#183
HomePageだけの特別編集版 松山千春編
- 光一
- すごい絵ですよ.
- 松山
- な.
- 剛
- すごい絵ですね.
- 松山
- これ,おまえ,組長と構成員みたいだもんな.たまらんよな.「ゲストとのトーク」
- 光一
- 今夜のゲストは松山千春さんです.よろしくお願いします.
- 剛
- よろしくお願いします.
- 松山
- よろしくお願いします.
- 光一
- というわけで,お越しいただきました.
- 松山
- 初めてだもんな.
- 剛
- 初めてです.
- 光一
- この番組はご覧になったことありますか?
- 松山
- 俺たちだいたいコンサートが9時ぐらいに終わるから,その後見ることはあるよな.
- 光一
- ありがとうございます.
- 松山
- とりあえずほら,拓郎が何やってるかって心配じゃん.
- 光一
- どうですか?この番組の雰囲気は.
- 松山
- おまえたち,ちゃんと歌ってるじゃんな.
- 光一
- ありがとうございます.
- 剛
- ありがとうございます.
- 松山
- 立派なもんじゃん,演奏までしてな.
- 光一
- ほんまにありがとうございます.この番組のおかげで演奏もできるようになったんです.
- 松山
- だよな.いろいろギターまで教えられてさ.俺も一緒に習えば良かったな.俺,本当,ギターヘタなんだよな.
- 剛
- そんなことないですよ.
- 松山
- 本当にそうなんだ.だからさっき坂崎に会ってさ,「坂崎,頼むぜ,今日は」って.俺がヘタだから,「おまえ一生懸命弾いてくれよ」みたいな感じ.
- 光一
- そうなんですか?
- 松山
- 坂崎に頼むのと,あと,拓郎に喝を入れにきたんだ,今日は.
- 光一
- 拓郎さんに喝を?
- 松山
- 喝を入れに.
- 光一
- ちょっとびっくりしたんですけど,聞いた話によると,じつは初対面だそうですね,お二人は.
- 松山
- いや,初対面っていうか擦れ違ってはいるよ,しょっちゅう.
- 剛
- ちゃんとこうしてお話をするということが初めてという?
- 松山
- 今まであんま無かったもんな.
- 吉田
- ない.
- 松山
- 拓郎も俺のこと嫌いだし.
- 光一
- いや,そんなんモロに言われてもね.
- 松山
- いやいや,ちがう,バカ.いろいろ理由があんだ,これは.
- 光一
- 理由があるんですか?
- 松山
- KinKiは知らないと思うけど,俺達みたいにフォークソング目指してた人間にとってはね,やっぱり吉田拓郎というのは,いつか踏み越えなくてはいけない壁なわけだ.それでフォークソングっていうのは,岡林信康っていう人がいてな,この人が1970年近くにな,ちょっと失踪するんだ.これはフォークの神様だから.我々の神様といえば岡林信康.それで,いなくなった時に「この後のフォークソングって,いったい誰がリードしていくんだろう?」ってとこで,吉田拓郎と,もう一人,加川良ってのがいた.それで俺はその加川良が好きだったわけよ.
- 剛
- 吉田拓郎ではなく.
- 松山
- だから,加川良ってどっちかっていうと暗いイメージで,今もあちこちの街でギター一本で歌ってると思うんだけど,本当に暗いイメージでフォークソングみたいな感じでやってたんだけど,拓郎がいきなり売れてドーンといっちゃったじゃない.そしたらフォークの流れがぜんぶ拓郎に行っちゃったの.俺は加川良が好きだったから,好きの反対は嫌いじゃん.
- 剛
- まあ,そうですよね.
- 光一
- はっきりしてらっしゃいますね.
- 松山
- だろ.だから拓郎が出てこなかったら加川良がフォークの王道を歩いてたわけだから.でも残念ながら拓郎に流れが行ってしまった.
- 光一
- すべての今の音楽業界すべてが違う流れになってたかもしれませんね.
- 松山
- そうだよな.拓郎自身どうだったわけ?あの当時は.
- 吉田
- 俺は加川良すごい好きだよ.
- 松山
- いいよな.
- 吉田
- 最高だよ,あいつは.
- 松山
- いや,最高というほどでもないけどよ.
- 吉田
- まあ,時代でいうと'70年代に,よく飯食ってたりしてた仲間だし,歌とか好きだよね,やっぱり.
- 松山
- な.いいよな.
- 吉田
- ただ,僕には出来ない.
- 松山
- 俺,それでいいと思うんだ.だって,KinKiと同じ様なものはもういらないだろ.拓郎は拓郎でいいじゃん.加川良は加川良でいいわけ,マイナーで売れなくて細々とギター弾いて歌ってる,そういう姿も大好きなわけ.
