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NON EDIT TALK : 小室哲哉★徳永英明


小室:
こんばんは、小室哲哉です。えぇとですね、先週は野球が伸びまして、通常だったら1時ぐらいにオンエアされるんですけども、2時50分、3時近くにオンエアになってしまって、それでもみなさん、たくさんの方がですね、見てくださったそうで。井上陽水さんとだったわけですよね。井上陽水さんと、あんなおっとりしたトークを3時半ぐらいまで見て、眠くないんですかね?ということでも、すごく視聴率よかったということで、ありがとうございます。えぇと、今日はですね、なんかすごい久しぶりのテレビ出演でこの番組を選んでいただいたのか、ちょっとわかんないですけども。とにかくその2年近くぶりの出演で、一発目で今日、出演していただいてるんですが。えぇと、今日のゲストは徳永英明さんです。

徳永:
どうも、こんばんは。

小室:
どうも、こんばんは。ちゃんとお話するのは初めてですよね?

徳永:
そうですね。いろいろ関連的なことでは、だいぶ昔から僕はあの…。

小室:
つながりはあるんでしたっけ?

徳永:
ええ、あの、あんまり言いたくないようなつながりとか、いろいろと。

小室:
あ、ああ、事務所のとかね。

徳永:
そうですね。

小室:
プロダクションのなんか、知り合いの知り合いとか。

徳永:
ええ、ええ、まあ。いろいろと、はい。

小室:
僕も徳永さんも、ずいぶん離れちゃいましたよね、そこらへんからは。

徳永:
ええ。僕はもう、だいぶ前にそこは辞めました。ー

小室:
そこは。僕ももう、名前も忘れちゃったけど、なんとなくイメージはあります。六本木ですよね?事務所ね。

徳永:
そうです、そうです。で、昔『ゴリラ』とか作ってた頃の…。

小室:
TMの?

徳永:
ええ、ええ。あのもっと前。だから、えぇと85年とか。

小室:
デビューって何年?

徳永:
僕は6年です。

小室:
6年ですか。ウチは84年なんですよ。

徳永:
そうですよね。だから事務所にいくと、TMのカセットが置いてあって。

小室:
あ、そうか。けっこう徳永君って、もう長いんですね、じゃあね。86年からで。

徳永:
長いですよ、ええ。

小室:
まあ、僕はもっと長いですけど、僕84年より前でバックバンド時代で5年ぐらいやってましたから、長いけど。でも、なんかもうちょっと、最近ていうことはないけど、でもまあ80年代だけど、86年とかいうと、TMのデビューとかと近いもんね。

徳永:
ええ、そうですね。

小室:
そうか。なんとなくつながりがあるんですよね。

徳永:
そうですね。あの、サンパレス福岡で、僕が次の日で、前がTMで、コンサート見たこともあったし。

小室:
あ、コンサート。

徳永:
木根さんと長浜ラーメンで一緒になったこともありましたね。

小室:
あ、本当に。そうですか。あ、なんか、木根はよく、徳永君と会ったとか話してたこと、聞いたような記憶ありますね。

徳永:
はい。なんか、彼が司会してるコンテストにゲスト出演したりとかやってましたからね。

小室:
あ、そうなんですか。まあ、懐かしい話ですよね。

徳永:
そうですね。

小室:
ずいぶんもう、かなりね。

徳永:
まあ、いろいろあって、酸いも辛いも踏み締めて。いろんな意味で。

小室:
僕なんかは間接的ですけど、雑誌とか新聞とかでそういうの、コンサートツアー中にね、喉ですか?

徳永:
ええ、声帯ポリープ。

小室:
とかそういうのとかで、やっぱり休まなきゃいけなかったりとか。そういうのでずっと休養してたのかな?とか思ってたんですけどね。

徳永:
なんなんですかね?あの、だから、デビューしてだんだん、だんだん、本当は音楽は楽しいはずなのに、追い詰めるようになって。で、その追い詰めていった最後が声帯ポリープで。だから、バランス崩して病気になって。そこからさらに2年前に出した『ノスタルジア』ってアルバムが、もう究極ななんか、心の中を探っちゃったぐらい追い詰めちゃって。そうなると、テレビも否定的に見てしまうし、なんか楽しいこと全部、否定的に見てしまうようになって。で、それが2年ぐらいあったから、もうそんな時期にあんまりテレビに出てもね、表に出ても仕方ないなって思ったし。逆にこう、地方回って、なんかリラックスしながらコンサートやってる方がよかったんで。で、まあ、そっからウマい具合に脱出できて。

小室:
あ、そうなんですか。

徳永:
みんなもう楽しく、なんか今回から、テーマカラーもイエローかなんかにしようかな、っていうぐらいの180度ぐらい変われたんで。

小室:
あの、髪型とかもずいぶん変わりましたよね?雰囲気が。

徳永:
うん。小室さんだってぜんぜん変わってるじゃないですか。

小室:
僕はもう、メチャクチャ変えてるから。いつも違うんですよ。会うたびに違ったりしますけど。ただ徳永君なんかも、もうちょっと違うイメージあったから。

徳永:
デビューの時はね、マッチみたいな頭してたんですよね、昔ね。で、だんだんなんかそうですね、ナチュラルっていうか、なんかこう、お洒落することや、遊びにいくことよりも、もっとやんなきゃいけないことがあるって、だんだん追い詰めて。で、ようやくフッきれた瞬間に、なんか自分を愛してあげたいなって。だから、お洒落したり、なんか遊びいったり。

小室:
なるほどね。いつもゲストの方にも言われて、けっこう僕の立場っていうのはある種ズルい立場で、プロデューサーであったり、バンドの中でもリーダーなんだけどセンターに立たないで、歌わないじゃないですか。まあ、歌えないってのもあるんですけど、歌ってない部分で、いつもとりあえずセーフティーなところを持ってるようなとこあるから、ソロのヴォーカルの人で、しかも詞も曲もとにかく全部トータルでやってる人の、例えばアルバム一枚作って、それをツアーまでやって、プロモーションもしてっていう労力がね、どれぐらい大変かはすごいわかるんですよ。で、自分は見てるところで、自分がやってる分プラスそこでやってる人の分もやんなきゃいけないっていうふうに思うから。これは倒れないわけないなっていうぐらい、一人でやってる人の大変そうなの見てて、で、特に徳永君なんか、今、僕、初めて声、聞いたんですけど、けっこうハスキーですよね?

