- 中居:
- みなさんこんばんは。中居正広です。世の中には2種類の人間があるとします。例えば勢いのある人。そして勢いのない人。この2つに別けるとします。今日のゲストは間違いなく、絶対、いや、まさしく勢いのある方でしょう。御紹介しましょう。ウルフルズヴォーカル、トータス松本さんです。
- 松本:
- あ、どうもどうも。どうもどうも、勢いのある男。
- 中居:
- こんばんは。
- 松本:
- 違いのわかるトータス松本。どうもどうもどうも。
- 中居:
- 松本さんはこの番組は何度目?
- 松本:
- なんかね、聞いたら4回目らしいんですよ。
- 中居:
- ええ、最多出場…?
- 松本:
- って言われてるんですよね。もうすごいですよね。
- 中居:
- そうですよね。これ、小室さんのね、やってた時期もそうですし。
- 松本:
- 紅白みたいになんか、数が横に書いたったらすごいですね。
- 中居:
- そこまで趣向は凝ってないんで。
- 松本:
- (初)とか(4)とかね。
- 中居:
- まあ、僕の中ではちょっとイメージ的に変わりましたけど。
- 松本:
- でもね、最近よくお会いする顔で。
- 中居:
- ね。ここのところ非常に会いますね。
- 松本:
- 非常にね、リラックスして今日は。
- 中居:
- まあ、いろいろとですね、あの、SMAP自体はですね、ウルフルズはけっこう好きなんですよ。
- 松本:
- あ、そうなんですか。それは嬉しいっスよね。
- 中居:
- これは僕ももちろんだけど慎吾君とかね、剛君とか本当好きでね。「ガッツだぜ」の曲のあのビデオはとにかく好きでね、みんな。最初、僕、わかんなかったんですよ。で、「これ、誰が作ってる人なのか?」って。で、「誰が構成してるのかな?」ってメンバーと話してて。「このビデオ、何処に向かってる?」って。
- 松本:
- どこに向かうか?
- 中居:
- うん。「これは何を訴えたいんだろうね?」って話をしてたんですよ。でね、「これを作った人とか演じてる人はね、多分、向かうところが自分たちでもわかってないんじゃないの?」って話をしてて。でも、あれは何か意図的なことあるんですか?
- 松本:
- いや、向かうところはね、どこでもないんですよね。
- 中居:
- やっぱそうだ。
- 松本:
- だからもう、終わらないんですよね、どのビデオも。だから、僕らのビデオはなんかこう、2つ3つぐらい特徴があって、1つは行進パターンですよね。
- 中居:
- ありますね。僕ね、全部見させていただきましたけども。
- 松本:
- どこへ向かうのか知れないって。
- 中居:
- 商店街とかね。
- 松本:
- 団体が行進するっていう。その行進とあとね、もう一つ、ただ行進するパターンともう一つ何ちゅうのかな? 変装するパターン。
- 中居:
- あの大阪の? 「大阪ストラット」?
- 松本:
- ええ、「大阪ストラット」。
- 中居:
- これ僕、いちばん好きだった。
- 松本:
- あ、これね。
- 中居:
- かなりイっちゃってますよね。
- 松本:
- これね、企画、原案、僕なんですよ。
- 中居:
- 全部自分で構成・演出やられたんですか?
- 松本:
- ええ、もうこれ、俺フィルムですわ。
- 中居:
- これ僕見た時にね、「あ、マズいな」って思いましたもん。
- 松本:
- 何で? 何で?
- 中居:
- 「あれ? 歌ってる人でSMAPより面白い人たちが出てきちゃったよ」って話してて。
- 松本:
- いやいやいや。
- 中居:
- これ、変な話あの、まだメジャーじゃないですけども、まだ「ガッツだぜ」のぜんぜん前ですし、まあ、売れる前っちゃああれですけど。
- 松本:
- いやいや、もうどんどん。
- 中居:
- あの、みなさんの露出度がまだ露出する前に作られたビデオですよね?
- 松本:
- そうですね。
- 中居:
- その割りにはって言っちゃあ失礼ですが、お金もかかってるでしょうし、それ以上に構成・演出もちろんそうなんですけど、すごくやっぱりこだわってるじゃないですけど、すごくきちんと作ってるなと。
- 松本:
- そうそう、そう。
- 中居:
- っていうイメージがすごく強かったんですよ。
- 松本:
- そうなんですよ。
- 中居:
- なんでここまでしてね。やっぱりほら、売れてる歌手の人だったりアーティストの人は、周りの人がお金もかけてくれるでしょうし、それ以上に時間もかけてくれるじゃないですか。それにもかかわらずウルフルズのみなさんがまあ、出る前ですから。なんでこんなに時間と趣向を凝らしてるのかな? って強く思ったんですよ。
- 松本:
- あの、SMAPのビデオとかって、どれぐらいで作るんですか? 1本。時間的に。
- 中居:
- プロモーションビデオっていうのは基本的にないんですけども。
- 松本:
- でも、歌ってるのとかありますよね? あれは違うんですか?
- 中居:
- ライヴやってるのを撮影して、それをなんか繋ぎ合わせて。
- 松本:
- 映像処理したりして?
- 中居:
- そう。映像処理したりして。
- 松本:
- あ、そうかそうか。じゃあ「プロモーションビデオを撮る日」っていうスケジュールがあって、それで集合してっていうのはないんですか?
- 中居:
- ええ、そういうのはないですね。
- 松本:
- ああ、そうか。
- 中居:
- ええ。だから、こういうの見て僕らは、逆に羨ましかったですもん。
- 松本:
- じゃあ作ってくださいよ。
- 中居:
- 僕らがですか?