- 光一
- 男っぽいですね,考え方が.
- 松山
- 男っぽいって,そっちの気はないんだけどな.
- 光一
- いやいや,そういう意味じゃないですよ.
- 松山
- 上の毛もないけど.
- 光一
- 何をおっしゃいますか.そんなこと言われてもね,どう突っ込んでいいか.
- 剛
- どない突っ込んでいいかわかりませんよ.
- 松山
- あのね,堂本君,私もね,おまえたちぐらいの年代の時はね,それぐらいだった.それがだよ,何を境に去っていってしまったんだろうね.
- 光一
- 聞いたとこによると,かなりのフサフサとお聞きしました.
- 松山
- な.昔はみんな髪伸ばして歌ったもんな.
- 吉田
- 俺,松山千春っていう人は,髪長いっていうイメージしかない.すげえ印象的だった.
- 光一
- 今はもう,すごい男らしい.
- 松山
- あのね,こんな女がいたらおかしいだろ.
- 剛
- まあ,確かにそうですね.
- 光一
- でも似合ってらっしゃるからいいですよ.
- 松山
- バカ.おまえたちはいろいろ髪型変えられるからいいんじゃん.俺は変えられないんだぜ.
- 光一
- 何をおっしゃいますか,そんな.
- 剛
- でも,おまえ危ない言われてるじゃん.
- 光一
- モロ言われましたね.
- 松山
- 「危ないね」じゃないもん.まるで昔の俺を見てるようだよ・
- 光一
- ということはクるんですね.
- 松山
- 確実だろうね.
- 光一
- ええがな,ええがな.男らしくいくよ.松山さん風にいくよ.
- 剛
- ヒゲもちょっとはやしてね.
- 光一
- サングラスしてね.
- 松山
- きれいにイッてもらいたいよな.中途半端に残しちゃいかんよ.
- 光一
- そうですよね.
- 松山
- だって,今まで毛のないアイドルっていないだろ?第一号じゃん,第一号.
- 光一
- まあ,きっと僕のファンなら僕がそうなってもついてきてくれると思います.たまにはええこと言うたよ.
- 松山
- 甘いな.甘い甘い.そうやって客におだてられていなくなったタレントはいっぱいいる.
- 光一
- 本当,はっきりしてらっしゃるわ.どうですか?今,拓郎さんが嫌いだって話もチラッと出ましたが,拓郎さんはどうですか?
- 松山
- 拓郎も嫌いだもんな.
- 吉田
- そんなこと言ってないよ.俺はだから,はっきり言うから.ゲストに来た人にも,何人か好きじゃない人いたよ.それは言ったもん,好きじゃないって.でも千春は俺,会ったことないからわかんないんだもん.君はしかも北海道のほうにいるからさ,様子がぜんぜんわかんない.例えば東京にいたら飯食いに行ったりするじゃん.そういうのがないからさ.コンサートとかで同じステージに出てたこともあったみたいなんだけど,擦れ違っちゃってるんだよね.だからね,口を聞いたことがない.
- 松山
- ぜんぜん俺がアマチュアっていうか,出たばっかの頃だからな.で,一度,我々歌を歌ってる人間たち,小田和正がみんな集めていろんなグループを作ろうよみたいな話の時に,その時に俺は拓郎と初めて会って.それで打ち合わせで「千春のこと嫌いなんだよ」って拓郎が言って.
- 吉田
- ホテルで会った時?
- 松山
- そうそう.
- 吉田
- それすげえ昔だね.
- 松山
- 昔よ.20何年前よ.
- 吉田
- それ,話したっけ?
- 松山
- まだ根に持ってんだよ,俺.その時,拓郎が俺のこと「デビューの時から嫌いだ」って.
- 吉田
- その時さ,加藤和彦と北山修っていなかった?
- 松山
- いたいた.みんないた.
- 吉田
- それ言ったの加藤和彦じゃない?
- 松山
- いやいや,拓郎だって.
- 吉田
- あ,俺が言った?ああ,本当.
- 光一
- 拓郎さん,記憶にないですか?
- 吉田
- わかんない,ぜんぜん.松山千春っていう人と話した記憶はないんだよ,あんまり.
- 光一
- ということは,今はそういうのあまりないということですよね?
- 吉田
- よくわかんない.この人はだいたい,例えば東京なんかに住んでればこういう仕事してるからさ,飯食ったりとかあるじゃない,いろいろ.なんだかんだ言いながら.いないからね,ぜんぜんそういう機会ない.
- 光一
- 北海道に住んでらっしゃるんですよね.なんでまたずっと北海道に?東京に出てきたほうが楽違います?