徳永:
普段は、ええ。

小室:
ねぇ。それであの声が出るわけでしょ。やっぱ、それだけなんていうのかな?やっぱり体力的にも使うのかな?とかって今、思ってて。

徳永:
やっぱ、年間100本平均でライヴやって、結局、俺が倒れたら代わりがいないし、まあ、TM3人いてね、例えばあの宇都宮さんが調子悪かったら、誰かがカバーできるのか、それはわからないけども、僕はなにもないから。

小室:
そうなんですよね。僕、実際ね、40度ぐらいでツアーのコンサートやった時あったんですけど、例えば出なくても、コンサートやりましたからね。

徳永:
へぇー。

小室:
一応、歌があって、木根君がちょっと謝りつつ、楽しいトークを繰り広げてですつどね、いわゆるファン集状態にもってけば、なんとかコンサートがなっちゃう時もあったんですよ。でも、ショウとしてはね、決して完成されたものじゃなかったかもしれないけど、一応、急場しのぎっていう意味ではできてたりしたこともあって。そういう時、やっぱりグループとかね、ヴォーカルの人がちゃんとしてると強いなとか思ったし。

徳永:
あの、昔『ベストテン』かなんかわかんないけど、静岡のどっかで合宿リハかなんかやってて。

小室:
ネムの里かな?

徳永:
かな?で、面白かったのが、黒柳さんが「小室さん、何やってんですか?」っていったら、小室さん出てなかったのね、その場には。宇都宮さんしかいなかったんじゃないかな?「いや、小室はあの、今、打ち込みやって、アレンジやってます」って。「はい。じゃあ、木根さんは?」「ええ、木根は今、執筆中です」「じゃあ、あなたはそこで何やってるんですか?」って言われて「僕はダンスの練習をやってます」っていう話を聞いた時に「面白いバンドだな」と思ったのね。だから、バンドってのは普通なんていうのかな?俺の感覚からすると同じスタジオに入ってね、自分たちの映画を作るように景色作っていくって感じでしょ。それが

小室:
さんが全部やってて、木根さんは執筆してて、宇都宮さんがダンスの練習をしてるっていうのが、なんか同じ土壌の、まあロックっていうと変かもしれないけど、そのスタンスの中にいて、面白いバンドだなって。ちょうど『SelfControl』のあたりかもしれない。

小室:
の頃かもしれないですね。まあ、バンドっていう感覚もね、俺たちの場合はあんまりなかったっていうのもあるんですけど。まあ、友達から入ったっていうのもあるし。

徳永:
あ、そうなんですか。

小室:
だからね、最近ダウンタウンとかの話とかよく聞くから、聞いたりするんですけど、あのTMっていうのはどっちかっていうと、ああいうお笑いの人達の形態に似てたと思いますね、組み合わせ的に。お笑いの人たちもやっぱり、プライベートはほとんどね、一緒じゃないですよね。

徳永:
そうですね。ダウンタウンなんかもそうみたいですね。

小室:
やっぱあれは芸のためなのかわかんないんですけど。遊び仲間もなにも全部バラバラで、やることも違うしね。なんか仕事もけっこう、本当に二人以外の時は違うことやったりとかで。ああいう方が鮮度が、新鮮度が保たれるみたいでね。

徳永:
まあ、あれだよね。僕もバンドとかにいうんだけど、一緒にメシ食って、一緒に遊んでたら同じ景色しか見えないから、バラバラに遊んだり、バラバラにメシ食って、違う景色を持ってきて集まった時にね、すごくいい刺激があるんじゃないかなっていってんですけどね。

小室:
バンドはなんかまあ、そういうとこもありますよね。だからね、それをね、一人でやるのが大変だと思うんですよ。一人の中でいろんな、こういうふうにしてみたり、ああいうふうにしてみたりっていうのがね。すごい大変なことだからね。

徳永:
だから結果的に追い詰めないといけなくなってしまうんだよね。だから、僕もそうだし、やっぱりまあ、名前は出していいのかわかんないけども、デビューの時爽やかだった人が、だんだん、だんだんソウルにね、なっていくのっていうのは、やっぱりもう追い詰めてるからだろうし、逆にバンドでさ、だんだん、だんだんヘヴィーになってく人達もいるじゃないですか。その代わり、解放されて一人になった時にすごく明るくなる人もいて。僕なんかはだから、そういう意味じゃあ、やっぱり一人だったが故に、なんでもかんでも相談しながらやって。で、やっぱりそいつのこともわかりたいから、そいつの悲しい部分も自分が背負うって気になるでしょ。そういったところからだんだん、だんだん自分が痩せていっちゃって、で、声が出なくなってっていうか。だからもう、今は、この前、打ち合わせでもちょっといってたんだけども、あの誰だっけ?イーストエンド…。

小室:
ユリですか?

徳永:
『マ、イッカ』とか『ダヨネ』とか。俺は本当はアレでいいんじゃないかな?って思うんだよね。僕、35歳なんですけども、もうTPO的に35のTPOで「だよね」「ま、いっか」でなんかいいような気がする、今は。

小室:
なるほどね。それ音的っていうか、曲のなんていうんですかね?今まで僕も、ちゃんと聴いてるわけではないんですけども、シングルとか聴かせてもらったりとか、流れてきたりしたので、すごく僕は勝手にブリティッシュ・ロックっていうかね、あの、それももしかしたらプログレとか、ああいうの好きだった人なのかな?って思ってて。

徳永:
ああ、そうなんですね。

小室:
そうですか。

徳永:
ええ。

小室:
それでずっと感じてて。だからあの頃の詞とかって、けっこうネガティブなものっていうか「なんで僕は生きてるんだろう?」とか「ここにどうしているんだろう?」とかっていうのがテーマだったりするでしょ。で、ああいうのとかもあって、音もすごくそういう匂いがしてたんですよ。なんで、そこらへんと徳永英明っていうキャラクターとね「この先、あの人はどこに持ってくのかな?」っていうのは、そんなに真剣に考えてるわけじゃないんだけど。