- 松本:
- うん。僕らのライバルになってくださいよ。あの、僕ね、他の誰もがやってないことがやりたくてこういうことやってるんですけど、見習ってついてくる人、誰もいないんですよね。孤高の存在なんですよね。
- 中居:
- そうですね。
- 松本:
- だから、こういうビデオがいっぱい出来ると面白いなと思ってやってんねんけど、世の中に氾濫しだすとね。わりと誰もやりたがらないですよね。
- 中居:
- でも、これはもう一か八かですよね?
- 松本:
- うん。全部そうですよね。
- 中居:
- いちばん最初のこれもですもんね。
- 松本:
- 「やぶれかぶれ」?
- 中居:
- 「やぶれかぶれ」観た時は、「全曲このまま行っちゃうのかな?」と思ってたんですよ。
- 松本:
- 僕はね、最初デビューした時は、そのつもりだったんです。どの曲出しても全部後ろに3人で僕が前っていう。この1カメで全然編集なしっていうパターンをずーっと10年やれたらすごいなと思ってたんですけど。やっぱりでも、曲も違うし、いろいろ凝りたくなってくるんですよね。それは僕もそうやし、監督のタケウチって男もそうやし。それでだんだん凝っていくうちにね、さっきの話やないけど、何処へ向かってんのか全くわからなくなってしまったんですよ。もう全くわかんないですね。
- 中居:
- でも、その感性っていうのは今まで僕なんかもいろいろビデオ観てきましたし、アーティストの観てきましたけども、初めて見る絵でありましたし、逆に新鮮でもありましたしね。なんか面白いグループだと。僕、ビデオで初めて見たんですけども、ちょっと刺激になりましたね。
- 松本:
- あの、ミュージックビデオって、向こうのMTVとか見てると、ほら、喫茶店とかでMTVだけかかってて。
- 中居:
- ありますね。
- 松本:
- 音は出てないねんけど絵だけが見えてるとかあるじゃないですか。
- 中居:
- はいはい。
- 松本:
- ああいうところで見てると、絵だけなのにすごい観れるというかね。面白いんですよね。そういうのがやりたかったんですよね。だから「大阪ストラット」とかでも監督のタケウチは反対したんですよね。僕の七変化っていうか。
- 中居:
- あらゆる役を全部ね。
- 松本:
- 全部演じるっていうのはタケウチは「いや、お笑いのフィールドに踏み入るのは、それは危険や」と。「それは、お笑いの人にはかなわへん。バンドはバンドのやり方がある」と。
- 中居:
- 今までバンドはバンドのレールがあると。
- 松本:
- そう。
- 中居:
- そのレールに沿ってやったほうがいいんじゃないかと。
- 松本:
- そうそう。「その案は面白いと思うけども、ヘタしたら無理してお笑いのことやってもショボいっていう結果になるのが俺は恐い」と。でもまあ、「そこは敢えてやろうではないか」という感じでやったんですよね。だからまあ、結果的には面白いもんが出来てよかったんですけど。
- 中居:
- だかせ、僕が観た中でいちばん見ても楽しめる。だから今のバンド、ウルフルズのみなさんがやってるのは見せるバンドっていうのかな? 聴くだけじゃなく見せてもくれるから。逆に「今度のビデオではどういうのやってくれるのかな?」「どういうの見せてくれるのかな?」っていう期待感がすごい膨らみますよね。でも、これってね、本当でもぜんぜんまだ売れる前っていったらあれですけども、メジャーになる前ですよね。
- 松本:
- そう。「大阪ストラット」とかね、1万枚越えるのに、すごい長いことかかりましたよ。
- 中居:
- 1万枚ですか?
- 松本:
- うん。1万5千枚ぐらいいった時に、もう泣きそうになりましたから、喜んで。「嘘や! 俺らが1万5千枚も売れてええのか!?」っていう。そのぐらいでしたよ。
- 中居:
- これはでも、何年ぐらい前ですか?
- 松本:
- 撮影自体はね、1年ちょい前ぐらいです。でももう、ぜんぜん余裕で撮影しましたからね。街角で。
- 中居:
- そうですよね。大阪ド真ん中ですもんね。
- 松本:
- 警察に捕まりながら。
- 中居:
- え? 警察に捕まったって?
- 松本:
- あの、勝手に撮影してるじゃないですか。
- 中居:
- え? 撮影許可とかは?
- 松本:
- ぜんぜん取らなくて。
- 中居:
- それ、違反ですよ!?
- 松本:
- いやいや、いや。
- 中居:
- それ、ダメですよ。
- 松本:
- でもね、ずこいね、大阪の警察の人はね、大らかなんですよ。
- 中居:
- え? 警察に大らかも何も。
- 松本:
- いやいや、僕だけど、その交番入って髭剃ったんですから。そうそう、「じゃあ、そろそろ撮影」って時に、僕がいつも持ち歩いてる髭剃りが動かなくて。「あかん、どっかで電源借りるとこないかな? ホテルまで帰るのはちょっと時間かかるし。あ、交番あるから、『すいません、ちょっと髭剃りたいんですけど、電源貸して欲しいんですけど』」って。
- 中居:
- 何て言ってました? そこの人。
- 松本:
- 「じゃあ、そこにあるから使いィ」って。
- 中居:
- 警察も警察ですね。
- 松本:
- で、ヴィーンて髭剃ってたんですよ、しゃがんで、警察署で。で、「自分ら何やってんのん?」って言うから。衣装とか着てますからね。「いや、ちょっと撮影で」とかいったら「へぇー」て。「チャッチャとやりや、チャッチャと。人が集まってきたらワシら仕事柄、止めなしゃーないがな」って。「面倒臭いねんからチャッチャとやってタッと帰ってや。プロやねんから」って。
- 中居:
- 安易だな、それ。いいですよね、でもね、それ。
- 松本:
- そうそう。その警察署は大丈夫やったん。もう一本こっちの通りの警察署は厳しくて、捕まったんですよ。で、監督のタケウチがもう29歳にもなるくせに、大学生の映像研究部のフリして「すいません」言うて泣き言いうたら許してくれたんですけどね。
- 中居:
- 単純なんですね。
- 松本:
- そうそう。単純なんですよ。だからもう、あそこはある種、無法地帯というか。こっちで選挙演説やってるかと思えば、こっちでは「みなさんの希望を叶えます」みたいなやつやってたり。こっちでは火の粉振り回してる奴おったり。橋の上がもうムチャクチャなんですよ。だから、僕らがちょっと撮影してても、べつにそんなに大したことないですよ、インパクト的には。
- 中居:
- 他のがインパクトあったりするんだ?