- 松山
- 仕事はしやすいんじゃないの,東京に出てきたほうが.でも俺,生活したいから.
- 光一
- 東京でも生活は.
- 松山
- そしたらべつに自分の産まれ育ったところを変える必要ないじゃん.なんでみんな歌手になったり役者になったら,なんでみんな東京に出てくるのか.ましてや俺が北海道にいたら,「どうしているんですか?」と.生まれたとこにいてどうして悪いのよ.
- 光一
- そうですよね.
- 松山
- 逆に俺に言わせれば,「なんでおまえたち出てくの?」って.とくに俺の場合フォークソングってそういう歌を歌ってんだから,ぜんぜんいても構わないじゃん.
- 光一
- でも,お忙しい時もあると思うんですけど.
- 松山
- だって,コンサート始めるのにさ,拓郎は東京から回ってるけど,俺は常に札幌から移動しなくちゃならないじゃん.だから,直行便がある街でコンサートやりたいよな.
- 剛
- 経由やなしに.
- 光一
- 直行便のある街で.
- 松山
- けど,おまえたちもな,小さな街で行けって.でかいとこでワーワーやるのも楽しいだろうけど.だってこのテレビを,俺みたいに田舎で見てるやついるじゃん.それでおまえたちのことを応援してるやつがいるじゃん.
- 光一
- ありがとうございます.
- 松山
- そしたらこっちから足を運んであげるっていう作業も絶対必要だと思うな.
- 光一
- 松山さんたら優しい.
- 松山
- 違うんだ.優しいとかそういう問題じゃなくてさ.人気なんて長いことないんだから.出来れば旬のうちに行ってもらいたいな.本当にぜひ旬のうちに.みんないろんな歌手でも売れた連中には,「おまえら今のうち行けよ.売れてるうちに行ってこいよ」と.だって,はっきり言えばよ,KinKiにしてもそうだけど,おまえたちはみんな売れる曲を期待してるよな.
- 光一
- やっぱそうなんですかね.
- 松山
- 俺たちってお客さん,そんなに売れる曲を期待してないもん.それよりもシンガーソングライターだし,いい曲を期待してるだけであって.それは結果売れればいいと思うよ.けど,売れる売れないよりも,いい曲を出し続けてくれって,そういう気持ちでみんな聞いてると思うから,やっぱり振り返って恥ずかしくない歌,そういう歌を歌ってたいよな.
- 光一
- カッコいい.発する言葉すべてカッコええっス.
- 剛
- 説得力が.
- 松山
- 俺,言うことはでかいけど,やることは小さいからな.
- 光一
- そんなことないですよ.これ,聞いていいかわからないですけど,一つだけ疑問があるんですけど.松山さんは人をすべて呼び捨てにされるじゃないですか.拓郎さんでも吉田拓郎と.拓郎さんのが年齢的には上じゃないですか.
- 松山
- 上よ.
- 光一
- そのへんちょっと疑問だったんですね.
- 松山
- でも,俺が「拓郎さん」って言ったら気持ち悪くないか?
- 光一
- はいはい.
- 松山
- 「陽水さん」って言ったら気持ち悪いべや.さすがに村田英雄さんや北島三郎さんは「北島さん」って言うけどな.
- 光一
- 剛は「サブちゃん」言いますけどね.
- 松山
- さすがに北海道の先輩だしよ,「おお,サブ」とは言えんわな.
- 光一
- なるほどね.
- 松山
- 尊敬はしてんのよ.だから俺は正直に「拓郎は嫌いだよ.俺は拓郎になりたくないよ」って言うけど,自分たちの道をつけてくれた先輩だからそれは尊敬してるよ.尊敬してるけど拓郎を越えなきゃしょうがないだろ.
- 光一
- まあそうですよね,自分としては.
- 松山
- そしたらステージの上で一緒に歌いたいじゃん.それでお客さんに「どっちがいい歌を歌ってますか?」って聞いてもらいたいじゃん.そういうギリギリの勝負をしたいから,だからやっぱり拓郎って呼び捨てになるわけよ.これから勝負やろうって奴にだぞ,「拓郎さん,よろしくお願いします」,それはないだろう.
- 剛
- 確かにそうでね.
- 光一
- 勝負だと.
- 剛
- まあ,格闘技も,一礼とかはありますけど,「よろしくお願いします」っていうのはないですからね.
- 松山
- 俺は下手に出るとダメなんだよ.「よろしくお願いします.僕,今日,調子悪いんですよね」とかな,あれは絶対にダメなの.俺はもう絶好調.いつでもかかってきなさい.
- 光一
- 「ワンワン」と尻尾を振りたくないわですね.