徳永:
プロデュースしてくれんのかな、と思ったら。違うか。

小室:
ポッと聴いた時にね、そういうこと考えたことあったんですよ。アルバムの曲じゃないと思いますけど。シングルでもけっこうキーボードとかすごく、イントロからエンディングまでがドラマ仕立てになってたから。これ、きっとシングルで、もしかしたらすごく「売ろう」とか「売らなきゃいけない」っていう時と、そういった自分の音楽性や詞のこととか、そういうのに、いわゆる二つの組み合わせですよね。そこらへんはどうしてんのかな?とかね、思ったこともあったし。

徳永:
だから、やっぱりブリティッシュ・ロックがすごい好きだったし、なんかあの、なんていうのかな?MTV見ててもね、アメリカとイギリスっていうのは鮮明にわかるじゃないですか。同じような雰囲気でやってても「あ、これアメリカで、これイギリスだ」っていうの。

小室:
相変わらずぜんぜん違いますよね。

徳永:
やっぱり周りに、後ろにある風景っていうか、イギリスの方がすごくモノクロ感じるし。で、なんかあの、本当に自分らの生まれ育ったことであったり、今の生活状況の中で「一体どうなってしまうのか?」っていうことを歌ってる。アメリカっていうのはなんていうのかな?まあ、変な言い方かもしれないけど、僕からすると嘘臭いっていうか「おまえの本心なのか?」っていう。なんか、どっかにハッピーを求めて、結果がハッピーにいきゃあいいんだっていうようなところで、逆行してやってるような気がするのね。だから、どうしてもなんか、気が付けばイギリスのミュージシャンだっかり聴いてたから。なんかもう、本当にその世界で、けっこう景色が。丘の上に自分が立ってて、そこから夕日を眺めてるようなね、そんな感覚でいつも曲作ってたし。逆に808とかね、ああいうものをずっと淡々と流して、同じリフでいっても、パッドも一つだけ入れて。そういったところにすごいカッコよさっていうか、そういうのも受けたね。

小室:
そうですよね。あの、その2年振りでリリースなりなんなりするわけですよね?

徳永:
はい。今日かな?

小室:
基本的なそういうサウンドの発想っていうのは、同じようなことでやってんですか?

徳永:
あの、基本的にはやっぱり、どっちかっていうとイギリス寄りだと思うんだけども、今まで僕はあの、まあ小室さんほどじゃないけども、僕はピアノで曲、作りますかけども、今回から、やっぱりすごくギターを意識したっていうか、なんかピアノでずーっとやってきた…ピアノってやっぱり追い込んでしまうっていうか、追い詰めてしまう、どんどん、どんどん入ってしまう。で、ギターだったらなんか、リラックスできるし。で、2年振りってことで、まあサウンドもちょっと楽なギターサウンドだけど、そこにこう、塩・胡椒とかソースをかけることはやめようと思って。今回はなんか2年間さがしてきた無農薬野菜とか、上質の地鳥の、本当にこうウンコの付いた卵とか、料理で言えばね。そういったところで勝負したいなっていうかんじかな?あんまりだからエフェクトもしてないし、シンセも入れてないつて感じ。

小室:
あ、そうなんだ。へぇー。なるほどね。なんかまあ、ちょっと音楽の話になっちゃうけど、ストリングスのね、パッドみたいのがサーッて入ってても、シンセなんだけど、けっこうブリティッシュ・ロックの昔のって、それもアコースティックっぽくね、聴こえるサウンドってあるでしょ?まあ、昔はすごいシンセサウンドって言われたかもしれないけど、今聴くと爽やかな感じで。だから、ああいう音やってる人って、なんか今、アコースティック、アコースティックっていうと、結局アメリカのR&Bだとかカントリーとかね、そっちにいっちゃう人もいるから。

徳永:
どうしてもなんか、日本のオジさんたちっていうのは、アコースティックっていうとアレだし、ロックっていうとコレだっていうふうに思ってるからね。

小室:
そうですよね。だから本当はそういった、聞いてみると楽器の問題じゃなくてね、爽やかに聴こえるとか、シンプルに聴こえるものって、そういうシンセサウンドとかね、あそこらへんプログレサウンドとかでもあると思いますけどね。

徳永:
ありますね。

小室:
だから、僕なんかそういうのフッと聴くと、僕、シンセ好きだっていうのもあるんだけど、ああいうのは爽やかに聴こえる時ありますよ。だから相変わらずなんだけど、マイク・オールドフィールドとかいろいろ打ち込みやってても、相変わらずあの人も変われなくて、昔ながらのシンセの使い方で。結局ズーッとバァーッと音が流れてたりするんだけど。

徳永:
だからブラス系とヴォイス系かに、もう完璧に別れて。アメリカっていうとなんかパッドにブラスの匂い感じちゃうし。まあ僕は音楽的表現できないかもしれないけど、やっぱり雲のようなパッドで、それで雲の上で音楽をやっていきたいな。なんか本当にもう、楽しくなきゃ絶対にいけないと思うし。2年前までは苦しんで、悲しんで、それで楽しいことに会えるっていうか。よくガキの頃、山登る時先生が「頂上はキレイだから、苦しんでも登りなさい」なんてのがあったじゃないですか。だけど、やっぱ楽しんで上っていくべきだと思うから、本当に力抜いて、こっから35年間楽しんでいきたいなっていう。

小室:
ああ、じゃあ2年は、かなり長いアレですね。

徳永:
すごいだから、まあ、小室さんなんかプロデュースやってるからね、よくわかると思うけど、今日と昨日って一日でしょ、差が。今日と十日前って十日じゃないですか。で、そうやって一日、一日重ねていくとさ、今日と明治初期なんてのも、ぜんぜん昨日みたいな、まあ、理屈いうとね。だけど必ず時代ってドーンと変わってるところがある。僕は、この2年間ですごい変わったと思うのね。その2年前の10年ていうのは、そんなに変わってなかったような気がするんだけど。すごいファッションから考え方から恋愛の仕方からね。その時期にウマい具合に姿隠せて、いろんな島を廻れてね、なんかこうやってまた表舞台に出てこれてね、逆に名前だけは浮いてんだけど、どういうのやってるか知らねえや、って人が多い方がラッキーかなって思う。

小室:
ああ、なるほどね。名前は確かにちゃんと残っちゃうもんね。あの、僕も前カラオケとかで歌わしてもらってたりしてたんですけど、なんていうのかな?チャートがどうのとかっていうんじゃなくて、徳永君のってああいう場所に存在してますよね。あれってどう思いますか?

