松重豊さんインタビュー/川尻健三郎役

『HERO』への出演を知られた時は、いかがでしたか?
「すごく人気のあった連続ドラマで、13年という年月が過ぎてからの復活ですので、期待や話題を集めるでしょうから、覚悟した上で引き受けなくてはいけないと思いました。私が加わったことで、失敗したら素直に“すみませんでした”と謝れば良いか…などと、妄想はしていたんですけど(笑)。ただ、どんなドラマでも台本を読んでみないとわかりません。今回も、台本を読ませていただいて、お受けすることにしました」
最初に台本を読まれて、感じられたことは?
「僕が演じることになる川尻という部長検事は、角野(卓三)さんが演じられていた部長像とは、多少変化があって…。僕だけではなく、すべてのキャラクター像がハッキリしていたので、それに乗っ取って演じれば良いかな? と。始めたんですけど…。でも、撮影初日の川尻は絶叫シーンというマックス状態でして…。しかも、鈴木(雅之)監督とは久しぶりだったんですけど“確か、同じシーンを何カットも撮るよな?”と、思い出したので“絶叫し続けたら、声が飛ぶ…”と思ったんですけど、案の定、声を枯らしてしまいました(笑)。役作りも何も、いきなり絶叫でしたから。逆に、そこから冷静な時の川尻を作っていった感じです」
川尻はどのようなキャラクターと捉えていらっしゃいますか?
「プロデューサーなどによると、モデルになるような人がフジテレビにいらっしゃるそうなんです。冷静に物事をまとめようとするんですけど、ある瞬間考えが破綻すると“ワーッ!”っとなってしまうらしくて…。周りの人から“この人、どうしちゃったの?”と思われてしまうような人ですね。そして“ワーッ!”と破綻し続けるのかと言えばそうでもなく、短時間で反省する。そういう人って、いそうですよね? それを極端じゃない範囲で、リアルに作れたら面白いと思いました」
検事部長というと、一般の会社ならば中間管理職のイメージです。
「そうですね。上司と部下のパイプ役のような感じですが…。ただ、部下をまとめなくてはいけないのですが、ともかく城西支部はグダグダなメンバーが集まっているので、川尻も上手くまとめられていません。川尻の管理職というのは名ばかりで、せいぜいクラスの学級員か日直ぐらいの力しか持っていないんじゃないかと思います(笑)。元特捜部なんですけど、いわゆる出世街道からは外れたという過去があって…。“このぐらいの地位で定年を迎えるんだろうな”と、あきらめつつも、わずかな希望にすがりつつ…50代半ばぐらいのオジさんを代表したいという気持ちもあります」
今回は検事部長自らの取り調べもありました。
「いろいろな役目を負わされて、川尻は苦労しているようです。でも、役の年齢は川尻の方が上になっていますが、実際は小日向(文世)さんという大先輩が事務官を演じていらっしゃったりしますから。だから、僕自身の感覚では川尻が一番上には思えないんです」
川尻は、強い面と弱い面が極端です。その両面がハッキリと表に出るキャラクターはあまりないと思いますが…。
「両極端ですよね。ですが、そこを行ったり来たりしていることで、より人間くささも出せているのではないかと思います。そういった人間味を脚本の福田(靖)さんが上手に書いてくださっているので、見ている方に“こんな人、いるいる!”と思っていただければ嬉しいです」
収録現場の雰囲気はいかがですか?
「やはり、13年前に培われ、積み重ねられた歴史を感じます。また、その時から携わっていた主役の木村(拓哉)くん、小日向さん、八嶋(智人)くん、(正名)僕蔵くんが城西支部メンバーの半数いて、その方たちが前回のリズムをきちんと保っています。セリフの刻み方が染み付いているので、僕たちは“そうやるのね”というところから1話の城西支部シーンが始まったような気がします。小劇場から小日向さんや八嶋くんたちがテレビドラマに持ち込んだ“芝居を面白く作る”という流れが、この人気作品で見られるのも良いですね。一時期、そういうドラマも多かったと思うんですけど、最近ちょっと鳴りを潜めている感じがします。セリフのリズム、テンポで作るドラマは、僕も好きなので。それが、視聴者のみなさんに、どう受け入れていただけるか? とは、思ったんですけど…」
みなさん、それを待ちこがれていたようですね。
「結果的に受け入れて下さったのは、さきほども言いましたけど、木村くんたちのおかげです。よくぞ13年間忘れず、『HERO』という芝居を崩さずにいてくれたと言う感謝の気持ちが大きいです。僕たち新規参加組は、そこに乗っかっただけですから」
13年前の城西支部と言えば、角野さんが抜けてしまいました。
「僕は次席の部屋に行くことが多いんですが、角野さんは“うらやましいよ。僕もあっちに戻りたい”とおっしゃっています。僕も、もし13年後に『HERO』が作られたら、城西支部にいないかもしれないし、出演自体ないかもしれません(笑)。そう考えると、角野さんの気持ちがわかる気がします。城西支部のメンバーでワイワイ、ガチャガチャしながらも、丁々発止の芝居には役者として真剣勝負の面もある。そういう意味で、振り返ったら楽しい現場だと思います。あっ、今の僕は必死で芝居についていってるだけですが…」
松重さんにとっての『HERO』は?
「僕は、ヒーローという言葉の存在は感じるんですが、それが誰をさしているのか? と、思うことはなくて…。それぞれが、ヒーローであると言うか…自分の中で、“他人からどう見られても恥ずかしくない大人であるということを律して生きているか?”“社会の中にきちんと存在しているか?”という“意識”のようなものがヒーローではないか? と思うんです。誰かに憧れて、それを真似して…ではなく、自分に還していくことが大事ですので」
最後に視聴者のみなさまにメッセージをお願いします。
「僕は芝居のひとつひとつに全部を出している気がしています。僕だけでなく、出演者の誰もが出し惜しみしていないと思うんです。多分、テンポ感、アイデアの全てがMAX状態なので、良く見るとメインの芝居の片隅でみんながいろいろな情報を発信しているんです。その情報を見落とさないでいただければありがたいですし、そういう見方をすると、また別の『HERO』の楽しみ方が出来ると思います。みんな真剣にやっていますので、ぜひ細かいところまでご覧いただければ幸いです」

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