- 松山
- で,歌って,客に「あいつ,でかいこと言うけどヘタだね」って言われたら,それでいいじゃんか.それはそれで.そしたら「もう一回,出直させていただきます」って.だから,負けることはぜんぜん恥ずかしいことでも何でもないもん.
- 光一
- もう,カッコい〜い.本当にね.
- 松山
- あのね,剛,いいか,例えば俺もいつか売れなくなる日が来るかもしれないよな.一生懸命歌っても,客に誰もウケない日が来るかもしれないよな.そしたら歌手として失格かもしれんよな,歌い手としてな.けど,人間として失格になったわけじゃないからな,俺は堂々として歌うな.みんなに間違ってもらいたくないのはさ,例えば学校に行ってだな,点数が悪かった,高校受験に失敗した,大学行けなかった,学生としては失格したのかもしれないけど,おまえ,人間として失格したわけじゃないぜと.逆にだな,人間として失格なクセにだぞ,国会議員のバッヂつけたりだぞ,どっかの会社の社長やったりだぞ,総理になったりだぞ,そういう人間はいっぱいいるんだから.
- 光一
- そのほうが怖い世界ですね.
- 松山
- そうだろ.そういう奴らに比べれば,人間として失格するよりはさ,歌手として失格したほうがな,少しも恥ずかしくないもん.だから,人間として失格しなければ,俺はずっと歌っていけると思うんだけどな.
- 光一
- その心を忘れずにね.滲みますね.
- 剛
- 今日,すごく滲みてるんですけど.
- 光一
- 拓郎さんは?
- 吉田
- 僕も滲みてます.まずその人間として失格ってとこから滲みちゃって.
- 光一
- そこで滲みちゃったんですか.
- 吉田
- 人間として失格してるわけじゃないからって言ってるけど,俺,したなと思ったりして.
- 松山
- だけどな,俺みたいな後輩がいてよかったよな.
- 吉田
- え?
- 光一
- 自分でおっしゃってる.
- 吉田
- そんなの自分で言うの?
- 松山
- 俺,そう思うもん.やっぱりこういう先輩たちがいるじゃん.頑張ってもにらいたいんだよ.幾つになっても歌ってもらいたいんだよ.
- 光一
- 自分も追い抜かれたくない,そして片方は抜かすぞという相乗効果.
- 松山
- せめぎ合いでさ,いい音楽が出来りゃな,もう最高じゃん.だから,俺みたいなさ,憎まれるようなな,本当に駄々っ子みたいな男が下からだぞ,「おう,拓郎.泉谷,陽水」とかさ,そうやって叫んでるうちはさ,彼らも安心してな,腰を据えて歌ったらるわけだ.
- 吉田
- そんなことないよ.「拓郎,拓郎」って言われたら気になったしょうがないよ.
- 松山
- そしたら「こんな奴には負けないぞ」って気になってくるじゃん.そしたらステージで面白いものが出来るじゃん.
- 吉田
- 君の話を聞いてると,そういう気にはなるね.
- 松山
- だろ?
- 吉田
- でもなんか嘘っぽいな.
- 松山
- いやいや,そういうとこもあるんだけどさ.でもやる気になってきたろ?
- 吉田
- なったなった.
- 光一
- どうですか?拓郎さん.松山さんの話聞いて.
- 吉田
- まず,いろいろな失格してる点もいっぱいあるんで,反省を胸に今日は帰りたいですね.いろいろ反省しなければならないとこがたくさんあります.
- 光一
- なるほど.さあ,それではLOVE LOVEなものに.
- 吉田
- ねえ,聞いていい?
- 光一
- 聞いて下さいよ.
- 吉田
- 松山千春のファンって,若い子多いね.
- 松山
- これ,KinKiのファンだろ?
- 吉田
- え?さっきから「千春!」とか「チー!」とか言ってるじゃん.
- 光一
- かなりの黄色い声が.
- 松山
- 「じさま」って言ってるのいないか?ちゃんと「チーさま」と言ってるか?あのさ,冗談抜きで幅は広いな.
- 吉田
- 広いね.
- 光一
- コンサートやっててもそれは.
- 吉田
- 若くない人もいらっしゃるもんね.
- 松山
- 確実に俺より先にいきそうな連中な.そういうやつにはさ,この世で最高のステージをやってやりたいと思うよな.
- 光一
- カッコええな,ほんまに.
- 松山
- だって,若い奴はまだこれからいろんな奴が出てくんだからさ.
- 光一
- いろんなアーティストが見れるかもしれない.
- 松山
- まだギターも持ってないようなそんなアーティストでさえ見たり聞いたりする可能性あるわけだろ.年寄りはな,今歌ってる奴で精一杯なんだからさ.そしたらそん中で最高のもんを聞かせてやろうと思うじゃんか.