徳永:
俺、このあいだ久し振りにね、場末のスナックにいったんですよ。そしたらカラオケにたくさんあるでしょ。

小室:
人よりありますよね?やっぱり。

徳永:
あるある、ある。

小室:
圧倒的にあるでしょ。

徳永:
でね、一番おかしかったのはね、昔ね、まあこれ、ダメだったらカットしてくれていいんだけど、小倉でコンサートやったの。で、小倉のあるスナックの奥の方に座ってたら、けっこうこっち系(頬に傷のある)の人がダァーッて入ってきて、で、僕の曲で『恋人』っていう、けっこうマイナーな曲があるんですけども「うわぁ、ヤベえな、帰ろうかな」って思ってたら、いきなりなんかそこの若いのが「親分!『恋人』です!」とかいって。

小室:
「親分」て言いますか。それ、本格的ですね。

徳永:
そしたら、本当にその親分が『恋人』を歌い始めて「こんなとこ見つかったら、俺、朝まで付き合わなきゃいけねぇんじゃないか」とか思いまして。だけどまあ、久し振りにこうやってね、テレビ曲なんて来てもね、2年前まではなんか、来ても憂鬱だったりとか「今日、なにやらされるんだろう?」とかね、そういうのあったけど、なんかすごい楽しいのね。

小室:
あ、そうですか。

徳永:
うん。ものすごく。

小室:
それはよかったんですけど。

徳永:
だから、ちょっと違う局だけど「それって日テレ」なんて言ってきちゃったから。だから、なんかもうすごく嬉しくて「ああ、こんなんでいいのかな?」って思うんだけど、まあ、嬉しいってことはね、これはもう最高じゃないかなと。

小室:
じゃあまあ、そういうカラオケとかでそういうのも、一つ現象としてはぜんぜん前向きっていうか、楽しいって感じで?

徳永:
うん。なんかもう、だって100人歩いててさ、その内の5人ぐらいの人たちは、胸にこう手を当てて、こうやって歩いてるかもしれないけど、あとの95人ていうのは「今日、なに食べようか」「どこで出へとしようか」とか、いろんな煩悩の塊だったりとか、いろんなのあるわけだけど。そしたらなんか、精神と肉体と煩悩を切り離して、あんまり考える必要もないし、一緒に仲良く、なんでもありで楽しんでいた方がいいんじゃないかな。

小室:
じゃあ、あれですか?プライベートっていうか、僕なんかはマスコミとか、芸能人じゃないんですけど、追っかけられたりしてるじゃないですか。もう、今はないですけど。

徳永:
このあいだドキュメンタリーかなんか見た。

小室:
あ、そうですか。ありがとうございます。で、ああいうマスコミとかはやっぱり嫌でしょ?そういうのももう、けっこう平気ですかね?

徳永:
うん、もうしゃあないかな、みたいな。

小室:
そこらへんも、なんかやっぱりこういう音楽やってるっていう、まあひとつの職業なんだけど、そういうのが付いて回ったりするでしょ。例えば2年間やっぱりブランクっていうか、いろんな違う理由があったとしても、出てきて、で、またそれでそれなりの表現をする人たちだと思うから、そういうのもきっとあると思うんですよね。

徳永:
だから、まあ、悟りっていうと怒られるかもしれないけど、自分が輝いてればね、もうそれでなんかいろんな誤解があろうが、いろんなこと中傷されようが、もう気にしなくていいんじゃないかなって、僕は思う。

小室:
そうですね。気にしたくないですけどね、なるべくね。

徳永:
いや、小室さんの場合、仕方ないよね、今は。

小室:
うん。

徳永:
だって、やっぱりほら、100の苦しみがあるから100の喜びがあるわけでしよ。5の苦しみだったら5の喜びしかないわけで。小室さん今、1万か2万の喜び味わってるわけだから、1万か2万の苦しみは絶対あるし。で、俺ね、小室さんにね、聞きたいなって思ったことあったのね。小室さんて俺、好きなヴォーカリストの声の質ってすごい似てるじゃん。

小室:
はい、そうですね。

徳永:
で、宇都宮さんがいて、それであといろんな、avextracks系のあのヒトミちゃんとか…。

小室:
trfとかですか。

徳永:
うん。それで、全部その声質のなんていうのかな?低域はあるんだろうけど、あまり低域がモロに出てこない、中域と広域のなんていうんだろ?微妙な、本当にこのモーッとしたヴォイス系の声がね、好きでしょ?

小室:
はいはい。そうですね。あの、徳永君の声も好きですよ、だから僕はすごく。張った時より、本当に普通にスーッと歌ってるぐらいの時の声とかっていうのは、すっごい魅力感じますね。だから、これはプロデュースっていうか、アレンジャーとして勝手に考えるけど「あの10ccみたいに、この人2〜30回重ねたら気持ちいいだろうな」とかね、思いますよ。すごく思うね。

徳永:
あれ、重ねるのって楽しいんだけどね。楽しいんだけど…。

小室:
大変ですよね。僕なんかはね、自分でコーラスとかやる時は、自分の声ってメチャクチャ細いんで、とても1トラックじゃもたないんですよ。だから最低でも4回重ねて、多い時10回ぐらい重ねてるんですよ。

徳永:
へぇー。

小室:
で、ダブルを4回とか3回。で3度なり5度なりで、結局それぐらいになっちゃうんですけど。それはもう、時間は仕方ないんで、かけてもやるんですけど。だから、僕が4回重ねたぐらいか5回ぐらいの時にも一声なんですよ、多分。そのぐらいやっぱりしっかりした音域の太さ持ってるから「この人、ダブルやったらかなり厚いんだろうな」と思ったし。

徳永:
だから、本当に調子のいい時の声でダブルやったら、すっごい声になっちゃう。

小室:
倍音出てきません?