- 松本:
- そうそう、そうそう。
- 中居:
- でも、なんかいいですよね。自由じゃないですけど。このビデオもそうですけど、大阪の色っていうのがね、すごく堂々と出てるじゃないですけども。
- 松本:
- そうそう。
- 中居:
- やっぱりある意味では大阪の人がまあ、バラエティの人もそうですけど、「東京進出だ」って言ってて。逆にウルフルズのみなさんも最初の頃、言われたんじゃないかと思うんですよね。
- 松本:
- ああ、ああ。「大阪パワー」みたいな?
- 中居:
- ええ、ええ。
- 松本:
- 言われましたよ。
- 中居:
- やっぱり東京の人じゃないですけど、周りの人に?
- 松本:
- うん。言われる言われる。「そのコテコテさは、やっぱり吉本の影響もあるんですか?」とか。そういう質問すごく多かったですよ。
- 中居:
- そういう時って心境的には?
- 松本:
- いや、でもね、無くはないと思うんですね。やっぱり、全くないとは言い切れない部分があると思うね。そういう、関西に生まれ育ったからこういうコミカルなことをやりたがるっていうのは、否定は出来ないと思うけどもね。べつにそういうのがやりたくてやってるわけではないねんけど、でも、どう見ても大阪のバンドっていうイメージはあるでしょうね。
- 中居:
- そうですよね。
- 松本:
- ここでやってるとね。
- 中居:
- 喋ってるトークでも大阪弁もちろん出てくるでしょうし。ビデオ観てもそうですけども。でも、こういうのを見ますと、なんか周りの人が受け入れるじゃないですけど、認識だんだんし始めて。で、CDとしても売れてきて。なんか今までいろいろ批判されたなかでもやってきて、こういうふうに認められるとやっぱり普通のバンドの人以上に嬉しさっていうかね、喜びがあると思うんですよね。
- 松本:
- それは嬉しい。
- 中居:
- でも、何年でしたっけ?
- 松本:
- 8年です。9年目ですからね。SMAPと一緒で。
- 中居:
- SMAPと一緒だってこの前、話ましたけど。
- 松本:
- でも、歳くってるんですけどね。
- 中居:
- え? 今トータスさんお幾つですか?
- 松本:
- 僕29です。
- 中居:
- っていうことは二十歳、21の頃に。
- 松本:
- そうそう、そうそう。始めたんです。
- 中居:
- じゃあもう、長かったです?
- 松本:
- 長いっスよ。アマチュア4年でしょ。で、プロデビュー4年でしょ。だから、プロになってからのほうが長いですよね。なんか気分的にはね。
- 中居:
- アマチュア時代っていうのは、もちろんやっぱり稼ぎはないわけですよね?
- 松本:
- うん。ないない。バイト。バイトしながらですよね。
- 中居:
- バイトしながら音楽活動?
- 松本:
- そうそう、そう。喫茶店で働いてたんですよ。インド喫茶で。怪しいんですけどね。
- 中居:
- ええ、ええ。メチャクチャ怪しそうですね。
- 松本:
- ええ。あの、「プロになりたいな」と思ってバイトしようと思ったら、そのインド喫茶がちょっと怪しくて。僕もまだ二十歳ぐらいですからね、怪しい部分に惹かれるじゃないですか。それでまあコロコロっとそこへ転がりこんで。そしたらね、やっぱり怪しいとこにはそういう怪しい奴が集まるっていうか。類は友を呼ぶというか。働いてる奴はバンドマンが多かったんですよね。で、そこでメンバーと出会ったんやけど。
- 中居:
- へぇー。
- 松本:
- そうそう、そう。だから、バイトが一緒でなかったらウルフルズなかったんですよね。
- 中居:
- そうでしょうね。そのきっかけがなかったら。
- 松本:
- だから、月に25日間ぐらいビシッと8時間かもっと人が足らん時は10時間とか、25日フル稼働で働いて、で、残りの5日の休みがライヴっていうか、そういう感じ。毎月、京都でライヴ、大阪でライヴ、で、東京でライヴとかやりながら、あとは全部その店で働いてる。
- 中居:
- でも、働いてるっていっても、普通の会社員じゃないですから、そんなに大きなお金がもらえるわけじゃないですし。
- 松本:
- じゃない。だから、メチャクチャ働いて12万とかそういう感じですよね。当時、1万6千円の風呂無し、共同便所のアパートに住んでましたから。
- 中居:
- 親とはもう?
- 松本:
- ええ、もう「勝手にせぇ」というわけで。
- 中居:
- へぇー。
- 松本:
- 「25までやらせてくれ」って親に頼んで。「お願い! 25までやらせて!」って。
- 中居:
- でも、ヤンキーでも18までですよ。
- 松本:
- いや、でも僕はガラが悪くないですから。親不幸みたいなことはしてないですからね。あ、親不幸なのかな?