- 光一
- 毒舌のようなんだけど.
- 剛
- 暖かい.
- 光一
- 暖かいね.なるほどね.今日は勉強になります,本当に.
- 松山
- 勉強したかったらコンサートに来なさい.
- 剛
- ぜひ.
- 光一
- ぜひ.
- 松山
- もっと楽しく勉強させてあげるよ.
- 光一
- ありがとうございます.
- 松山
- 日本で一番が俺だとしたら,二番は拓郎だから.
- 剛
- まず一番を.
- 松山
- まず一番を見ないと.当り前よ.
- 光一
- それも話で聞きましたけど,自分を一番だとおっしゃってると.
- 松山
- それは,拓郎もKinKiも俺も,ステージに上がったら自分が一番だと思うだろ.自分が二番だと思って歌ってるやつはいねぇだろ.
- 光一
- そうですね.
- 松山
- ましてやだぞ,歌がうまいだとかヘタだとかってのはな,さっき聞いてわかるけどさ,音程がどうだとかそういう問題じゃないんだから.
- 光一
- そういう問題じゃないと.
- 松山
- 最終的には,人間性の問題だからな.音程がいいとか悪いとか,歌がうまいでしょとかうまくないとかな,そういう問題じゃなくて,最終的は人間性な.どこまでヴォーカルに,声に出て来るかって.
- 吉田
- 先生,ちょっと質問.そうすると,人間性がダメで,音程が悪かったらダメだね.
- 松山
- とりあえずこの業界にはいられないだろうな.
- 光一
- なるほど.
- 吉田
- いるよね,人間性も音程も悪いやつね.
- 光一
- います?
- 松山
- 誰とは言えないけどな.まあ,光一も剛も詞作ったり曲作ったりし始めたじゃない.恥ずかしがるな.
- 光一
- 恥ずかしがらずに.
- 松山
- 俺たちも最初は恥ずかしいよな.
- 吉田
- 「俺たち」っていうのは,俺も?
- 松山
- やっぱり俺のこと嫌いなんだろ?
- 吉田
- いや,違う.たしかに恥ずかしい.
- 松山
- 最初は曲作って,みんなを目の前にして歌うのすごい恥ずかしいんだよ.けどやっぱり自信持って歌えばそれだけストレートにみんな聴いてくれるし,伝わると思うな.
- 光一
- ちょっとここに松山さんの詞があるんですけど.これ松山さんが書いた詞ですよね?
- 松山
- 作詞作曲は全部自分ですよ.
- 光一
- そうですよね.「恋」という歌がありますけど.「愛することに疲れてみたい」.
- 剛
- ちょっと読み方が違うな.みんな目つぶって聞いて下さい.「愛することに疲れてみたい.嫌いになったわけじゃない.部屋の灯りはつけてゆくわ.鍵はいつもの下駄箱の中.きっとあなたはいつものことと笑い飛ばすに違いない.だけど今度は本気みたい.あなたの顔もチラつかないわ」.おお,すげえ.
- 光一
- こうやって聞いてますと,女性からの視点じゃないですか.
- 剛
- これはどういうふうに書いてくんですか?
- 松山
- 恋愛にさ,男も女もないだろ.恋愛すりゃやっぱりお互いな,見る夢は一つだし.そうすりゃ男も女も.
- 光一
- 男も女も見境いねえってことですか?
- 松山
- ケダモノ!
- 剛
- そういうことやないがな.
- 吉田
- そんなバカな.
- 光一
- そういうことじゃないですね.
- 松山
- やっぱり恋愛したら.
- 光一
- 関係ないと.
- 松山
- よく間違うんだけど,「これは女性側から歌った詞ですね」とか「女性の気持ちがよくわかりますね」とかいうんだけど,恋愛したら女が感じることを男も感じてるんだよ.同じこと思ってるんだよ.女が心配だなと思えば,男も心配だなと思ってんだよ.だから男女はさして関係ないって.
- 光一
- なるほど.
- 松山
- 次の人生相談は?
- 光一
- 本当に人生相談になりますよね.
- 剛
- 今日は松山さんをゲストにお迎えしてね,フィーチャリング松山さんですよ.なのに僕らが逆に人生をすごく教えられて暖かいパワーをもらってるというね.本当に申し訳ない感じですけど.
- 松山
- おまえたちもべつに俺のこと好きになる必要もないし,ステージ上がったら「俺は絶対に松山千春よりうまい」と思って歌ってくれればいいし.
- 光一
- それは.
- 松山
- 俺も「KinKiより絶対うまい」と思って歌うから.
- 光一
- もちろんです.
- 松山
- それがぶつかり合えば面白いものが出てくるわけだ.あとは客が判断してくれるって,「やっぱりKinKiの負けね」って.