徳永:
倍音がもうすごい。

小室:
出てきますよね。

徳永:
あの、それで酔ってしまうから、逆に重ねないようにしてる。 ああ、なるほどね。こういう人の声は、もう本当、ハモってないのに、今ハモリンとかなんかありますよね?カラオケで。ああいう感じになっちゃうんだよね。

徳永:
ハモリンね。

小室:
ダブルだけで、ユニゾンで一回重ねるだけで、上の裏声みたいのが聴こえてくるような声質ですよね。それは天性のものだからね。どうしようもないですけどね。

徳永:
だから、人にコーラスされるのも好きじゃないのね。

小室:
ああ、ああ。

徳永:
なんかね。自分の中でハモってしまってるから、そこに違う人の声がきてもなんか、さっきいった1トラックでしかなかったりすると、ぜんぜんバランス狂っちゃって。だからコンサートでもしゃあないから自分のヴォーカルはもうサンプリングして、コーラスは出さなきゃいけなかったりとかするんで。

小室:
なるほどね。外人の人の誰かだったりすると合うのかな?わかんないけど。

徳永:
だからウチの今サックスの彼が、だんだん、だんだん歌うにつれて俺の声に似てきたから、だからなんとかやれてるけどね。

小室:
アレじゃないですか?ペットショップボーイズとか、ああいう人の声とかハモったら、もしかしたらハモれるかも。どうですかね?

徳永:
ああ、外国の人とまだね、そういう機会ないんでやったことないんだけど。

小室:
でも、ああいう人たち的な声ですよね。いわゆる、ソフトなんだけどロック的な声っていうか、シャウトしないんだけど、ロックを感じるような声ですよね。

徳永:
今、すごい調子いいですよ。

小室:
ああ、そうですか。

徳永:
あの、最近、体が鍛え始めて。やっぱりこのあいだまで下がA♭だったんです。下のA♭。今、E♭まで、下が。するともう、今まで張ってたら、張ったところ例えば上のAぐらいは張ると、高音がドーンと伸びていって「ああ、キーが高いとこで歌ってるな」って感じだったんだけど。あの、ローが一緒に出てくるから、ぜんぜんなんか、張った感じがしないっていうか、高いっていう感じがしなくなって。

小室:
もうそのAっていうのは、当然、表声ですよね?

徳永:
はい。

小室:
あの、表ではその上もいくんですか?

徳永:
Dぐらいまでです。

小室:
表が出るんですか?

徳永:
出る時ありますね。

小室:
それはちょっと専門的になっちゃうかな?わかんないかもしれないけど、Dって女の人が表でもキツい声の高さですよね。

徳永:
あ、そうですかね?

小室:
うん。普通のまあ、アイドルの人たちだったら、その下のドも出ないですからね。

徳永:
アイドルの人たちに曲作る時はあの、1オクターヴ越えると怒られますからね。

小室:
多分その高さじゃあ、女の子でもカラオケでマイナス1ぐらいしますよね。

徳永:
いや根僕なんて、今まで曲作ってくれって言われて、なかなか曲、採用されないのが、やっぱ音域が広い曲ばっか作っちゃうから。だから僕ね、TMが『SelfControl』とか、そのあと立て続けにヒット出した時に、TMのその

小室:
さんが作るのって、♪タタタタタン、タタタタタン、タタタタタン〜て、すごくこう、音域がこのくらいのところで♪タタタタタン、タタタタタン〜でしょ。で、僕は自分の感性とまったく違ってたから、僕はもう「こうじゃなきゃ許せない」って感じだったから「なんであれがすごく世の中に伝わっていくんだろう?」って、すごく悩んだ時期があったんです。それで『夢を信じて』っていう曲が、僕、じつはシングルの中で一番売れてるんですけども、それは本当に♪ララララ、ラララン、ラララン、ラララララララン〜てもうずーっと。それが一番売れてしまった時に「ああ、小室哲哉ってスゲえな」って思ったんですよね。

小室:
そんなことで?つながっちゃったんですか。

徳永:
「ああ、遅かった、俺は」って。「もうちょっと早くやっとくべきだった」みたいな。

小室:
あの、俺の場合はやっぱり楽器があるからだと思うんですけど、アレンジっていうのが作曲の時点であるから。あの、自分のエゴかもしれないけど、楽器のメロディも聞かせたいっていうところがあったと思うんですよ。だから、歌のメロディに伴奏つけるっていう発想じゃなかったからね。裏メロみたいのは必ず入ってて、そっちもあったからっていうので、そういうのもあったし。あとはどうですかね?まあ、リズムの方から作ってたっていうのあるかもしれないけどね。あとは確かにたくさん作ったっていうのあるかもしれないし。

徳永:
もう今でも何人ぐらいプロデュースやってんですか?

小室:
うーん。ちゃんとやってるっていうのは4〜5組ですけどね。あの、曲提供とかっていうのだったら、もっとぜんぜんあるけど。あの、アルバムはあんまり自分ではやってないから。アルバムの十何曲を全部シングルで作ってるつもりで今、作ってるから。だから、自分のアルバムの12曲で一番いいのを、1曲づついろんなアーティストに提供してるみたいな感じで。

徳永:
だけどもう、自信持ってるからね、今ね。だからすごいやっぱり、自分の時代の波をちゃんと捉えてるってっていうか、努力してるよね、小室さんはね。

小室:
そうですか?

徳永:
いや、だって「こういうものが、今の時代どうのこうの」っていう企画書を書いて。で、最初にテーマをちゃんと決めて行動されるでしょ。で、俺は絶対テーマ決められないのね。やっていくうちにテーマが決まっていくという感じなんで。

小室:
あの、僕の場合はね、自分でそうやって攻めちゃわないと、まあ言っちゃったもん負け、言っちゃったもん勝ちにしないっていうか。つまり、言っちゃって自分を追い詰めないとやらないタイプなんで。だからよく数字とかを言っちゃうんですよ、ワザと。

徳永:
あ、なるほど。

小室:
で、結局、出来る出来ないは別として、で、それに向かうっていう感じのやり方なんですよね。だから企画書なんてもう、ああいうのってもう、世の中に何万て企画があると思うんですけど、あれもだからねできないことを書いちゃっても、まあ、なるべくそれに向かうようにはしてるんですけどね。

徳永:
けど、いろいろ業界誌とか音専誌とかも、かなり読んでるでしょ?