- 中居:
- でも、親も嬉しいでしょうね。
- 松本:
- 今はもう舞い上がってますけどね。「毎日が夢のようや」てもう。「殺したろうかな」思うぐらい。そんな喜ばんでもね、べつに。俺はずっと昔からやってねんから。でも、気持ちはわかるけどね。ほんまに心配でしょうがなかったんやと思うんやけど。
- 中居:
- でも、そのまあ、十何万のうちスタジオ代があって。
- 松本:
- うん、あって。
- 中居:
- 好きなギターも買いたいし。
- 松本:
- 買いたいし。練習もせなあかんから。そんで、ライヴやってもそれでギャラはそんなないでしょ。そんでギャラはずっと貯めていくわけですよ、ぜんぶ。うちのギターのウルフルケイスケが経理担当でね。全部ギャラは貯めていくわけですよ。で、貯めて一月のギャラのなかからデモテープ作ったりとかして。それで売ったりして、ライヴハウスで。「僕らのテープです」って売ったりとかして。また稼いで、それでまたテープ作って、順繰り順繰りやってたんです。だから、その頃はね、メチャクチャ、バイトもやってバンドもやって、すごい忙しいでしょ。まあ、若いからよかってんけど。すごい忙しかったのにプロデビューしてすっごい暇になって、すっごい暇になったのに給料は、お金自体は忙しかった時よりあったんですよ。それがもう苦痛で苦痛で。
- 中居:
- え? 苦痛って?
- 松本:
- だって、働いてないのに金がもらえるって変じゃないですか、なんか。その変さってわかるでしょ?
- 中居:
- でもね、いわゆる歌手として、アーティストとして活動するっていうことは、もうその時点でプロですからね。だから逆に安易なことは出来ないですよね。
- 松本:
- そうそう、そうそう。出来ないですよね。
- 中居:
- 勝手にライヴハウス出て自分でテープ作るわけにもいかないし。
- 松本:
- いかないんですよね。だから、ある種、窮屈なんですよ。仕事をしないでいい日っていうか、仕事のない日は本当にすることがないでしょ。バイトなんか出来へんしね。なのに25日になるとドンッとお金がちゃんとね、給料が振り込まれてるっていう。なんかその、給料制っていうかね、バンドが給料制っていうのにね、ぜんぜん馴染まなかったですね。
- 中居:
- ああ、そうですよね。
- 松本:
- なんか、身を削って働いてお金を稼ぐっていうことをバイト時代に4年間やってるから。デビューしてからのしばらくはね、すごいなんか「こんなんでええの? 俺」っていう感じでしたよね。
- 中居:
- だからあの、自分を見失う時期でもありますよね。
- 松本:
- そうそう。見失うんですよ。
- 中居:
- なんかもう自分がすごい人間になっちゃったりね。自分で勘違いする時期なんでしょうね、やっぱり。
- 松本:
- SMAPとかって、そういうの見失うんですか? 見失った時期あるんですか?
- 中居:
- SMAPは見失いかけた時に、痛い目に会いましたからよかったですよ。
- 松本:
- それ、何年ぐらい前ですか?
- 中居:
- SMAPが結成されて3年半ぐらいして、3年ちょっとしてからCDを出したんですけども。で、CDでデビューして、まあその時はもう追っかけもいましたしね。まあ、「キャー!」って言われましたしね。歌番組にも出れましたし。まあ自分たちでは「うん、いいな。多分、俺なんか芸能界で一番なんだな」とか思った時期があって。やっぱりコンサートなんかもね、小さい会場だけだけど「大きい会場でやろうぜ! こんな小さい会場で何回もやるんだったらさ、大きな所でガツンと花火上げちゃおうぜ!」とか、みんなで言ってたんですよ。その時に、前もここでお話しましたけど、大きい会場でやって、お客さんが半分も入ってなかったっていうことがあったんですよ。ダァーッてカーテンが上がった時には、アリーナ席には半分ぐらい、スタンド席には誰もいなかったってたいう。
- 松本:
- へぇー。
- 中居:
- それでやっぱり見失いかけてた自分たちを冷静に見ることが出来たんじゃないですかね。
- 松本:
- けっこう傷ついたりした?
- 中居:
- いや、ショックでしたね。もう「どうしようか?」って。
- 松本:
- 僕らもデビューして、あのね、馬鹿ですよね、今から考えたら。デビューしたらね、もうスターになれるモンやと思い込んでたんですよね。
- 中居:
- ありますよね。僕もそうでしたもん。
- 松本:
- CD作って出したらもう、そらもう行くとこ行くとこ「キャー!」ってなるんやって思ってたから。最初のデビューアルバム発売記念ライヴ、日清パワーステーションとかでやったんですわ。
- 中居:
- いいじゃないですか。
- 松本:
- そんなもん客なんかぜんぜん入ってへん。チョロチョロともう「寂しい」っていう、ほんまに。ちょっと不貞腐れましたよね。
- 中居:
- それでもやったんですか?
- 松本:
- やりました、やりました。やったけど、ぜんぜん違うねん、俺のイメージと。出ていったらもう「アアァァーッ!!」ってなると思うてたん。
- 中居:
- 「松本さーん! こっち向いて!」って?
- 松本:
- そうそう、そうそう。出てく時も、もう「押すな押すな」ってなりながら。ガァーッ引っ張られながら。
- 中居:
- 「やめろよ、おまえたち」みたいな?
- 松本:
- そう。ぜんぜんならへん。パラパラパラーッてもう。それがすっごいショックやった。でも、今、思ったらそんなん当り前やん、やっぱりね。いや、それぐらいなんか甘かったんですよね。
- 中居:
- じゃあ、変な話、アマチュア時代のほうが活気があって?
- 松本:
- そうやねん。
- 中居:
- 意欲もあったんじゃないかって?
- 松本:
- うん。アマチュアの頃にものすごいド素人っぽい、そういう一生懸命さひた向きさみたいなのをガァーッてやってた時のほうがバンドのテンションも良かってん。だから、このビデオをこういうふうにあの、なんて言うんですかね? 「やぶれかぶれ」があって、デビュー作から次の「借金大王」っていうビデオを作るまでは2年ぐらい間が空いてんねんけど、その「借金大王」にとりかかった頃は、もう一回アマチュアに戻った時のような。ビデオ制作も、それからレコーディングも含めてね。全部もう一からもう一回やり直しっていうか。もう客が少なくてもぜんぜん恐くないっていうかね。もう一回喫茶店で働いてた時ぐらいのテンションが戻ってきとって。ほんで、とにかくまあやってみてね。で、結果的にまあ、それがよかったんですけどね。その頃ほんで給料なかったですからね。
- 中居:
- え?