- 剛
- それはそうですよね.
- 光一
- 頑張ろ.
- 剛
- 頑張ってこ.
- 光一
- はい,LOVE LOVEなもの.
- 剛
- はい,松山さんのLOVE LOVEなもの.まずこれは?
- 松山
- これは札幌から30分ぐらい行った石狩のはまなす公園だ.ここな,なかなか北海道に観光で来る人たちは,小樽とか行ってしまうんだけど,石狩のはまなす公園はなかなか行ってくれないな.
- 光一
- すごいいい景色ですね.
- 松山
- 最高ですよ,ここは.
- 光一
- けっこう穴場ですか?
- 松山
- 穴場というば穴場だな.本当に行かないもんな.
- 剛
- このへんの真ん中とかに立つと,星なんかかなり?
- 松山
- 星も奇麗だし.それよりもここ,すぐに海なんだよ.
- 剛
- 海ですか.
- 松山
- もう最高の気分になるな.この橋みたいのがあるじゃん.これをずっと渡って行けば,向こうのほうに灯台があったり.
- 光一
- うっすら見えてますね.こういうとこで詞を思い浮かべたりするんですか?
- 松山
- 詞を思い浮かべるというより,ストレスの解消になるな.
- 剛
- すっきりしそうですね.
- 光一
- 東京には絶対ない景色ですからね.
- 剛
- 僕,修学旅行で北海道に行かせてもらいまして,その時に北海道ってすごくいいなと思いましたね.空がとにかく広いんですよ.
- 松山
- 東京でも大阪でも広さは一緒だと思うけどな,イメージはわかるけどな.
- 剛
- 見守られてる気がするんですね.「頑張れよ」って言ってもらってるような.
- 光一
- 松山さんに対抗してええこと言おうと思うな.
- 剛
- いやいや,ほんまに思うねんもん.東京の空って僕も奈良で生まれてますから,なんか気持ち狭く感じるというか.でも北海道は本当にすごくいいなと思いますね.
- 光一
- 飯もうまいし.拓郎さんは北海道好きですか?
- 吉田
- 僕,飛行機とか嫌いだからさ.乗り物とか.だから遠くはとにかく苦手よね.
- 光一
- 拓郎さんは鹿児島ですから.
- 吉田
- 北と南ですよね.北海道の人と九州の人っていろいろ違うかな.
- 光一
- 違うんですか?
- 吉田
- 九州はね,九州男児って男らしく思うでしょ.違うんです.九州男児っていうのはすげえ女々しくてね.で,女の人の手のひらで泳がされてて,じつは女の人がすごく強い.九州の男は俺を筆頭に女々しい.すぐ泣くしね.すげえ悩んじゃって「ウエ〜ン」ってなっちゃう.
- 光一
- 九州男児というのは?
- 吉田
- あれはだから嘘だね.九州の人はね,女の人に踊らされてるんですよ.僕,九州の人で男らしい人って会ったことない.
- 松山
- やっぱり九州って,例えば果物なんかあるじゃん.手を伸ばせば果物が食えるわけじゃん.海行けば魚があるわけじゃん.ところが北海道は長い冬があるわけじゃん.そうすると,男女の役割決まっちゃうんだよな.力仕事は男がやるしかねえじゃん.女に雪の中で外出て雪かきしろとは言えねえじゃん.だから俺がやるからおまえは守ってれって.
- 光一
- そのへんから男らしさが.
- 松山
- 男らしさっていうか,お互いの役割が.
- 光一
- 自然と男らしさが.これもまた景色ですね.これはちょっと海側ですね.
- 松山
- さらに向こうに行くと小樽のほうに行ってしまうんだな.
- 光一
- 本当に人いませんね.
- 松山
- いないとこを写したんじゃないか.観光客がピースかなんかやってるの撮ってもしょうがねえだろ.
- 光一
- でも一人もいませんね.おまえこういうの最高やろ?
- 剛
- 大好きですね.
- 松山
- ここは最高だよ.
- 光一
- さあ続いて.あら?これは?
- 剛
- ブルズ.シカゴブルズですよ.
- 松山
- よく知ってるじゃん.俺は最初はバスケットだからな.バスケットで飯食いたかったからな.
- 光一
- 選手になるぐらい.
- 松山
- つもりだったな.
- 光一
- 今でもやってらっしゃるんですか?
- 松山
- だから,俺が本当に真面目にバスケットやってたらマイケル・ジョーダンいなかったな,みたいなさ.
- 吉田
- さすがだね.その気持ちでいくところはね.マイケル・ジョーダンだよ.すごい.
- 光一
- 今,真っ黒にしたらマイケル・ジョーダンになりますもんね.