小室:
そうですね。

徳永:
誰が何月に発売するとか、誰がどのぐらい売れてるとかって、絶対わかってるもんね。

小室:
まあ、そうですね。

徳永:
だから、やっぱりあの、それがいいっていう人もいれば、悪いっていう人もいるだろうけど。けど、本当はそういうこともわかつていながら、自分を追い詰めないで音楽やっていければ、一番最高なんじゃないかなって思うよね。僕も事務所興して、一時期社長やってたりした頃があったから、どうしてもあの業界誌のチャートとか、誰がなにを言ってるかとか気にしてね。だけども、今あんまりそういうことを気にしないようにしてるんだけども。

小室:
僕もね、気にしないようにしてた時期ありましたよ。1年間ぐらい自分の曲が、まあ入って一週間ぐらい、一年のうちで、っていう時期がTMの休業の前ぐらいの時にあって。その時なんか、一年、まったく見なかったと思いますよ。

徳永:
へぇー。

小室:
あの、いわゆる『オリ・コン』とか。

徳永:
あのTMNの頃?

小室:
TMNが一応まあ、ツアー終わって、それでちょっと休業みたいな感じにした時とか。まあレコーディングとかはしてたけど、やっぱり見たくなかったですからね、その時はね。まあだから、そうしないともう結局、追っかけるだけになっちゃってて、っていうのもあったし。

徳永:
でもヴォーカリストのチョイスの仕方がウマい。

小室:
まあ、たまたまかもしれない。そうですね、さっきいった声質が「これは世の中の人が、絶対、気持ちいいと思う声だ」っていうのはね、思いますよ。

徳永:
だってそれだもんね。

小室:
それなんですよ。

徳永:
もう、絶対いろんなさ、デビューした新人とかが出てきて聞いた時に「なんでこれがレコードになってんだろうか?」って思うのとかあるじゃないスか?そのサウンドいくら渋くやってても、声のその倍音であったりとか、もう絶対声しかないわけで、もう変な話、ピアノ一本でぜんぜん問題ないわけで。だからもう、なんていうのかな?微妙な癖になる声を選びません?まあ変な言い方だけど、松本伊予ちゃんがデビューした頃に、変わった声っていうか、すごい鼻に詰まった声だなって。だけど三日聞かないと、なんか「ああ、聞きたいな」っていうその、いつの間にか癖になってしまっているっていう。だから小室さんが選ぶヴォーカリストの声ってのも、なんていうのかな?歌唱力があるとかないとかっていうことよりも、ここのない部分のここらへんに残ってしまうっていうか、癖になってしまうヴォーカリストの声っていうか。

小室:
そうですね。まあぜんぜん歌唱力じゃないですね。声質だけですね。

徳永:
へぇー。

小室:
だから、僕は自分を自分で評価した時に、ヴォーカリストとしては向かない声だったから、だからまあ、こういうスタンスになっちゃったんですけどね。ないものねだりなんですけど。だから徳永君の声なんかも、すごい羨ましいと思う部類に入りますよ。あと、B’zの稲葉とか。あの人の声とかも、まあ、ないものねだりですけどね「ああやって、ああいう声出たらいいよな」とか思ったりもするし。

徳永:
彼の声はなんていうのかな?絶対音感的な声っていうか、なんか、ね?

小室:
うん。僕もおなじようなことはいったんですけどね。そうですよね、やっぱりね。

徳永:
あの、フェーダーを後で「えぇと、じゃあ0.1落とそうか」とか修正しなくていいような、全部ハマってるような感じで。わかんない、まあ、裏では合わせてるのかもしれないけど。

小室:
いや、あの、そういう意味では徳永君の声も、ある程度なんかフェーダーでね、ピアノとドラムとアンサンブル出して、声上げれば音楽になる声だと思うんですよ。それはだから、すごい倍音構成がキレイなんだと思いますよ。

徳永:
だから、ヘタに生ピと生弦とで合わなくなっちゃうんだよね。倍音がぶつかって。

小室:
ああ、そうか。ぶつかっちゃいますよね。

徳永:
だけど今回は敢えてそのタイトルチューンの曲は生弦と生ピでやったんで。

小室:
じゃあもう、異常にピッチとか気にしたんじゃないですか?

徳永:
今回はね。今回、僕、今までレコーディングやって、こんなにピッチ気にしたのは初めてっていうぐらいでしたね。倍音がね。

小室:
そうですね。これはあの、本当はなんていうの?心霊のなんかアレと同じで、見える人と見えない人っていう。見える人には見えてるっていうのと同じで、聴こえない人には聴こえない音なんですよね。

徳永:
あのね、だから、ウチのディレクターもね、すごく優秀で、で、僕が歌ってて「あ、いいよ」って向こうで。話したらなにいってるかわかんないですよ「ダメだよ」っていってるかもしれないけど。「いいよ」っていってくれて、だけど、前までだと逆に自分を追い詰めてた時の方が、なんか「この声でどうにかしてくれへんかな?」って感じだった。「ああ、ええやん、これで。商品になる?」みたいな。けど今回、楽になって楽しもうってなったら、逆にレコーディングが今まで以上にシビアだった。やっぱり楽しむには、それなりのクオリティのものを持ってかなきゃ絶対楽しめない。それはスタッフにしてもそうだし。だから、ある種、楽しむ時って、すごいドラスティックにならなきゃいけないんじゃないのかなと思うんだよね。だから今回はディレクターが「いいよ」っていってても「ゴメン、今日、帰る」っつって、で、そのうち「今日、車、あそこの駐車場に停めたから声が出なかったんだ」なんて、だんだんジンクス的な考えになって。だから「あのレコーディングスタジオの前に車、停めてきてくれ」とか。それでダメだと「ゴメン、ちょっとラーメン食べさせてくれ、ツユ飲むとダメだから、麺だけすするわ」みたいな。なんか、そんなジンクスみたいなことやってしまったりとか。だけど本当に初めてかな、ヴォーカルであんだけ時間とって、何回も録り直して。

小室:
まあね、ピッチがわかってる人がね、追求するのは、絶対、結果、悪いふうにはでないですからね。いいものしか出ないですから。

徳永:
ものすごく気持ちいいですよね。

小室:
もう俺もディレションで、ピッチしか言わないんですよ。もうこの言葉一万回ぐらい、これしか言わないですから。

徳永:
けどさ、声質がね、いい声が出てるとするじゃないですか。その時こう全部見て、歌って「あ、このピッチはあとで修正できるや。OK」っていうのはないんですか?

