型 を見るっていう感じじゃなかったんですよ。で も、やっぱりプロデュース・ワークの中で 、もちろん桜井君も入れながらのプロデュース・ワークの中で、突然あるとこ ろから化けていったところがあるじゃないですか?もちろん段階を踏んで 、その化けるのを待つわけなんだけど。仕掛けて待つんだけど。それが起こ った時は、なんか体の中を駆け抜 けるものがありますよね。電流みたいな快感が。

tk:
ああ、それはわかります。もうすごくよくわかります。

小林:
自分で曲を作ってても同じようなとこあるでしょ?

tk:
同じようなとこありますね。僕なんかもそうで すね。自分で作っても、自分じゃない自分が見てますから。

小林:
やっぱり曲を作るときも、もしくはこ れからどの曲を世の中に出すのかという時にも、どういうふうに聴かれるか?っ てところまでイメージしないと、最初の一歩も踏み出せないで しょ。
例えば、アレンジすると言うけど、そのアレンジっていうのはトータ ルな出口ということだと思うんですよ。どこにどういう形で出していく のか、頭の中で それがどういう形なのか、わかってないとアレンジは成立しませんから。極端に いえば、ドラムのスネアの音まで決められないみたいなとこがあるで しょ。極端にいえばねですけど。

tk:
まさにそうだと思いますよ。一番最初はなにから録 るんですか?バンド演奏だとリズム・トラックの場合が多いのかな?

小林:
で も、必ずシュミレーションしますから。だから、やっぱり僕キーボードで の仮メロか、もしくは仮歌からで す。それから、ダミーのドラムとベース。僕はベースがすご い好きだから、ベースを入れる時には、ほとんどアレンジの方向性みたいなもの まで考えちゃいますけどね。

tk:
ベース・ライン面白いよね。

小林:
で も、もちろんね、その後に「ミス・チル」のベーシストのいろいろな試行錯誤も 、当然あるわけだけど。あと曲によっては「せーの」で 、ガーンと。プリプロもなしで やっちゃおうみたいな場合もありますよ。音数の少ない、初期衝動で やれるようなやつはね。

tk:
じゃあ、さっきの話でいくと、ある程度は世の中のどこ らへんに落とし込もうっていう狙いがあった上で 、バンドのリズム・トラックは録ってくわけですよね?

小林:
そうですね。

tk:
そこらへんはやっぱ本人たちじゃあ、見えなく なっちゃうとこ があるかもしれないもんね。まあ見えてたとしても、やっぱり一緒に考えてく れる人はほしいですよね。

小林:
そうでしょうね。

tk:
そうですよね。あともうひ とつ。ちょっと古いのかもしれないですけど、小泉今日子さ んの『あなたに逢えてよかった』って曲ありますよね。で 、あれは僕からすると、コード的なものが、普通のポ ップスの概念というか、ヒット・ポップソングの枠からは少しひねく れいて、お洒落に作っあるな、と。そういう感じで したね。全編に他とは違う色合いが出てるなぁと思ったんで すよ。ああいうのが「いける」っていう感じでした?

小林:
そうですね。

tk:
それは、もともと小林君が持ってるカラーなの?

小林:
そうですね、僕はスタイルで物ごとを決めていく のが苦手なんです。だから、ミスタ ー・チルドレンも4ピースのバンドだけれども、「バンドサウンドで す」っていう感じじゃないし。やっぱ何かと何かの間で揺れてるじゃないで すか?いろんな人が感じる物って。甘酸っぱいだの、切ないだの。悲しいで も。明るい陽の光りが差している時に、もの悲しいとか。ああいう感覚がやっぱ すごい好きなんだと思うんだけど。レコーディングで いうコンプレッサーみたいな、弱い音を強くするみたいなところが好きみたいで すね。「あなたに逢えてよかった」のようなデリケートなコード進行が、張った 感じで聴こえるとか。そういうのはすごく好きみたいで すね。僕の質だと思いますけど、それは。

tk:
なるほどね。で も、それもわかりますよ。非常にマニアックになっちゃうんで すけど、僕もリミッターとコンプレッサーが一番好きなんですよ。エフェクタ ーでいうとね。だからリミッターでどれだけの音圧 なり、迫力なり、パワーをね、詰め込むかがポ イントだったりしますから。特に僕は打ち込みのリズムが多いで すよね。だから、どれだけ、決まった容量の中にパワーを押し込むかがけっこ う狙いで。それでいいリミッターを使いますよね。あらゆるリミッタ ーを使わないと、その押し込まれ方がね、なんだか無 理やり押し込まれるみたいになっちゃうんですよ。非常にこだわるんで すけどね、そこらへんは。でも、生楽器が多いと、もっと繊細ですよね。

小林:
そうで すね。トッド・ラングレンとかもね、弱い音ってものに対して、ちゃんと市民権 を与えるみたいなところがあったでしょ?ロックって強 い音を出してるヤツが一番強 いわけじゃない。一見そう見られがちだけど、もうちょっと、女性ホルモンの強 さみたいなのを、ロックって抱え込むじゃなですか。そういうの好きで すね、僕は。マニアックな話になっちゃいましたね。

tk:
かなりマニアックですけどね、いいんですね。ところで 、また「ミス・チル」の話題に戻りますけど、『es-Theme of es- 』のビデオクリップのes君ていうのはアニメーションのあのキャラクターで すか?

小林:
そうです。CGの。『Everybody goes』で 初めて世の中に出たんですが。まあかなり長いカラクリで して、半年以上ずーっとカラクリを作ってって。フロイトの精神用語で ……またカタい話になっちゃいますね。

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