- 松山
- 近いな.
- 吉田
- 近い?
- 光一
- 高校時代ずっとバスケ部ですか?
- 松山
- ずっとやってた.
- 光一
- バスケットって本当にしんどいスポーツですね.
- 松山
- 剛はやってたんだろ?
- 剛
- やってました.
- 松山
- 本当にやろうぜ,今度.
- 剛
- お願いします.僕,本当に最近ぜんぜんやってなくて,無性にやりたいんです.
- 松山
- 俺,こないだSMAPからさ,木村がやってたっていうからさ,やろうって.ところがさ,俺たちさ,バスケットやってた奴ってフォークソングにはいないもんな.
- 吉田
- やんないね.
- 松山
- そんなフォークシンガーいないもんな.
- 光一
- 拓郎さんもちろんバスケットは?
- 吉田
- いや,俺は写真部.
- 光一
- そうなんですよね.
- 剛
- バスケットやってた人少ないですよね.
- 松山
- だから今度やろうぜ.中居や木村にナメられたくないじゃないか.
- 光一
- でもうまいですよ.
- 剛
- 木村君すごい上手いです.
- 松山
- TUBEの前田によ,「おまえもやるぞ」って言ったら「すいません,僕バスケットだけは出来ないんですよ」って言うんだ.あいつが出来ないのはバスケットだけではないんだけどな.
- 光一
- そういうことですか.やっぱりブルズですか?
- 松山
- やっぱりジョーダンやピッペンがいた時には,ブルズが一番好きだったな.今は違うんだけどな.
- 剛
- パクソンとかグラントがミックスしている時っていうのは,非常に楽しかったですね.
- 松山
- いまね,バスケットボール知らない人でもね,こいつは見ておいたほうがいいっていうのはね,トロントのラプターズっていうチームにヴィンス・カーターってのがいるんだよ.これはひょっとするとマイケル・ジョーダンを超えるかもしれないな.マイケル・ジョーダンは非常に華麗でし,あれ以上のプレーヤーってのはなかなか出てこないと思うんだけど,ヴィンス・カーターっていうのは豪快だな.この後日本にも来るけど.
- 光一
- 2000年のオリンピックに出ますね.
- 松山
- その前に日本で一汗流すと思うんだけど.こいつのダンクシュートはマイケル・ジョーダン超えてるな.こいつは強烈な選手だな.
- 光一
- 野球もちょっとおやりになると聞きましたけど.
- 松山
- 当然じゃないか.今のジャイアンツの投手陣を支えてた連中はいろいろ教えてきたよな.
- 光一
- 松山さんが教えてきた?
- 松山
- あのね,おまえたちは知らないけどね,稲尾和久っているんだよ.ピッチャーでもう古いけど.拓郎は知ってるよな?
- 吉田
- 知ってるしってる.
- 松山
- 神様,仏様,稲尾様って言われた.
- 光一
- あ,知ってます.
- 松山
- この人に「おまえピッチングコーチやってもいいよ」って言われてるんだから.
- 光一
- 本当ですか?
- 松山
- それぐらいピッチングもうるさいし.あと中西さん知ってるよな?
- 吉田
- 知ってるよ.
- 松山
- これも古いんだけど.
- 吉田
- バッティングコーチ?
- 松山
- そう,この人に「おまえはバッティングコーチやっていいよ」って.あと,江川卓から「解説もやっていいよ」って言われてる.
- 剛
- 何でもこいですよ.
- 光一
- でもベイスターズファンとお聞きしましが.
- 松山
- 今ね.権藤っていう監督がいる限りは,ちょっとベイスターズ応援しなきゃな.ベイスタースはまた暗い選手が多いからな.マシンガンっていっても暗いんだもん.鈴木尚典にしてもさ,石井にしてもさ,波留にしてもさ,なんかいまいち垢抜けない.大阪で言えば近鉄.だからあいつらに頑張ってもらいたいと思うんだけどな.
- 光一
- これは?サインが入ってますよ.
- 松山
- これはブルズが優勝した時のロッカーの椅子にみんなサインして.
- 剛
- すごい.
- 光一
- これを直々にもらってきたんですか?
- 松山
- 直々じゃないよ.それがオークションで出たんだよ.それで買ったんだよ.
- 光一
- 買ったんですか.
- 松山
- だって,好きだったんだもん,本当に.
- 剛
- これはすごいですね.
- 松山
- マイケル・ジョーダンもいるし,この時はピッペンもいるし.
- 光一
- 剛,座ってこい.
- 剛
- 座られへん.でもブルズ,本当に一時期本当にブルズ狂いだったんですよ.タオルから靴下から,何から何までブルズだったんですよ.で,マイケル・ジョーダンのサポーターの位置とかも真似して.