小室:
いや、ありますよ、もちろん。

徳永:
やっぱり声質があって?

小室:
声質があって。

徳永:
テイク5まで録って歌ってもらって。

小室:
まあもちろんその、キレイにいいところが出てる声のピッチですよね。

徳永:
で、あとで「ちょっと0.2減らして」とか。

小室:
ええ、それはやりますけど。

徳永:
今回、僕らも「一個、上」「二個」「もう一個」「うーん。どっちがいい?」「うーん。もう五個」とかね。もうなにやってるかぜんぜんわかんない。ヴォーカルの処理をしてんのに、いやぁ、近代的なレコーディングっていうのはもう。

小室:
そうですね。まあ、僕たちもそうですよ、本当。

徳永:
ね。昔なんかさ、だってね、録ってそんなこともできなかったし、変な話、もう、本当、キーが合うまで歌わなきゃいけなかったけど。今はね、よくできてますよね。

小室:
だから歌う時にまず「ちょっと低い」「ちょっと高い」「あ、ちょっと。あとちょっと」「ああ、低かった」って、それを何回もやって。で、録って「お疲れ様」っていったら、今度機械に向かって「ちょっと高い」「ちょっと低い」でしょ。

徳永:
だけど、あの機械とのやりとりって端からさ、本当にさっきの見えない見えるじゃないけど、見えない人がいたら、なんのこっちゃわかんないと思いますよ。

小室:
そうですよね。

徳永:
だって0.1、0.2、の世界でしょ。

小室:
それでもガラッと変わりますからね、本当にね。

徳永:
変わる。だから本当にそういう意味じゃあ、ミックスダウンもそうだけど、やっぱり日本のミュージシャン、もっとマスタリングやる時、もっとなんか、シビアになった方がいいんじゃないかなって僕は思いますね。だってマスタリングやるところに、あまり顔出してるヤツって見たことないし。あの、やっぱりあそこの、なんていうのかな?ミキサーがやったEQの処理っていうか、整理を。あれなんてものすごい大事でしょ?

小室:
うん。大事でしょうね。まあ、ちょっとそこらへんは、やっぱりミュージシャンっていうことでね、なんとなく「俺は音楽をやっているから」っていうとこだけで終わっちゃってるので、それをね、僕たちみたいなヤツらがまとめればいいのかもしれないけどね。そこらへんはちゃんと最後まで責任持ってあげないとダメですよね。

徳永:
そうですね。

小室:
だからね、まあ、こんな話するつもりなかったんですけど、大体やっぱりシングルCDで1000円じゃないですか。で、いつも思ってるのは、映画の『ジュラシック・パーク』とか『ダイ・ハード3』とかでも、せいぜい1300円ぐらいで見れちゃうわけでしょ。だから、同じ金額で考えたら、やっぱりそんなにアマくないなと思うんですよ。一曲の重さっていうのが。

徳永:
本当にそう思いますね。

小室:
あれだけのものを楽しませてもらって、で、お金かけてるじゃないですか、あんだけ。

徳永:
だから、今までなんかカップリングっていうとさ、すっごい昔、あれいつかな?中学校3年の時、当時すごく有名だったアイドル歌手の人のレコード買って、もうA面が好きで、家で振り付けして歌ってて、カップリングがすごい曲だったんですよ。

小室:
とんでもない曲だったんですか?

徳永:
もうなんか♪ネズミがニャオ〜とかね。なんか「ネズミがなんでニャオなんだ?」みたいな。フザけてるって思って「あ、B面てこんなもんなんだ」みたいな。で、デビューしてからもなんかB面決める時って、なに入れようかって。全部こう真剣に作った曲なんだけど、B面用だけなんか別に作ってた自分もあったし。だけど今回はもうアルバムのなかで一番気に入ってもらえるやつと、二番目に気に入ってもらいたいやつを、もうシングルにしようっていうような。まあ、こんなこと言うとアルバム買わない人も出てくるかもしんないから、そこはあとでテロップとかで訂正してもらって。本当にそれぐらいの気持ちで、今回シングルを作ったんで。

小室:
シングルが先に今日出るんですか?

徳永:
うん、今日で。アルバムが12月8日。もう12月という、本当にいろんな今、流行りの売れてるアーティストがたくさん出てきて、得点かせぐとこにワザワザなんで出向いていくんだ?みたいな。

小室:
年末そうですよね。商戦ですからね。

徳永:
俺なんか昔、10月頃に出してたのは、けっこう隙間で一位だったりとかして。12月のもう初旬、中旬ていうと、すごいですからね。

小室:
そうですよね。

徳永:
globeも出るんじゃないの?

小室:
シングルは出ますけど。

徳永:
11月?

小室:
シングルはね、1月1日に出ます。

徳永:
1月1日なんですか。元旦。

小室:
元旦に出るんですよ。

徳永:
いいですか?元旦発売って。

小室:
何にも意味はないですけどね。意味はないんですけど、まあ、多少プロデューサー的な、ビジネス的な話でいくと、もうお店みんな終わりでしょ。

徳永:
うん、やってない。

小室:
だから27〜8日に売れちゃうんですよ。だからあと、けっこうカウントが長いとか。

徳永:
ああ。

小室:
2週間分とか。1週『オリ・コン』とかでいくとか、チャートのこととかですね、いろいろありますけど。まあでも、気分的な問題もありますけど。

徳永:
で、結局、1月入って15日売りぐらいのしか出てこないし。

小室:
そうですよね。だからけっこう初頭飾るにはいいっていう。

徳永:
正月はみんな家でテレビ見てるし、CMドンと流して。だけど面白いですね。そのへんの感性っていうか感覚がね、たまにTK、これを見る時に、似てるなぁっていう。

小室:
あ、そうですかね?