- 松本:
- ええ。「借金大王」の頃は。
- 中居:
- 給料?
- 松本:
- 給料ね、2年間あったんですよ。デビューしてから。で、ポッてもうゼロになったんですよ、給料が。
- 中居:
- え? それ、どういうことですか?
- 松本:
- あの、事務所が「ちょっと、もう給料出されへん。悪ぃ、バイトして」って、そういう。「嘘や!」って。で、もうとにかくレンタルビデオ屋でバイトしたりとかね。
- 中居:
- それ、プロになってからもバイト?
- 松本:
- うん、もちろん。で、あの、ある奴はマクドナルドの夜間清掃員やったりとかね。
- 中居:
- でも、それってまだ1年とか2年とか…?
- 松本:
- 2年前、2年前。
- 中居:
- つい最近ですね?
- 松本:
- つい最近ですよ。2年前。給料なしで。バイトしながらやってましたよ。
- 中居:
- この間ですよね?
- 松本:
- この間ですよ。テレビ出てええ格好しても、給料ないんですから。夜になったらバイトしてましたから。
- 中居:
- へぇー。
- 松本:
- だからね、それがよかった、すごい。あの、「もう、何もない」っていうかね。「もう捨てるもんは何もない」っていう。
- 中居:
- 失うものがない。
- 松本:
- うん。失うもんない。その、そこから沸き上がってくる反逆精神というかね。
- 中居:
- そういう力っていうのはもう、何にも代えられないですですよね。
- 松本:
- 代えられない。何よりも強いですわ。
- 中居:
- そうですよね。そういうのって本当、お金にも代えられないですし。自分たちを冷静に見るって、やっぱり何かのきっかけがないと出来ないと思いますけど。やっぱり、痛い目じゃないですけどね、やっぱり一回、自分で経験しないとわかんないことってあるんですよね。
- 松本:
- あるんですよ、本当に。だから、売れなかったことよりも、もしかしたらよかった。その「もう何もない」っていうほうが。単に売れなかったら、どこが悪い、誰それが悪い、事務所が悪いとかなって人に責任なすりつけて「俺ら何にも悪うない。俺らは音楽一生懸命やってるだけや」ってとこにハマってゆくけども。もう、それ以前に自分らの音楽をもう一回見つめ直すきっかけにもなったしね。だから、このビデオはね、そういうウルフルズのある意味で本当の歴史ですよね。
- 中居:
- うん。これはだから、「ウルフルズってどういうグループ?」って聞かれた時に、このビデオ一本ポンッて渡して観てもらったら一番わかりやすいかもしれないですね。
- 松本:
- そう。これはわかりやすいですよね。
- 中居:
- テレビだとやっぱり、テレビの番組の都合もありますし。例えばレコード会社の問題、事務所の問題ありますし。やっぱりやらなきゃいけないことっていうのはもちろんあるでしょうけども。でも、本来のウルフルズはこれなんだと。
- 松本:
- そう。だから「何処へ向かっていくのか?」っていうのはね、僕、すごいなんか新鮮に聞えたんですけど。それ、ちょっと突き詰めるわ。俺らほんま、何処へ向かおうとしてんのか考えてなかったわ。
- 中居:
- でも、それがでも逆にいいかもしれないですよね。アマチュアの時代は目標があって。「売れてやる」プロの世界で「お客さんの前で歌ってやる」。それがいちばんの目標だったわけじゃない。でもプロになってから目標を持たずに、何かに向かって。何かに向かってるんでしょうけど、その目的地がわからないような活動っていうのは大切なんじゃないかな? 僕なんかもやっぱり、わかりませんもん。
- 松本:
- 何処へ向かおうとしてんのか?
- 中居:
- うん。なんでお笑いをやっているのか。なんで芝居を、ドラマをやっているのか。今なんで歌ってんのか。でも、ライヴやった時にね、やっぱり喜んでくれる人たちのためにやってるんだ。なにかの為にやってる。誰かの為にやってるんじゃないかっていうのがやっぱり考えますけどね。
- 松本:
- だから、お笑いやったりとか、芝居やったりとか、歌歌ったりとかしてる、どれにもべつに「なんで俺がこれをやらなあかんのか?」っていう疑問はないでしょ?