- 光一
- さあ続いて.
- 剛
- これはドリームチーム?
- 松山
- ドリーム1だよな.バルセロナオリンピックの時に.
- 剛
- これはしびれましたね.
- 松山
- これは絵なんだぞ.
- 剛
- 絵ですか.
- 松山
- で,シュート打とうとしてるのがマイケル・ジョーダンだな.それで15番がマジック・ジョンソン.7番がラリー・バード.
- 剛
- 元セルティックスですね.
- 松山
- それで一番後ろにいるがユーイングじゃないかな.
- 剛
- ユーイングはフリースローの時,鼻がごっつでかいんですよ.
- 松山
- 怖いな.北島さんといい勝負だもんな.
- 剛
- いい勝負です.
- 光一
- あのサインは?
- 松山
- ドリームチームのみんなのサイン.
- 光一
- 相当お好きですね.
- 松山
- 好きさ.
- 剛
- これはたまんないですよね.
- 光一
- これは何ですか?
- 松山
- マイケル・ジョーダンの使用済みの免許証だな.
- 剛
- うそ!?
- 光一
- 本物ですか?
- 松山
- うん.
- 光一
- すげぇ!!
- 剛
- すげぇ!!
- 松山
- あれ,ぼやけてるけど俺じゃないぞ.
- 光一
- ちょっと日焼けしたかなっていう感じで.使用済みの穴が空いてますね.
- 剛
- これはすごいですよ.
- 光一
- これも買ったんですか?
- 松山
- これはね,テレビの番組でね,フリースローを5本連続でいれて,それでもらってきたやつなんだ.
- 剛
- すごい.
- 松山
- これは嬉しかったな,さすがに.サイン入りのボールとかシューズはな,いくらでも何とかなりそうだどさ,この免許証だけは.
- 剛
- 免許証ね.
- 光一
- 手に入りませんよ.
- 剛
- 本人の財布かポケットに入ってたやつですから.
- 光一
- 相当レアですね.
- 剛
- お?またマイケル・ジョーダンですね.
- 松山
- やっぱりマイケル・ジョーダンが,自分と同じ時代に生まれてプレーを見ることが出来て,本当によかったなとつくづく思うよな.
- 剛
- カッコええもん.
- 光一
- こうして見ると,かなりブルズだらけですね.
- 松山
- あとはそれこそTシャツから皮ジャンかにブルズ系のものはすごくあるよな.それだけだな,凝ってるのは.あとは付き合った女のアルバム持ってるわけでもないしな.そういういみでは俺の唯一の趣味といえば趣味かもしれないな.
- 光一
- バスケットが.
- 松山
- バスケットものが.
- 剛
- いいよ,バスケットは.
- 光一
- すいません,貴重なものいろいろとありがとうございます.
- 剛
- かなり貴重ですよ.
- 光一
- さあそれではLOVE LOVEな歌に行きたいと思うんですけど,松山さんがお選びになった歌は.
- 剛
- こちらです.
- 光一
- 誰しも知ってるでしょう.
- 剛
- エリック・クラプトン.「Tears in heaven」.
- 光一
- 松山さん,かなり多くの名曲に触れてらっしゃると思うんですけど,その中でこの曲をお選びになったのは?
- 松山
- あのね,やっぱりクラプトンってロックのギターの神様って感じがするよな.それがやっぱりこの曲でアコースティックギター持って歌ってるのを見た時に,冗談抜きに「ああ,俺もギター弾いて歌っててよかったな」ってつくづく.やっぱカッコいいよな.
- 剛
- カッコいいですね.
- 松山
- 俺もクラプトンみたいになりたいなと思ったらさ,フィル・コリンズになっちゃってさ.ちょっと寂しいんだけどな.それが納得いかないとこだな.でもやっぱりカッコいいなと思うわな.年取ってこういうふうにギター持って歌えたらすごくいいなと.
- 光一
- クラプトンもかなり曲あると思うんですけど,この「Tears in heaven」を選んだのは?
- 松山
- やっぱり彼が子供を失くして,この曲を引っ提げて歌い出すわけだから.本来だったら奴はさ,ドラッグか酒のほうへまた舞い戻ってしまうのかなと思ったんだけど,やっぱりこの曲が支えになったんだろうな.
- 光一
- この歌を自分で作ることによって.
- 松山
- そういう意味ではクラプトンの後世,まだ歌っていくと思うけど,その後世を彩る一曲だろうな.
- 光一
- なるほど.この曲を松山さんが歌って下さると.
- 剛
- すごい楽しみですね.
- 光一
- 楽しみですよね.それでスタンバイのほうよろしくお願いします.
- 剛
- よろしくお願いします.
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