徳永:
なにを読んでて、どういうふうなとこに意識を持ってるかっていう。

小室:
さっきのね、僕ね、その丘の上でっていうの聞いてた時に、僕、ロンドン89年から1年住んでたんですけど、その時にムステッドってところの方のそういう丘で、ちょうど町と雲とあと全部見渡せる、ちっちゃな公園みたいなところあったんですよ。で、そこのこと思い浮かべてたんですけど、そこに流れる音っていったら、ストリングス、ヴォイスパートしかないんですよ、音が。もう他に合う音がないっていうぐらいのとこで。ずーっとね、ちょっと思い出してたんですけどね。

徳永:
へぇー。

小室:
だからなんか、僕の場合、イギリスいったりアメリカいったり、いつも趣味がいったりきたりで、けっこうメチャクチャなんですけど。

徳永:
そうなんだよね。だから、イギリスって感じだけど、僕、アメリカ感じる時って、往々にしてあんのよ。

小室:
ありますよね。だから僕の場合はいったりきたりなんですよ。でもなんか、さっきっていうか、今日の徳永さんの話聞いてると、スーッとロンドンとかにね、なんか行っちゃいますね。まあだから、わからなくはないです。そこらへんすごく本当に手に取るようになんか。サウンドの感じとかもね、わかりますけどね。

徳永:
だから本当になんていうのかな?楽しいブリティッシュ・ロックっていうか、バカっぽくないね、その家族を愛する気持ちとか、マナーが一応あった上でのなんか、楽しい音楽やっていきたいな。

小室:
なんかそういうサウンド的にも、そういうのやってる人、どんどん。減ってきちゃってるからね。やってもらいたい気もしますけどね。

徳永:
ああ、あれだよね、売れるとか売れないとかって考え始めるとね。

小室:
もうどんどん、やっぱりコンプレッションした音になってっちゃうんで。僕も自分のもちょっと飽きちゃってるんですけどね。音的にはね。

徳永:
今度、どうしていこうと?

小室:
今は薄めにしてっていうか、とにかくどんどん音数は減らしてるんですけどね。まあリズムのグルーヴ感があって、それに一つちゃんとしたパッド、コード感があればいいようにして、あとは声ですね、やっぱ。

徳永:
一回、違ったトライしてみれば?

小室:
したいと思ってますよ。

徳永:
だからその、今いった、僕なんか昔『最後の夕焼け』って曲作った時は、本当、808とパッド。で、クラシカルなピアノだけで。あとはもうなんにも入れないで、ズーッと。ただ、それに、詞はすごく大切だし、恋の切なさは大切だけど、アメリカでトラックダウンやった時、アメリカ人はなにもわかってくれなかったですけどね。

小室:
ああ、アメリカでやったんだ、あれ。

徳永:
「なんだ、これ」って。だから、小室さんなんか今その、このあいだドキュメンタリーで見た時は、ディスコとカラオケっていう、すごくそれもわかるけど、なんていうのかな?あるじゃん、設定。そのパッドのこのすごい重奏感。だけど雲のような、そのパッドにシャカシャカしてない、ゆったりした808系の。絶対ドラムとか、音って好きだと思うのね。だからそこになんか、いい形のギターと今までにない、違ったヴォーカリスト。そこでいくと、またすごいかなって。まあ、今、小室哲哉っていったら「あ、これ小室哲哉だ」っていうのって、それは絶対いいことだと思うんだけど。

小室:
まあ、声、ヴォーカルのね、いい声の人が乗っからないとね。今だからティアーズ・フォー・フィアーズの人とかね、ああいう声質が。ピーター・ガブリエルとかも好きですけどね。ああいう声とか、あの人。ああいうのとか歌ってくれるといいですよね。そんなのはパッドとそういうのだけで、本当、1〜2音でもっちゃいますよね。まあ、その人でやってみたいですよね。

徳永:
やっぱ楽しいかカッコいいかね。だから今、trfとかglobeとか楽しさの中にあるじゃないですか、ディスコプラスカラオケっていうもんだとしたら。みんなが終わってからも歌えるような。けど、そのみんなの前で歌えないけど、一人でじっくり聞くような、そういうナーバスなものでもない、なんかさっきいった丘の上でダーッて歌って、ジャングル大帝レオのテーマが流れてくるようなね。あの、すごく「ああ、かっちょいい」っていうのが、小室さんだったらやると思うね。

小室:
やりたいですけどね。でも、そういうバラードとかも入ってるんですよね?そのアルバムとかは。

徳永:
うん。あの、入れた。どっちかっていうとギターサウンドが多かったけど、やっぱり、今までなんか、自分を追い詰めることによってバラードを書いて、それを打破するって感じだったけど、今回は自分が歌を歌うのが、今、歌ってる歌が、はるか向こうのとこまで聴こえるかな?っていう気持ちで書いた。

小室:
それじゃあ、聞かせてもらいます。

徳永:
はい、またじゃあ、僕もあの、遊びに行きます。

小室:
はい。じゃあ、テレビもけっこう出るわけですね?もしかしたら。

徳永:
うーん。テレビ「それって日テレ」もなんか一週間ぐらい流れるとかっていってたけど。「フジテレビもいるよ」ってのも言わなきゃな。

小室:
フジテレビはそうですね。ここの姉妹番組っていうか、兄弟番組ありますからね。『HEY!HEY!HEY!』というのが。

徳永:
ああ。なんか『HEY!HEY!HEY!』のゼネラルマネージャーみたいな感じ。

小室:
そんなことない、そんなことない。

徳永:
だってここに来たさ、ここに来た人間をさ、勧誘してるとかって話を聞いた。

小室:
一応ここで打診はね。嫌いだったらやっぱりね、あれなんで、本当は好きなんだけど。

徳永:
え?小室さんが打診するの?

小室:
場合もありますよ。たまには。

徳永:
すごいね。

小室:
ああいう『HEY!HEY!HEY!』のああいう二人のね、間に入るのってどうですか?みたいな。も、言う時ありますけどね。

徳永:
へぇー。

小室:
でも、いいんじゃないですか、それも。

徳永:
同じ関西だからね。

小室:
なんか、ぜんぜん平気な気もしますけどね。

徳永:
だから、まあちょっと、フンドシのひも締め直して。

小室:
そうですね。じゃあ、楽しみにしてます。

徳永:
はい。

小室:
というわけで、ありがとうございます。これ、長かったと思います。

徳永:
すいません、もう。次のつんく君も大変でしょうけど。

小室:
まあ、つんくはいいんですけど。じゃあ、大丈夫ですかね?じゃあ、どうもありがとうございました。

徳永:
はい。どうもありがとうございました。


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