- 中居:
- ええ、ないです。
- 松本:
- 僕もないんですよ。「なんでこんな馬鹿なことやらなあかんのか?」っていう疑問がないんです。なんで歌歌のかっていう疑問もない。全部がね、同じぐらいのレベルでね、やりたいことなんですよね。だからそれは、「もっとカッコよくビシッとしてれば、それだけでいいのに」って思ってる人もいるかもしれないし。「もうそこまでお笑いやるんやったら、お笑いとかやらんかってもいけるんちゃう?」って思ってるひともおるかもしれへん。でも、僕の中ではね、どれだけでもね、満足できない。どれも並行して大事なもんなんですよね。
- 中居:
- まあ、ビデオの中にもですね、軽いタッチですけどもお芝居的なところもありますし。また、お笑いの要素もありますし。
- 松本:
- 芝居が下手でね。嫌なりますよね、ほんまに。教えて欲しいわ、ほんま。
- 中居:
- お芝居はでももう、生きてれば誰でも出来るようなことだと思いますしね。でも、ビデオで一番よかったのは最後のね、この「勝利の女神」のね、主題歌。僕、この「バンザイ」のビデオ観て、「あ、やっぱり暖かいグループなんだな」っていう。全部やっぱり、全て趣向を凝らして、何かを考えながらやってるみなさんがあって。で、いちばん最後に体育館の中で、で、海辺で歩いてる。それを見てね、やっぱり結局はみんなで暖かいものじゃないですけども、すごく人間味を感じてね、最後のこの一曲って大事だなって思いましたね。
- 松本:
- あ、それはね、監督のタケウチは本当、喜びますよ。「このビデオが撮りたくて全部を撮ったんや」って、もう断言してますからね。
- 中居:
- 例えばここに同じようなのがあったら、「あ、こういうグループか」って、それはそれでまたみんな認めるでしょうけど。またこの一曲があることによって、いろんな方面で、いろんな見方でウルフルズを見ることができるんですよね。
- 松本:
- そうそう。そうやねん。それをわかってるかな? わかってくれるよね? そうなんよ。
- 中居:
- 僕は感じましたよ。
- 松本:
- いやぁ、素晴しい。そうそう。で、僕もね、このビデオがいちばん自分のなかで出来上がってく過程が見えなかったっていうかね。撮影してて監督に全て任せてたっていうか。で、やっててどんな絵になんのかな? ってわかれへんかったんですよね。だから、ある意味でいちばん客観的なウルフルズっていうのが監督によって描き出されてるっていうかね。そういうビデオですよね。もう「これがやりたかった」って言うもんな、タケウチとか。
- 中居:
- すごく暖かくって、なんかね、見てる人が昔を、小さい頃じゃないけども、僕なんかの学生時代、青春時代じゃないですけど、その頃を思い出させてくれるような感じだったんですよね。自分の友達なんかとね、なんか遊んでるような、悪いことしてるような時のことを思い出すような。やっぱりこれがあるとないとじゃ、けっこう違うんじゃないかな。
- 松本:
- そうですよ。そうそう。これが出来たからね、もう次にもっと過激なお笑いっぽいこともやれるし。
- 中居:
- そうなんですよね。戻るところがあるじゃないですか。
- 松本:
- そうそう。
- 中居:
- いいですよね。すごい好き。本当、好き。
- 松本:
- いや、ありがとうございます。
- 中居:
- で、疑問なんだけど、なんで渡辺満里奈が出てんのかな? って。僕、びっくりしたんですよ、「サン・サン・サン」。
- 松本:
- あ、これね、このストーリーがね、最初出来てたんですね。で、僕とタケウチは家の近所のファミリーレストラン行って、次の「サン・サン・サン」のビデオどうしようか? て二人で向かい合ってね、カレーとか食いながらあれこれ台本書いてたんですよ。で、「マドンナ役って書いてあるけど、マドンナって女の人使うの?」ってタケウチに聞いたら、「あんまりモデルとかじゃなくて、有名なマドンナ役が欲しいねんけど、誰か知り合いいないの? トータス君」ていうから。「うーん? ぜんぜんいないんですよ。売れてないから、ぜんぜん」て。
- 中居:
- だって接点がないでしょ? 会う機会もないですし。
- 松本:
- で、グルグルと頭のなかフル回転して、誰か芸能界にと思って考えてんけどいない。で、そう言やパワステのライヴに渡辺満里奈さんが観に来てくれてたっていう話を聞いたなと思って。
- 中居:
- あ、観に?
- 松本:
- ええ。なんかね、好きだったらしいんですよ。で、そのパワステの業界招待者のとこらへんにいたらしくて。「ちょっといっぺん頼んでみようか」っつったら、なんか快く引き受けてくれて。
- 中居:
- へぇー。
- 松本:
- そうそう。それで出てらっしゃるんですよ。
- 中居:
- へぇー。いいですよね。普通の一般人としてのウルフルズが歩いてて、で、ステージ終えたら本物のウルフルズが歌ってるって。「なんでこれ、渡辺満里奈さんが出てらっしゃるのかな?」って。観てる人は「なんで?」って疑問もってる方たくさんいらっしゃると思いますね。でも、今後も音楽を中心にやっていくと思うんですけど。なんか進展じゃないですけど、今度はこんなことをしてみたいじゃないですが、こんなことを見せたいじゃないですけど。
- 松本:
- あ、この先ね。それがね、いつもね、聞かれて困るんですけどね。あの、何もないんですよね。どういうことがやりたいっていうのがね。とにかく、その時その時、自分らが面白がってやれることを最優先ていうか。本当に何処へ向かって行くのかっていうことを決めたくないというかね。だから、なんか、一通り自分らが聴いてきた音楽、例えば「サン・サン・サン」がサーフロックだったりとか。「ガッツだぜ」がディスコサウンドやったりとか。そういう自分らが好きだった音楽のスタイルをどんどん取り入れるっていうことは、無限にこれからもやれていくとおもうし。じゃあ、そんなこと一生懸命やったって面白くないし。じゃあ、何がやりたいんか? っていうとそれがね、ないんですよね。だかもう、その時その時、自分のアンテナをピンッと立てといてね、その時閃いた、その時のベストなものっていうか、感じておもろいと思うものをやっていくのが一番楽しいやろうなっていう感じでしかないんですよね。
- 中居:
- じゃあ、例えば自分の好きなことやることによって、周りの人が「それ、ちょっと違うんじゃない?」と。まあ、出しても評価も低いと。それでも多分そのやりたいことを突き通すでしょうね。
- 松本:
- うん。それはもう、やり通すと思う。だけど、踏み外したくはないですけどね。やっぱりその自己満足とこへだけは行きたくない。僕、本当に売れない時に自分のことしみじみとよくわかったんですけど。僕はね、評価されないとダメな人間なんですよ。だから、やっぱりいろんなタイプの人がいてね。やっぱり「トータスさん、僕、この歌、本当、よくわかります。まるで僕が日常考えてること歌ってるような、こうこう、こういうよう心理描写ですよね?」って言われたら、「おまえなんかにわかられてたまるか!」っていう歌い手さんもいると思う。そらもう自分だけが理解してる自分の歌やっていうこだわりもってやってる人はいると思う。僕はだけどね、違うんですよね。もう、人が理解してくれないと生きていけない。人に評価されないと、自分の存在理由がわからないっていうか。
- 中居:
- ああ、わかります、わかります。
- 松本:
- だから、絶対に一人よがりのものはやりたくない。
- 中居:
- でも、そういう気持ちを持ってるっていうことは、逆にもう安心しましたね。今までのその、アマチュア時代から自分たちの好きなような、「これだ!」って自分たち思ったことを絵にしたり音にしたりしてるじゃないですか。だから、今になって逆に自信を持っていいと思うんですけども、でも、自分よがりじゃない。僕、今、ちょっと安心しましたね。
- 松本:
- いや、本当、「この想い届けたい!」「絶対、届くはずや!」って自分に確信があればね、周りが反対してもいくかもわかれへんけど。自分にその確信がなく、ただこれがやりたいっていうことだけを突き詰めるっていうのは、僕には向いてないと思うから、それはしないと思うけどね。
- 中居:
- じゃあ、僕、一つだけいいこと教えてあげましょう。あの、やっぱり去年、今年ぐらいからあがってきましたよね。これからやっぱり評価をしてくれる人っていうのもね、いろんな角度から見て、いろんな評価がある。で、低い評価をする人もいれば、高い評価をする人もいる。多分、芸能界ってここが嫌だなと思うんですけど、高い評価をする人がたくさん出てくると思います。
- 松本:
- そうですよね。
- 中居:
- で、うわべだけの評価っていうのも出て来るんですよ。「いゃぁ、もう、これ良かったよ、松本さん。これ、本当にこの曲いいですねぇ。詞もジーンときますしね。ステージ見ても溌剌としてて、今やっぱり日本一ですね」。こういうふうに言ってくる人がですね、必ずいると思います。で、その人が本当に本心で思ってるかどうかはわかんないですけども。僕はそういう人が増えてくると思う。実際に僕なんかもそういう経験ありますし、それは素直に聞き入れなきゃいけない。僕もね、そういう自分が嫌なんですけども、それを素直に聞き入れて喜べばいいんですけども、どっかで「あ、この人は何か違うことを考えているんじゃないか?」っていう、こういうふうに思っちゃいけないんですけどね。素直に「あ、どうもありがとうございます」ってね、心から喜べばいいんですけども。なんか一つ考えてるんじゃないかとか、なんかヒネリを入れてようとはしてないかとか、なんか魂胆があるんじゃないかっていう疑いを持っちゃうんですけど。でも、そういう人はいなくもないっていうこと。
- 松本:
- ええ、そうですよね。
- 中居:
- それでダメになっちゃった人もいるんですよ。
- 松本:
- ああ、ああ、真に受けてね。なるほどね。
- 中居:
- でも、そういう人、本当多いですよ、この世界。
- 松本:
- あ、そうですか。
- 中居:
- 僕なんかも一回、潰されちゃいましたからね。
- 松本:
- でも、よくあれですよね。それでちゃんとまた這い上がりましたよね。
- 中居:
- だから、みなさんと一緒で、こういうのを自分たちで経験することによってね。でも、松本さんなんて今、話聞いてると、そういう周りの人の環境でなんかね、自分を見失うようなことはないなと思うんですけどね。
- 松本:
- やっぱり、あれ? その時は6人で話し合ったりとかしながらやってったの?
- 中居:
- ステージ終わったらもう、無言ですよ、みんな6人揃って。ジュースも飲まないで。もう木村なんか「っざけんなよ」。吾郎はなんか知らないですけど、ずっとドライヤーしてんですよ。あれれれれれ? とにかくショックでしたね。それからだから、他のグループとは違うことやろうって。で、バラエティをやり始めたりしたんですよね。まあ、本当に自分で感じないとわかんないことってたくさんありますよよね。
- 松本:
- SMAPってほら、前、僕、違うテレビ番組で会った時に、6人で座ってても、ぜんぜん喋らないですよね。カメリハとかランスルーの時とかね。いや、僕ね、ダメだって言ってんじゃなくて、ずこいね、僕らと共通するもんを感じたん。僕らもそうでね。4人でね、喋らないですよ。例えばトイレで会うと、メチャクチャ気まずいっスよね。
- 中居:
- それ、おかしいですよ。気まずくはないでしょ、べつに。
- 松本:
- いやいや、気まずいよ。トイレで一人用を足してると、例えばウルフルケイスケが入ってきた時に「うわぁ、来んなよ、おめえ」ってなんか。
- 中居:
- 何を喋ればいいのかわかんない?
- 松本:
- そうそう、そうそう。もうメチャクチャ照れ臭いっちゅうか、恥ずかしいっていうか。
- 中居:
- そうですか? それはないですけどもね。
- 松本:
- いや、すごい肝心な、例えば自分たちのなかで壁を迎えた時とか、何かをどうにかせなあかんとか、そういう時はスパッてその空気になって、4人でガァーッて話せるんやけど。平穏無事な時っていうのは、タクシーで二人ずつ乗るのが嫌なぐらい何て言うかな? 目を見て話せないっていうか。変な照れがあんのやね。SMAPもそうじゃないの? なんか俺、そういうの感じてんけどな。
- 中居:
- うーん? でも、そう言われてみると…?
- 松本:
- ぜんぜん喋らなかったですよ。
- 中居:
- そうですね。喋んなかったですかね?
- 松本:
- まあ、それはずっと6人でやってるでしょ。僕らもずっと4人でやってるでしょ。で、もう話すこともないっていうのもありますよね。空気と空気でこう。
- 中居:
- だから、毎日のように会ってますし、やっぱり同じように8年間ですし。だから「さあ、今日は何を話す?」っていう恋人同士でもないですし。でも、一番いいのは何も喋んなくても不自然な空気は流れない。
- 松本:
- そうそう、そうそう。それそれ。だから、家族ってそうじゃないですか。お母んとか、べつに話すことがなかったら二人で同じ部屋におっても喋らないでしょ。
- 中居:
- ええ。
- 松本:
- 喋ることがあれば喋るけど。でも、べつに気まずい空気じゃないっていう。仲が悪いわけじゃない。むしろ仲ええぐらい。仲よすぎてそうなってるって感じが。なんか僕、近い空気を感じてんねんけどね。、勝手にね。
- 中居:
- でも、トイレで二人になると、ちょっと気まずいみていな?
- 松本:
- メンバーとはね。
- 中居:
- それ、おかしいですよね。
- 松本:
- なんでやろな?
- 中居:
- こんだけ付き合ってんのに。
- 松本:
- だから、楽屋とかでも4人きりにされたくない。
- 中居:
- 誰かマネージャーさんであったり?
- 松本:
- そうそう。スタッフがいてくれんと。4人だけになったら「ドッキリ」みたいな空気になると思うよ。ほんま。何かおかしいなぁっていうかね。そんなんある。だから、SMAPって僕なんかよりずっとずっと若い人たちやのに、その辺がすごい洗練されてるっていうかね。人間関係がすごくよく出来てるなぁっていうを、僕、それいちばん感心したんですよね。
- 中居:
- そうですね。だから、決して喋んなくても不自然じゃない。でも、うちらは、ウルフルズのみなさんもそうですけど、僕らもやっぱり仲いいんですよ。
- 松本:
- トイレで会ったりしたらどんな感じ?
- 中居:
- トイレで会ったら、なんも喋んない。
- 松本:
- なんも言わないでしょ?
- 中居:
- ええ。なんも言わない。かといって、なんか喋んなきゃいけないなぁっていう焦りはべつにないし。
- 松本:
- ないでしょ。でも、横で用を足されると嫌なことない? 出来れば一人のほうがいいっていうことはない?
- 中居:
- それはトイレだからじゃないですか?
- 松本:
- いや、べつに。うーん? ないかな? そういうのな。
- 中居:
- 例えば、スタジオまで歩いていくのに4人で一斉に固まって行くんですか?
- 松本:
- ううん、バラバラで。
- 中居:
- バラバラで。その時になんか一人で行って。途中で一人がトイレからパッと出てきちゃったりして二人で歩いたら?
- 松本:
- いや、なんかちょっと嫌ですよね。嫌って言うんかな? 嫌って言うんでもないけど?
- 中居:
- テレビを御覧のみなさんに、どういうふうに例えればいいんですかね?
- 松本:
- どういうふうに例えればいいのかわからん。
- 中居:
- 学校の同級生でもないですしね。
- 松本:
- じゃない。大親友でもこんな空気じゃないと思う。もっとなんか、自分の一部みたいな感じがあって。なんか変な感じがあるんやけど。SMAPは仲いいんですか? 基本的に。
- 中居:
- 僕ら仲いいですね。だから本当、リハーサルもそうですけど、喋ってないと「SMAPはね、テレビじゃないとね、みんな喋んないのよ」とか言われたりするんですよ。まあ、そういうふうに思う人は思ってもらって構わないんですけど。
- 松本:
- 僕もそう思う。
- 中居:
- そういう人はそういう人で、そこまでしか見てくれない人だからいいなと思うし。でも、かといってね、日頃から、喋ろう喋ろうと心掛けてるわけでもないですし。本当に言わなくてもね、喋らなくても不自然な空気が流れるチームじゃないってありますしね。でも、仲悪いわけじゃ?
- 松本:
- ぜんぜん仲悪くないですよ。仲はいいと思う。仲良過ぎというか、わかり過ぎてるかもしれん、お互いのことが。だけどウルフルケイスケ・トータス松本不仲説っていうのはあるらしい。
- 中居:
- でも、それはこうやってメジャーになっていくに連れ、そういうバッシングじゃないですけど、そういうことってどんどん出てくると思うんですよ。
- 松本:
- うん。面倒臭いけどね。
- 中居:
- それはでも、気にしてたら仕方のないことですしね。
- 松本:
- なんか心配みたいのもあるんやろな。
- 中居:
- やっぱり今後もそうですけども、なんか見てる人であったり聴いてる人に、常に期待と刺激みたいのがやっぱり与えて欲しいな。与えてくれればいいなって思いますけどもね。
- 松本:
- だから、「ええーっ!!」っていう、そこをくすぐりたいというか。「その手で来るとは思わへんかった。でもなんかちょっと嬉しいなぁ」っていう気分に、常に一般の人をさせていたいっていうね。「ああ、ウルフルズらしいねぇ」じゃなくて、ウルフルズらいしねんけど「まさかそう来るとは思わんかった」っていう。そこにだけ集中してやりたいっていう。
- 中居:
- 常に裏をかく、常に意表を突く。
- 松本:
- うんうん。そうしたいなと。
- 中居:
- じゃあ、今後のみなさんの活動もけっこう楽しみだったりしますね。これから何しでかすかわからない、何を打ち上げるかわからない。でも、とりあえずウルフルズのグループを知りたかったらこのビデオですね。
- 松本:
- ええ。これは、よくわかります。
- 中居:
- これは本当、ストレートになんか「これがウルフルズです」ってプロフィールじゃないですけどね。これを観ていただければ、何も語らずにね、わかるんじゃないかと思いますけど。なんか、感想どっちでもいいんですけど。「わぁー、すごい良かったー」でも「何や? これ。アホやん」でもええし。見終わってどっちにいくかは、それはもうお任せします。
- 中居:
- そうですよね。強制的に「見ろ」とも言わないし。そういう自由なところがやっぱり、こういう現象になってると思いますけどもね。今後の活動も楽しみにしてます。
- 松本:
- はい。
- 中居:
- 期待してますんで、またSMAPと一緒になることありますけど、その時はまた。
- 松本:
- よろしくお願いします。
- 中居:
- はい、今週のゲストはウルフルズ、トータス松本さんでした。ありがとうございました。
- 松本:
- どうもありがとうございました。